じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 色とりどりのカラスウリ。カラスウリの実は真っ赤な色で知られているが、熟する前はスイカのような縦縞模様(写真左上)、次いで黄色というようにいろいろと変化していくことに気づいた。


10月6日(木)

【ちょっと思ったこと】

不満があってこその世の中

 内閣府が行った義務教育に関するアンケート調査によれば、子どもが学校に通っている保護者のうち43%が現在の学校教育に「不満」を感じており、「満足」と答えた人は13%にすぎなかったという(子どもが小学校から高校に通っている全国の保護者3620人対象。インターネットを使った調査。回答率35%、回答数1270人)。政府の「推進会議」は、この結果(但しこのほかに、学力向上、教育の質を向上させるための施策についての質問もあり)も参考に、義務教育改革についての提言を年内にまとめたいとしているという。

 義務教育改革を推進すること、特に「教職以外の社会人経験のある教員を増やす」や「指導力の優れた教員を優遇する」といった施策を推進することについては私も賛成であるが、アンケート調査の結果の解釈については若干異論がある。「保護者の4割 学校教育に不満」という見出しで報じられたり、「子どもが学校に通っている保護者のうち、40%以上が、現在の学校教育に不満を感じている」などと言われると、今の学校教育に対する不満の声が圧倒的多数を占めているように思ってしまうが、残りの57%は積極的には不満を表明していないというようにも受け取れる。また、回答率35%ということは、残り65%はこの問題に関心がなかったのかもしれない。つまり、単純多数決では、「不満」は過半数を超えていないという解釈もできるのだ。

 もちろん「不満」をゼロにすることが理想ではある。しかし世の中、完全無欠であるはずがない。世の中や人生に完璧に満足した人というのはたぶん、
この世をば  わが世とぞ思ふ  望月の かけたることも  なしと思へば
という歌をのこした藤原道長くらいのものだろう。

 要するに、不満が全然無いなどというのはむしろ不自然。誰しも多少なりとは不満を感じている(←某独裁国家でこの種の調査をすれば、全員が「不満無し」と答えるだろうが)。しかしだからといって全員が「不満に感じる」と回答するわけではない。「不満に感じる」などという回答比率は、ちょっとした質問表現の違いや質問の文脈でどうにでも変化するものだ。そういう意味では、価値中立的な「不満度調査」などというのはあり得ないといってもよいだろう。

 もちろんだからといって、「不満」を放置してよいというものではない。比率では表せないような多種多様な不満内容を質的に拾い上げ、その原因を解明し、できる限り改善につなげていくというのは、教育現場、生活環境、行政一般、どこにおいても必要なことである。