じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 岡山駅前のホテルで会合。写真は19階のレストランの窓から写した岡山市北部のパノラマ写真。駅構内では知らぬうちに工事が行われていた。岡山国体に間に合うのだろうか。写真中央のビル(駅東口を出て、桃太郎大通りの北東角側)は、現在閉鎖されており、ビルの外壁に看板がかけられている。国体期間中だけでも有効活用すればよいように思うのだが、何か問題があるのだろうか。


8月4日(木)

【ちょっと思ったこと】

Eメイルでの成績問い合わせは一切お断り

 前期の授業が終了し、採点・成績評価であけくれる日々が続いている。8月4日には、教養科目期末試験の採点がやっと終わった。専門科目の採点や演習科目の評価のほうも月曜日までに終えなければならない。

 さて、毎年、授業終了後になると、受講生(正確には「受講生と称する者」)から妙なEメイルが届くことがある。多くは、修得単位数ギリギリの卒業予定者からの問い合わせであり、「学籍番号XYZ番の○○ですが、単位は取れているでしょうか」というものであるが、私は、そのような問い合わせには一切応じないことにしている。

 いかなる事情があろうとも特別扱いはできないというのが第一の理由である。成績評価は、大学で定めた手順により行われるべきもの。それを待っていただくほかはない。

 もう1つ、メイルを送る本人にはそういうことを考える余裕が無いのだと思うが、「学籍番号XYZ番の○○ですが、...」というメイルを送ってこられても、こちらとしては本人からのメイルなのか、本人を詐称したメイルなのかを確認する手だてが無い。そんなアドレス宛に試験結果を知らせるような教員は、おそらく別の場面で振り込め詐欺やカード詐欺に引っかかってしまうに違いない。

 なかには、「あと2単位足りないので何とかお願いします」という懇願型のものや、逆に「専門科目の平均点を下げたくないので、良や可になるくらいなら不可にしてください」というメイルが届くこともあるがこれもおかしい。受講生側の個人的事情によって成績評価に手心を加えるような教員があれば、厳格な成績評価は守れない。そういう教員は懲戒処分の対象にすべきであるというのが私の考えだ。

【思ったこと】
_50804(木)[心理]行動分析学会水戸大会(4)“罰なき社会”の探求(4)矯正処遇や社会内処遇の充実・強化(2)

 日本行動分析学会第23回年次大会3日目の大会実行委員会企画シンポジウム:

司法において心理学に期待されるもの、「罰なき社会」の探求(What is expected of science of behavior in judicial field, search for a non-punitive society.)

の感想の続き。

 前回までに述べたように、私は、多数の善良市民と少数の悪人が混在する一般社会の中で、スキナーが提唱した「罰無き社会」原理を一律・無条件に適用することは、原理的にも実用的にも不可能であると考えている。犯罪や非行を犯した者は、社会全体の安全確保、および被害者関係者の心情への配慮という点から、一定期間はどうしても隔離することが必要である。また、刑務所や少年院は、ある程度は、懲らしめの場であり、二度と入りたくないという嫌悪的な環境にしておく必要もあると思う。もし、刑務所や少年院が一般社会より住み心地のよい場所であったとしたら、そこに戻るために犯罪・非行を犯すという行動は強化されてしまうことになる。これでは本末転倒である。

 ということで、刑務所や少年院における「罰無き社会」原理の適用は、
  1. 入院者や受刑者は一定期間収容されるということを前提とした上で、収容された環境の中で「罰無き社会」的行動管理の方策をさぐる。
  2. 少年院入院者、あるいは死刑囚以外の受刑者はいずれ社会に復帰させなければならない。本人のためにも、社会全体の安全確保のためにも、最適の更正方法を検討、実施していく必要がある。その際に「罰無き社会」的行動管理は、どういう面で有効性を発揮するか。
という2点から検討していく必要がある、というのが私の見解である。
 このうち、1.に関しては昨今、収容定員をオーバーするほどの過密収容状態になっているとの話を聞いた。そうなると、受刑者や入院者間でも、いろいろなトラブルが起こりやすくなる。また、罰的統制だけでは限界があるということも話題提供の中で繰り返し指摘された。

 いっぽう2.は、本人自身の将来のためにも、再犯防止のためにも、ぜひとも必要な処遇ということになる。これは出所後の社会復帰のプロセスにおいても重要となる。




 ところで、今回の話題提供の中でも紹介されたが、少年院法で認められている懲戒は、以下の3点に限られているそうだ。
第8条 少年院の長は、紀律に違反した在院者に対して、左に掲げる範囲に限り、懲戒を行うことができる。
1.厳重な訓戒を加えること。
2.成績に対して通常与える点数より減じた点数を与えること。
3.20日を超えない期間、衛生的な単独室で謹慎させること。

2 懲戒は、本人の心身の状況に注意して、これを行わなければならない。

 このうち、「2.」の減点というのは、行動分析で言えば「好子消失」にあたる。このことによって問題行動を弱化させるためには、「点数の蓄積」になるべく大きな価値を付与する必要がある。合わせて、望まし行動が遂行されている時に「点数」がプラスされていくような「正の強化」システムを充実させる必要があるだろう。

 「3.」の「20日を超えない期間、衛生的な単独室で謹慎させること。」というのが、少年院で認められた唯一の「罰」ということになるかと思うが、これは現実にどの程度効果を発揮しているのだろうか。孤独を楽しむことの好きな私などは、万が一にも刑務所に入ることがあったら、雑居房で煩わしい生活を送るよりは、独房で日記でも書いていたほうがよっぽど気楽でよいという気がするのだが...。
 なお、このことに関連しては、以前、「ストレスが多いのでわざわざトラブルを起こして独居房に入りたがる」受刑者が居るという話題をテレビで取り上げていたことがあった。いっぽう、

●NHKスペシャル2005年5月8日放送の少年院〜教官と少年たちの現場〜

では、「謹慎」による処遇の成果が具体的に紹介されていたように思う。

 今回の話題提供では、「自分はなぜ謹慎になるのか」、「他者と比べて公平な謹慎期間となっているのか」を十分に納得させる必要があるという点が指摘された。原因の帰属を明確にしておかないと、「自分だけ不当に罰せられている」といった反発につながるそうだ。

 次回に続く。