じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真] 6月2日の日記に「カボチャ畑の1カ月」の写真を掲載したが、いよいよボール状のカボチャが散見されるようになった。6月19日の岡山市の最高気温は32.5度。全国主要都市の中ではトップレベルの暑さだった。


6月19日(月)

【ちょっと思ったこと】


金儲けのプロセスと結果の使い途は別問題

 各種報道によれば、日銀の福井総裁は、民間の研究所の理事長をしていた7年前に村上ファンドに1000万円を投資して総裁就任後も継続。投資した資産はほぼ7年間で少なくとも2倍以上に増えていたという。

 このことに関して私がおやっ?と思ったのは、福井氏が「得られた利益は国民が納得できる使いみちを考えたい」と表明していることだ。これはおかしい。儲けのプロセスが正当であると主張されるのであれば、儲けた結果を何に使おうとそれは個人の勝手である。「国民が納得できる使いみち」などと言及することは、「儲けのプロセスにやましいところがありました。儲けた結果は福祉のために使いますのでどうかお許しください」と言っているようなもので、プロセスに対する批判に応えたことにはなっていない。

 しかしそれにしても、7年間で2倍以上というのはスゴイ儲けだ。私が学生時代の頃は、定額貯金の利率が年8.0%、既発国債8.7%、電力社債は9.0%などという時代があったが、あの頃は物価も上がっていて、実質目減りをくい止めるのが精一杯であった。いっぽう、最近のガソリン価格値上げが目立つものの、全体としては、物価上昇はそれほど気にならない時代。そういう中で、100%を超える儲けを出したというのは驚きである。

 では、福井総裁のこれまでの行動は悪いことだったのか。少なくとも法律上は問題は無さそうだし、私が毎朝視ている番組「モーサテ」のゲストたちからは「何が悪いんだ」という声さえ聞こえる。

 いっぽう、コツコツとお金を貯め、資金運用で豊かな老後を送ろうと思っていた人たちから見れば、「ゼロ金利政策」は、堅実な利殖の機会を奪い、元本を食いつぶす生活を強いる結果をもたらしてきた。そんななかで、ゼロ金利政策を続ける中で大儲けしていたという事実は、儲けの結果を何に使うかということとは全く関係無しに、多くの庶民の反発を招いているといってよいだろう。

 そう言えば、村上世彰容疑者も逮捕前の記者会見の中で「今後は、慈善事業に...」というようなことを語っていたが(←あくまで長谷川の記憶に基づく)、もし、「儲けすぎたので、弱者にも恵んであげましょう」というような発想から、「償い」の目的で福祉活動を始めるのであれば、そんなのはお断りだ。

 このことに関連して興味があるのは、先頃引退を表明したビル・ゲイツ氏の今後の活動である。報道によれば、ゲイツ氏は第一線を退いた後、世界の医療・教育問題の改善を目指す慈善団体Bill & Melinda Gates Foundationのために費やす時間を増やす意向だという。ちなみにゲイツ氏自身は「これは引退ではない。私の(人生の)優先順位の組み替えだ」と述べているという。福祉活動に身を置くことのほうが遙かに価値がある人生になる、と判断されたのであれば、これは非常にポジティブな選択であるということになる。村上氏や、「得られた利益は国民が納得できる使いみちを考えたい」と表明している福井氏からは、残念ながらそういう気概は感じられない。