じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] [今日の写真] [今日の写真] 【イランで見つけた意外なモノ(1)】
イランで見つけた十字架。写真左はテヘラン市内のキリスト教会。ちなみに、イランでは、イスラム教のほか、ゾロアスター教、カトリック、ギリシア正教を信じる人たちが居るという。仏教徒はrareだそうだ。

写真右は、トイレの「消毒済み」の帯。なぜか赤十字のマークがついていた。



8月21日(日)

【ちょっと思ったこと】

台風11号上陸か

 デジタル台風経由の情報によれば、日本の南海上には台風11号(マーワー)、台風12号(グチョル)という2つの台風が発生し、北上を続けている。

 このうち台風12号のほうは勢力が弱く、22日朝の時点では日本の東海上に去る見込み。いっぽう、台風11号のほうは22時午前3時45分の時点で中心気圧930ヘクトパスカルという、非常に強い台風に発達しており、米軍合同台風警報センター(JTWC) では早くも伊勢湾台風に酷似した進路予想を発表している。万博会場では警戒が必要だろう。




夏休みモード終了

 イラン最高峰登山を含めて8月9日からマイ夏休みをとっていたが、22日からは通常モードに復帰である。今週はさっそく、委員会や(前期修了分の)修論試問などが予定されており、来週はFD関係の研修、再来週は複数の学会年次大会への参加が予定されている。その一方、9月いっぱいで論文を1つ書き上げる予定。イラン最高峰登山関連では、土日を利用してアルバムサイトを開設したところであるが、完成までにはかなりの日数を要するものと思われる。そう言えば、今年の正月に訪れた冬のチベットのアルバムサイトのほうも、まだ川蔵公路や青蔵公路の部分が完成していない。

【思ったこと】
_50821(日)[心理]地域通貨は曲がり角?

 8月20日付け朝日新聞に「地域通貨 曲がり角 発行団体、初の減少」という記事があった。
町おこしや福祉に役立てようと自治体や商工会がこぞって導入したが、町村を対象にした全国商工会連合会の調査によると、05年3月時点で地域通貨に取り組む団体数が初めて減少に転じ、100の大台を割り込んだ。「買いたい物やサービスに乏しい」と参加者の輪が広がらず、自治体の補助金打ち切りをきっかけに発行休止に追い込まれる地域通貨も出始めた。
 地域通貨については2002年7月発行の紀要論文で取り上げたほか、「地域通貨と心理学」(心理学ワールド, 20, 9-12. 日本心理学会編、2003年1月)で概要を紹介したり、日本行動分析学会第20回年次大会(日本大学生物資源科学部、2002年8月22日)で「地域通貨と行動分析」というシンポジウムを企画したことがあるが、ここ1〜2年ほどは少々ごぶさたしていた。もっとも、「エコミュニティ・ネットワーク」から送信していただいているご案内の中でも、加藤代表が何度か「曲がり角」に言及しておられることから、このあたりで現状を分析し、活性化に向けた改善策を検討していく必要があるのではと思っていたところである。

 朝日新聞記事では、神奈川県大和市の地域通貨「ラブ」を事例として、地域通貨がうまく流通していない原因として
  1. 【神奈川県大和市の地域通貨】ラブの場合は肝心の「買える」商品はイスやピアノ、本など家庭でいらなくなった物を中心に17種類だけだった。駅前商店街の商店主は「たまる一方で使い道がないから取り扱いをやめた」と話す。
  2. 減少した理由として、交換するモノの不足に加え、「通貨」を取得するには、見ず知らずの他人同士でサービスや物を交換しなくてはならず、抵抗感が強かったことがあげられる。
  3. 苦しい財政事情から町村の補助金が下火になると見切りをつける団体が増えたと連合会は分析している。
といった点を挙げている。

 あくまで私の主観であるが、地域通貨が注目を浴びた背景には、地元商店街の活性化という切実なニーズがあった。そこで、とりあえず「他でもやっているようだから導入してみよう」という形で、ボランティア的な活動への対価として地域通貨を発行、これを地元商店街での買い物に役立ててもらおうという企画が多かったのではないかと思う。

 しかし、地域通貨が(地域限定的に)モノと交換できる限りにおいては、ボランティア的活動の対価としてお金(国家通貨)を受け取るのと何ら変わりない。人間は一度に複数の活動はできないわけだから、モノ目的で活動するならもっと効率の良い稼ぎ方を優先するであろうし、限られた時間を(その人の価値観において)より有意義なことに費やそうとするだろうから、参加者が増えないのは当然ということになる。

 上掲の記事を見る限りは、うまく流通しない理由の1.は、モノとの交換価値の不足に言及したものと言えるが、もともと、地域通貨は、交換価値ではなく使用価値を重視していたのではなかっただろうか。

 また、「見ず知らずの他人同士でサービスや物を交換しなくてはならず、抵抗感が強かった」という理由2.は、コミュニティの中での人間関係、互酬関係を醸成するという目的から言えば、明らかに失敗であったと言える。都会では見ず知らずの人と交流することのリスクはきわめて大きいわけだから、そのための配慮やセキュリティ策が万全でなかったことを露呈しているとも言える。




 過去に刊行した拙論でも述べたように、地域通貨は、心理学的に言えば、トークンエコノミー(代用貨幣)の一種に他ならない。またその意味では、楽天ポイント、マイレージ、地域通貨(1月29日の日記参照)などと何ら変わりない。ちなみに、地域通貨は曲がり角かもしれないが、楽天ポイントや航空会社のマイレージなどはずいぶんと規模を拡大しているように見える。それは、何と言っても、交換機能が拡大、要するに国家通貨と同じように、それを使って買い物や食事をすることができるようになったためであると言える。

 こういう大企業の商用目的のトークンとは別の形で地域通貨を定着、活性化させるためには、まずは、地域で生活する個人個人にとって、どういうコミュニティが求められているのかを分析する必要があるだろう。自給自足型の農村で、その地域の中で一年の大部分を暮らす人々のコミュニティにおいては、地域通貨は有力な協働の支えになるだろう。しかし、地域の外にある会社や学校で1日の大部分を過ごす人々にとっては、いくら地域活性化と言っても、それに関われる時間はきわめて限られている。お年寄りや子どもたちをターゲットにした地域通貨なら成功するかもしれないけれど。

 大企業の商用目的のトークンとは別の形で地域通貨を定着、活性化させるための別の方法は、お金(国家通貨)では決して買えないサービスに限定して通貨を流通させることである。ボランティア通貨というのはもともと、お金とは交換できないからこそ存在価値があると理解していたのだが、実際に導入された地域通貨の大部分は、限定的とは言え、商品割引や交換の機能を持たせている。商店街主導となればやむを得ないことであるが、結果的に、これが活性化を妨げている可能性もある。

 もう1つ、朝日新聞記事は
日本総研の嵯峨生馬研究員は「地域経済の活性化といった漠然とした目的だけでは長続きしない。地域通貨で具体的に何をしたいのか、そのためにどんな仕掛けが必要なのかを明確にするべきだ」と指摘する。
と締めくくっているが、「具体的に何をしたいのか、そのためにどんな仕掛けが必要なのかを明確に」というのは、まさに行動分析学の教科書に書かれてあるような言明である。地域通貨に多種多様な機能があるとはいえ、その根本が、「特定の行動を強化する」という習得性般性好子(強化子)であることはきわめて明確である。行動分析学は常に「行動は具体的であれ」と説いているが、「具体的に何をしたいのか」ということは結局「具体的にどういう行動を強化したいのか」ということと同義になる。また、「どんな仕掛けが必要なのか」というのは、要するに、
  1. 地域通貨を習得性好子として維持するためには、生得性好子や他の習得性好子との交換機能をどう設定するのか。
  2. どういう行動が起こった時に、どういうタイミングで、どの程度の量の地域通貨を随伴させるのか。
を整備することである。

 なお、愛知万博ではEXPOエコマネーがそれなりの成果を上げたと聞いている(詳しくは加藤氏のブログ参照)。このことに関連した報告会が8月23日に開催されるそうだ。東京近辺に在住の方にはご参加をオススメしたい。

詳細はこちら
締切日は過ぎているが、まだ間に合うかも。