じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 農学部農場のヒマワリ。東方向(写真では右方向)を向いて花を咲かせているものが多い。


8月7日(日)

【ちょっと思ったこと】

エレベーターの中の大きな鏡/ペットボトルのTEバンド

 昨日の日記で書き忘れたが8月6日(土)の夕食時に島田検定の一部を視た。

 参考になったのは3点。1つめは、エレベーターの中の大きな鏡は何のためにあるか、というクイズ。正解は、車いすの方がバックで降りる時に後方を見るため、ということであった。そう言えば、大学内の建物でもバリアフリー対応仕様のエレベーターは、みな大きな鏡がついていたように思う。

 2番目は、レストランのテーブルで、勘定書を丸めて差し込むための筒状のアクリル容器が、なぜ円筒ではなく、竹をナナメに切ったような形になっているのかというクイズ。これは私にも正解が分かった。

 3番目は、ペットボトルのキャップの下にある輪っかは何のためにあるかというクイズ。ネットで検索したところ、こちらに解説があった。この輪っかは正式には「TEバンド(TEはタンパーエビデンス tamper evidence」と呼ぶらしい。そう言えば、海外旅行先の露店などでは、中味を詰め替えた形跡のあるミネラルウォーターを売っていることがあるので注意が必要。

 なお、前掲のサイトにはキャップの変遷という有用情報もあった。そうか、この会社のすべての製品のルーツはコルク王冠にあったのか。

【思ったこと】
_50807(日)[心理]行動分析学会水戸大会(5)“罰なき社会”の探求(5)罰なき少年院・刑務所と罰なき社会

 日本行動分析学会第23回年次大会3日目の大会実行委員会企画シンポジウム:

司法において心理学に期待されるもの、「罰なき社会」の探求(What is expected of science of behavior in judicial field, search for a non-punitive society.)

の感想の続き。シンポでは、向井義氏(広島少年院)と岡田和也(法務省保護局)氏の話題提供に引き続き、佐藤方哉氏(帝京大学)からこのテーマに関係する「スキナー語録」が紹介された。その際の出典リストのメモが7月31日の日記にあるので合わせてご参照いただきたい。




 前回の日記で述べたように、私自身は、「罰無き社会」原理の適用は
  1. 少年院入院者や受刑者は一定期間収容されるということを前提とした上で、収容された環境の中で「罰無き社会」的行動管理の方策をさぐる。
  2. 少年院入院者、あるいは死刑囚以外の受刑者はいずれ社会に復帰させなければならない。本人のためにも、社会全体の安全確保のためにも、最適の更正方法を検討、実施していく必要がある。その際に「罰無き社会」的行動管理は、どういう面で有効性を発揮するか。
という2点において活用されるべきであると考えている。

 もし、刑務所というのが純粋に「懲らしめ」を目的にするのであれば、最も有効な手段は、オペラント行動を自発し強化される権利のすべてを囚人から奪い取ることである。捕虜収容所や、独裁国家の政治犯収容所などで、
  • 一日中、壁に向かって正座させる。動いたら暴行。
  • 一日中、地面にうつぶせのまま横たわらせる。動いたら暴行。
といった虐待が行われていたといった話を実際に聞いたことがある。収容者たちには食事は十分に与えられ、衛生状態も悪くない。重労働を課せられることもない。にもかかわらず、こういう措置が虐待と見なされるのは何故だろうか。それは、まさに、スキナーが言うように、「行動して、結果として強化される」という人類最高の権利が奪われているからに他ならない。




 ということもあり、少年院や刑務所では、問題行動を禁止する(=罰的に弱化する)ばかりでなく、望ましい行動を積極的に強化していくプログラムが必要となる。これもまた、スキナーの「罰なき社会」で強調されていた点である。具体的には、作業の量と質に応じて結果が伴うという「正の強化」の随伴性を多様に配置する工夫、また、種々の作業が、まずは褒められるという付加的好子で強化され、じきに自然の随伴性(工芸品の完成、目標の達成、集団への貢献など)で強化されるように橋渡しをするプログラムを充実させる工夫が求められる。また、社会復帰の直前には、所内における随伴性環境をできる限り現実社会に近づける工夫も必要となる。でないと、所内でせっかく形成された望ましい行動が、現実社会に般化しなくなってしまう。

 なお、佐藤氏の話題提供については、幸福や生きがいと関連づけて別の機会に論じる予定である。



 話題提供後の討論では
  • 少年非行・犯罪の第4のピークは、移動範囲の広域化、通信網の拡大という点に特徴がある。また、ゲーム世代とも言われる。第3ピークの時は、スリルそのものを味わうための万引きというのもあったが、第4ピークでは、いろんな意味で金目的が増えてきた。
  • 懲戒権の行使は信頼感が無いとダメ。懲戒権が公平かつ公正に実施されていることを理解させる必要がある。
  • 懲戒権だけでは限界がある。褒めることが無いとダメ。褒められるとあまり反則しなくなる。
  • 入所者の人格否定はしない。あくまで問題行動だけを修正する。
  • 出所後5年以上再犯の無い者について調査したところ、その理由は、家族関係の充実(結婚、子育てなど)、転職はあっても何らかの定職を継続していること、などにあった。社会内処遇の充実は重要。
  • 「罰なき社会」について、スキナー自身は、1979年来日時には楽観的な見方を持っていた。しかし1980年代以降は次第に悲観的となり「もはや手遅れ」というような感想を漏らしていたとか。
  • 「罰なき社会」を論じるにあたっては、行動の原理としての罰(通常は、嫌子出現による弱化、嫌子消失による強化、好子消失による弱化、嫌子出現阻止による強化、好子消失阻止による強化)という事実についての議論と、それをコントロールの手段として用いることの是非についての議論は区別しておく必要がある。
といった指摘がなされた。

 次回は、年次大会1日目と2日目について感想を述べることにしたい(←旅行出発までに間に合うだろうか?