じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



1月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
[今日の写真] 日だまりでひっそりと咲くシバザクラ。21〜22日はセンター試験。サクラサクための健闘を祈る。



1月20日(金)

【思ったこと】
_60120(金)[心理]医療・看護と福祉のための質的研究セミナー(6)質的分析のコツ

 1月15日午後に大阪府立大中百舌鳥キャンパスで行われた

医療・看護と福祉のための質的研究セミナー「あなたにもできる質的研究:着想から投稿までのノウハウを教えます」

の参加感想の6回目。

 書くことのコツの話題に続いて田垣氏は、「インタビューのコツ」や、「質的分析のコツ」についても言及された。

 「インタビューのコツ」に関しては、聞き手は喋りすぎるなという指摘がその通りであると思った。話し手にとっては聞き手のことなどどうでもいいことなのだと自覚しなければならない。ラポートに配慮することは大切だが、面接調査は決して相互理解を目的としたものではない。話し手と聞き手との関係は一期一会、将来の関係維持を想定すべきではないと思う。

 次に「質的分析のコツ」に関しては

  • 確立された分類を用いない。ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)を用いるなどは論外
  • 一問一答風のまとめは分析ではなく単なる羅列
  • 目前の現象を異星人に説明するように記述すると、当たり前のことが当たり前になっている仕組みが分かる
  • 語りの直接引用は簡潔に
といった点を指摘された。このうち特に2番目と4番目は、私の所の卒論でもしばしば見られる現象である。たぶんこれは「分厚い記述」への誤解から生じるものではないかと思う。そう思いつつ、Googleで「分厚い記述」を検索したら、こちらこちらの文献リビューが上位でヒットした。おや、前に読んだことのあるレビューだなあ。




 結果のまとめ方に関して田垣氏は、もう1つ重要な点を指摘された。それは
  • インタビュー対象者すべてを詳細に提示するのではなく、代表事例(典型例)を提示する
  • 但し、なぜそれが代表事例であるのか、根拠を明示する必要がある
  • 「最頻例」は必ずしも代表例ではない
  • 例外や反証も出すべき
といった点である。

 確かに、我々にとって、最頻例が最も重要であるとは限らない。これと同じことは、昨年9月、日本心理学会のシンポの中の矢守克也氏の話題提供でも伺ったことがある。

 ここからは私自身の考えになるが、代表例が示しにくいような対象では、むしろ多様性を強調したほうがよい。但し、「あれもある、これもある」ではそれこそ事例の羅列になってしまって収拾がつかなくなる。その場合は、あらかじめ研究が何によって要請されているのかを明示した上で、その要請にふさわしい何らかの比較軸・対立軸を設定し、それに基づいて事例を整理して示すことが大切でないかと思う。

 次回に続く。