じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真] [今日の写真] 講義棟前の迷惑駐輪(写真左)。道路いっぱいにはみ出し、正面奥の駐車場に向かう道路の通行を妨げているほか、地震の際の避難や、消防、急病人搬出などの緊急時に重大な支障となる恐れが大きい。写真右は、同じ時刻に撮影した、奥のほうにある正規の駐輪場2箇所。まだ十分に空きがある。

この件については、前回の教授会でも「迷惑駐輪をしないよう授業で呼びかけてください」というアナウンスがあったが、私の立場から言わせてもらえば、行動の直後に結果を与えるという行動随伴性できっちりコントロールしなければ直るわけがない。本気で改善しようと思ったら、
  • まずは、荷札のような紙片に、迷惑駐輪がどういう迷惑や危険をもたらしているのかを訴えた呼びかけを記し、迷惑駐輪をしているすべての自転車にくくりつける。
  • それでもなお迷惑駐輪をしている自転車には、近々、チェーンロック規制を行うとの警告の荷札をつける。
  • 警告を無視して駐輪を続ける自転車は、一括して、タイヤをチェーンで繋ぎ、その日の17時まで移動できないように罰的に統制する。
というステップを踏むしかあるまい。

 ちなみにこの現象は毎年のことだ。本質的な問題は、講義棟の手前ではなく後ろ側に駐輪場を作ってしまったという設計ミスにある。一般教育棟(旧・教養部)では、講義棟の手前側に駐輪場があるため、この写真にあるほどの迷惑駐輪現象は起こっていない。


5月30日(火)

【思ったこと】
_60530(火)[教育]第54回 中国・四国地区大学教育研究会(4)大学ランキングの功罪(2)

 連載の4回目。昨日に引き続き、清水建宇氏の話題提供に関して感想を述べることにしたい。

 清水氏によれば、『大学ランキング』は

●「社会」が「大学を選ぶ」ために、「ステークホルダー」(直接・間接的に関係する者、ここでは受験生主体)に向けて、「相対評価」を行う。

ことを目的として刊行されているという。しかし、昨日も述べたように、
  • 数値化できる情報しか載せることができない
  • 数値化できる情報であっても、データが集まらない場合は載せることができない(←ぜひとも必要なデータであったとしても、わざわざお金をかけて実態調査するつもりは無いらしい)。
というように、データの掲載項目が偏っているという点で重大な欠陥がある。掲げられているような刊行目的を本当に達成しようとするなら、数値化可能な情報について、もっとお金をかけて精力的に調査するべきである。また、数値化できない質的な情報についても、せめて、資料入手先を明示するなどして便宜をはかるべきであろう。でないと、読者として想定されている受験生は、一部の、偏った情報だけに囚われて大学を選ぶことになりかねない。




 ところで、『大学ランキング』は本当に、受験生の大学選びに役立っているのだろうか。私のところにも、大学3年と高校3年の子どもが居るが、少なくとも私の家では、2100円も払ってそんな本を買った覚えは無いし、新たに購入の予定も無い。

 受験生自身、あるいはその親にとってのいちばんの関心事は、どのレベルの大学なら合格可能性があるか、そのためにはどのくらいの受験勉強が必要かということである。もちろん、志望先の学問領域についての大雑把な興味が前提にあることは言うまでもない。しかし元来、専門分野への興味というのは、それを真剣に学んだ上で初めて沸いてくるものであって、受験する前から、この学問をぜひとも学びたいという確かな志望動機を持つことは原理的に不可能である。とにかく、せっぱ詰まった状況の中で、何百もの比較項目を閲覧して大学選びなどをしている余裕は無い。

 では、医師になりたい、というような、将来の職業についての具体的な目標がある受験生ではどうか。そう言えば、今回のシンポでは、たまたま、医師国家試験合格率のランキングが事例として配布されていたが、2005年度のランキング表によれば、合格率のいちばん高いA大学は100%、いちばん低いB大学は74.8%となっていた。ちなみに東大は96.2%で第7位、京大は87.1%で58位にランクされていた。しかし受験生がこの表を眺めて、B大学よりも合格率の高いA大学を選ぶかと言えば、そういうわけにはいかないだろう。まずは自分自身が、A大学、B大学を含めて、すべての医系大学(学部)それぞれにどの程度の合格可能性があるのかが重要である。その上で、入学金、授業料、教育内容なども選択の重要な決め手にはなると思うが、とにかく、当面重要なことは、入学試験の合格可能性を高めることである。(入学試験の合格率)×(国家試験合格率)というような確率の積で志望先を決める受験生はまずあるまい。




 ということで、あくまで身近な事例に基づく推測にすぎないが、受験生が『大学ランキング』を手がかりに大学を選ぶという刊行目的は、かなり疑わしいのではないかと思ってみたりする。けっきょく、

●各種ランキングで上位を目ざさないと、受験生から人気がなくなり、定員割れなど大変なことになる

というプレッシャーを与えているだけであって、実際にランキングを気にしているのは、受験生ではなくむしろ、大学関係者のほうではないかという気もする。




 最後に、フロアからの質疑のところでぜひとも発言したかったことであるが(←挙手したものの、時間切れで指名されなかった)、もし、清水氏や朝日新聞社が、こういうランキングを本当に意義深いものであると考えておられるなら、一冊2100円で販売するというようなビジネスではなく、パブリックドメインとして、広くWeb公開するのがスジであろうと思う。本として売ることを前提とする限りは、掲載項目は、どうしても、読者の興味に合わせて取捨選択される。しかしそれでは、種々のデータを公正に網羅できるとは限らない。また、膨大な量の質的データを加えることも、出版のコスト上、不可能。であるならば、少なくとも詳細データについてはパブリックドメインとして広くWeb公開し、どうしてもビジネスにしたいなら、あくまでデータの一部だけであると断った上で、本として出せばよいのではないかと思う。

 次回に続く。