じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

5月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

[今日の写真] アヤメ。ダッチアイリス、ジャーマンアイリス、カキツバタ、花菖蒲など似た花はいろいろあるが、私が知る限り、「アヤメ」と呼ばれるものは全国どこへ行ってもこの一品種のみ。なお、写真の後ろのほうに赤い花がたくさん写っているが、このエリアは関係者以外立ち入り禁止で外側から眺めることしかできず、種名を確認することができなかった。おそらく赤花のイキシア(ヤリズイセン)ではないかと思う。


5月9日(月)

【ちょっと思ったこと】

女性専用車両

 各種報道によれば、首都圏の私鉄9社と都営地下鉄は痴漢対策で5月9日、女性専用車両を一斉に導入した。この措置に対しては、“待ちに待った女性専用車両「レディーGO」ついに始動!”と歓迎する動きがある一方、“これだけでは痴漢被害の解決にはならないし、逆差別"といった声もあり、ネットで検索したところ、「女性専用車両に反対する会」というのも存在することが分かった。

 私自身は片道徒歩10分という道のりで通勤しているため、首都圏の通勤時の混雑ぶりについてはよく分からないところがある。しかし稀に学会出張などで上京して朝8時台の通勤電車に乗ると、そのすさまじい混雑ぶりに驚かされることがある。駅によっては体当たりしないと乗れないし、いったん乗っても途中で降りることができない。車内では押し合いへし合いで、カーブやブレーキで倒れそうになることもある。

 「女性専用車両」の目的が痴漢防止対策というのは確かに妙なころであるが、詰め込まれた車内で、異性から不可抗力的に体をくっつけられたり押しつけられたりするのが嫌だというならば、その気持ちは理解できる。

 「痴漢防止対策」を目的とするというのは、「女性と男性を同じ車両に乗せれば痴漢行為は必ず起こる、どうやっても防止することはできない」という前提で成り立つ、性悪説の論理である。それが唯一の目的であるならば、車内に私服警官を張り込ませ、犯人を一人残らず検挙し、懲役20年の刑に処していったほうが犯罪行為の撲滅につながる。

 問題はむしろ、満員電車の中で不可抗力的に、異性から体をくっつけられたり押しつけられたりするという異常さにある。公園や広場にポツンと立っている女性のところに見知らぬ男性が近づいてきて体を押しつけたとしたら、これは紛れもない痴漢行為である。手はバンザイしていても同様だ。いくら男性が「ここは公共空間なので、私は、あなたの立っている場所から10cm離れた地点に立つ権利がある」と主張しても認められないであろう。

 ところが、詰め込みの通勤電車の中では、体を押しつけられてもそれだけでは痴漢とは見なされない。昭和30年代の高度経済成長期以来、見知らぬ異性どうしの体と体が触れるという、他所ではゼッタイあり得ない異常な状況が、誰からも疑われず、当たり前だとされ続けてきたのだ。

 けっきょくのところこの問題は、車両がはち切れんばかりに通勤客を詰め込んで輸送しなければ成り立たないという、大都市の通勤・通学システムの根本問題に帰着するように思われる。先日のJR西日本鉄道事故も、その根本は、過密ダイヤと無理な高速輸送にあるという点で同根だ。これを解決するには、
  • 首都機能の分散化
  • ネットを利用した在宅勤務の拡大
  • 持ち家志向の見直し。あるいは、「平日は都心の狭いマンション、土日は郊外のセカンドハウスで」といった生活スタイルへの転換
などが考えられる。