じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 学会行事が午後からであったため、朝一番にレンタカーを借りて鳥海山の写真を撮りに行った。当初は海岸からそびえ立つ雄姿を撮る予定であったが上空の寒気の影響で山は全く見えなかった。そこで、鳥海山の登山口として知られる鉾立まで上がってみたところ、山麓から上は奇跡的に晴れており、頂上(写真左上)のほか、雪渓から流れ落ちる滝、わき上がる霧の様子を間近に眺めることができた。海岸からの景色を眺められなかったのは残念であるが、海岸からの眺めが良ければわざわざ鉾立までは上がって来なかったであろう。何が転じて幸運を導くか、やってみなければ分からないものだ。


6月4日(土)

【思ったこと】
_50604(土)[心理]人と植物の関係を考える(2)人と木のつきあいは時を超えて

 6月4日に開催された人間・植物関係学会鶴岡大会の1日目の行事「人と木のつきあいは時を超えて」に参加した。

 この日は公開行事であり、人間・植物学会と鶴岡致道大学と東北文化研究センター3者の共催という形で開催された。「鶴岡致道大学」というのは聞き慣れない名前であったが、どうやら生涯学習講座の実施機関であったようだ。そのこともあって、冒頭には市長さんの挨拶もあった。10月の広域合併により、鶴岡は東北で一番広い市になるらしい。もっともその大半は森林である。それだけに、「人と木のつきあい」はこの地域の歴史や文化とも密着しており、今なお日常的な関わりをもたらしているとも言える。

 今回の話題提供は
  • 山形大学名誉教授・北村昌美氏:人が森を創る〜森林は文化的創造物〜
  • 東北芸術工科大学教授・東北文化研究センター所長・赤坂憲雄氏:屋敷林のフォークロア〜人との関わりから見えてくるもの〜
  • 山形大学農学部助教授・江頭宏昌氏:焼畑ロードをゆく〜伝統農法のゆくえ〜
 北村氏は森林文化研究の第一人者として知られており、この日もヨーロッパの写真などを紹介しながら、ヨーロッパの風景は、建物ばかりでなく街路樹や周辺の森のたたずまい、さらにはそこで捨てられるゴミなどの日常生活そのものが反映していることを強調された。そのいっぽう、日本の街々、特に新しい市街地では、画一的で無表情な風景が作られている。ふるさとの景色を守ることの大切さがよく理解できた。

 今回のテーマ「人が森を創る」というと、真っ先には人工林が頭に浮かぶが決してそうではない。森は自然そのものではなく、もともと文化的存在であるのだ。

 このことは、2番目の赤坂氏の講演の中でも語られた。東北を訪れる人々はしばしば「開発の手が及ばない雄大な大自然が残っていて素晴らしいですね」などと感想を述べる。しかし、じつは、森の大部分は原生林ではなく、文化の表現である。これは東北に限らない。自然たっぷりの風景も実は人間が作ったものであることが多い。

 そういわれてみれば、そもそも日本の伝統的な水田風景も、アルプスの牧草地もみな人間が作った風景であると言える。私のところにも文化科学研究科という大学院があるが、文化を語る以上は木や森もセットにして語らなければならないということがよく理解できた。

 朝7時15分から朝食を兼ねた理事会が開催されるというので続きは翌日に。