じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]  一昨年の秋に、大学構内の用水路が干上がる前に救出したスジエビ。あの時にすでに成体だったので、かれこれ1年半は生きていることになる。

 この水槽では、昨年秋に生まれたコッピー(アカヒレ)の赤ちゃんも育てている。スジエビの動きが鈍いため、ハサミで捕まえられることは無いようだ。



1月11日(水)

【思ったこと】
_60111(水)[心理]散歩中に飼い主が倒れた時の犬の行動

 夕食時に「トリビアの泉〜最強の国民ランキングSP!」の最初の部分を視た。ふだんこの番組は21時から始まるので、私は殆ど視ていない。そのこともあって、新鮮な「へぇ〜」が多かった。

 トップバッターは「散歩中に飼い主が倒れた時に犬はどういう行動をとるか(緊急事態であることを知らせようとするか)」というような実験であったが、100匹中100匹とも適切な行動はとれず、中には、倒れている飼い主の背中におしっこをかけたり、ポケットから餌を盗み出して食べる、自分だけ勝手に家に戻って水を飲むといった行動をとる犬もあった。

 もっともこれは、犬の習性上当然のことではないかと思う。犬の祖先はもともとボスを中心として集団で行動する習性をもっていた。よくなついている犬の場合は、飼い主が「群れ」のボスである。ボスが倒れればしばらくはそのあたりをウロウロして、ボスの次の行動を待つだろうが、いつまでたっても動かなければとりあえずは住み処に戻る。家人に緊急事態を知らせ、倒れた場所まで連れて行くなどという行動リパートリーは持ち合わせていない。

 であるからして、飼い主が倒れた時に適切な行動をとらなかったからといって決してその犬を責めるべきではない。そもそも、人間行動の枠組みで犬の行動を理解しようとするところに思い込みや誤りがある。犬の行動は、犬の行動理論(=私の立場からすれば、群れで行動するという習性と、強化の動随伴性に基づく理論)でなければ説明できない。少なくとも、予測と制御には役立たない。

 番組では、救助犬として訓練を受けた犬がどういう行動をとるのかについても紹介していた。そういう犬は、飼い主が倒れた時にはまず吠えたり舐めたりして飼い主を起こそうする。飼い主の反応が無い場合は、大急ぎで自宅(番組では訓練所)まで戻り、家人(番組では訓練所職員)を呼びに行く。家人が白い布きれを示すと、その端をくわえながら飼い主が倒れた場面まで連れて行く、というように訓練されていた。

 なんてこの犬は賢いんだろうと思ってしまうが、この犬は決して「飼い主が倒れた時には、家人に緊急事態を知らせなければならない」と理解して行動したわけではない。細かい訓練過程は企業秘密ではあろうが、おそらく
  • 散歩中に倒れた時には、まず、吠えたり舐めたりするような行動をとるように強化する。
  • 飼い主が倒れたまま動かない時は、家に戻ってドアの前で吠えることを強化する。
  • 家人が白い布を示した時は、それの端をくわえる。さらには、端をくわえたまま飼い主のところまで移動するように強化する。
 これらの行動を個別に強化し、さらに、「飼い主が倒れる場所」と家との距離を少しずつ長くしていけば、たいがいの犬は、「適切な」行動をとれるようになるはずである。




 余談だが、私が高校生の時、神奈川県・丹沢の塔ノ岳を単独登山した時に、1匹の犬が、ずっと「道案内」をしてくれたことがあった。二ノ塔か三ノ塔のあたりで突然現れ、大倉尾根の途中でいつのまにか姿を消した。その間、特に餌もやらないのに、私の前を歩いてくれた。

 それは1月のことであったが、2カ月後の3月になって、同じコースを歩いた登山者が遭難しかけたところ、同じ犬が現れて顔を舐めたりして励まし、下山路まで案内してくれたなどというニュースが伝わった。その後このことは、月刊誌でも取り上げられた。「チビ」という名前の犬で、登山口の山小屋で放し飼いにして飼っている犬とのことであったが、いつのまにか、「道案内」という行動を身につけたらしい。機会があれば、当時の新聞記事や月刊誌の記事を発掘してみたいと思う。