じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] レオノチス。今年も2001年11月8日の写真のような大株になることを期待していたのだが、今年は学内環境整備作業(草刈り、枝払い、清掃)の際に間違えて根元から刈られてしまい、再度芽を伸ばしたものの、このようなこじんまりした姿に終わった。花をつける時以外は地味なので、草刈りの時に他の雑草と間違えられてしまったようだ。


12月5日(日)

【ちょっと思ったこと】

師走の台風モドキ

 昨日の日記にも書いたが、12月4日〜5日は、師走台風27号のエネルギーを受けて発達した温帯低気圧の影響で、全国的に荒れた天気となった。

 各種報道によれば東京では午前6時20分に、観測史上最も強い40.2mの最大瞬間風速を観測。その直前の6時16分には、台風上陸時でも滅多に記録されない975ヘクトパスカルまで気圧が下がった。また、この日の最高気温24.8度も、12月としては観測史上最高。
[グラフ]  右の図は、気象庁電子閲覧室から取得したデータを基に、12月5日の気温変化をグラフに表したもの。

 岡山市の安定した?気温と比較すると、東京の気温変化がいかに激しいものであったかが分かる。もっとも、そういう岡山でも5日午前5時50分頃、JR姫新線の月田〜中国勝山駅間で、新見発中国勝山行きの上り普通列車が、線路内にあった数十本の倒木に乗り上げ、先頭車両が脱線するという事故があった。曲がり角で見えにくかったそうだが、大雨・強風の後に線路の安全点検もせずに列車を走らせるというのはどんなものか。ちなみに、この列車の乗客は1人だけであり、怪我はなかったそうだ。

【思ったこと】
_41205(日)[心理]昨今の血液型論議(4)「血液型ブーム」の原因(その1)

 某Web日記作者から、12月4日付のZAKZAKに、「血液型性格診断は正確!?BPOが各局に「問題あり」 専門家「思いあたるフシ」が信じる根拠に」という記事が掲載されていることを教えてもらった。

 「血液型」番組を放送している各局に「放送倫理・番組向上機構(BPO)」が「科学的根拠があるかのような構成で問題がある」と通達した、という報道自体は、11月27日付の毎日新聞記事とほぼ同一でありその後追いという気がしないでもないが、内容はやや詳しくなっている。BPOの調査では、「血液型」番組は、10月だけでも6回、いずれも高視聴率をあげる一方で、抗議も寄せられているそうだ。

 ZAKZAKの記事では、日本では「血液型性格判断ブーム」がほぼ10年間隔で起こること、今回は
最近、医学生理学の立場から『血液型によって免疫力に差があるのではないか』という学説が出されたのがきっかけです。見えないものが形に示されたことは、それらを提唱する人たちの後押しとなりました
というのが原因であろうとする信州大学・菊池聡助教授(心理学)の説明が紹介されていた。記事ではまた、記事ではまた、就職や人事、保育園の組分けなどで、血液型別による「決め付け」が行われてきたことに言及し、番組に対する抗議もこうした差別を危惧(きぐ)する人による指摘が大半を占めていることを紹介している。




 さて、私自身は、血液型性格判断を
  • レベル1:統計的には有意であるが実用的には役に立たない程度の僅かな差
  • レベル2:実用的価値があるほどの顕著な差
  • レベル3:生まれつきの属性(性別、血液型、人種など)と結びつけて他人を判断してしまうことの不当性
という3つのレベルに分けて論議する必要があることを繰り返し説いてきた。

 いま一番必要なのはレベル3の議論である。しかし、これは単に「血液型を語ることは偏見・差別につながるから止めましょう」キャンペーンを展開するだけで解消する問題ではない。
  1. こちらの一般情報にも意見が寄せられているように、偏見・差別を解消するには、そういう意識が生まれる原因まで遡って否定していくことが必要である。仮に「血液型」番組が全面放送中止になったからといって、それだけで偏見・差別が無くなるわけではない。
  2. 「血液型」が本当にブームになっているのか、については、多面的な指標でとらえる必要がある。放送される番組の本数や視聴率だけで判断できるものではない。むしろ「血液型性格判断」がどういう場面で利用され、何によって強化されているのかを明らかにすべきである。
という視点が必要ではないかと思っている。




 さて、「血液型性格判断」がどのような時代に、どういう原因でもてはやされてきたのかについては、各種文献でも色々に論じられている。上にも述べたように、本当にブームが起こっているのかどうかは多面的に検証されなければならないが、とにかく、ある時代に、社会的なニーズのもとで流行した、もしくは注目を浴びたということは確かであると思う。

 大村政男氏の『新訂血液型と性格』、あるいは草野直樹氏の『血液型性格判断のウソ・ホント』などによれば、戦前の「血液型ブーム」は、血液型提唱者がそれを意図したかどうかにかかわらず、当時の政治的背景のもとで注目を浴びていた。例えば1931年発行の『実業之日本』では
台湾原住民の反抗が激しい(当時台湾は日本の植民地だったので)。原住民にO者が多いからである。O型者は、がんらい、一般にきかぬ気で、しかも旺盛な精神力を持っている。そこでA型者の多い内地人(日本本土の住民〕との結婚を奨励して、遺伝的に彼らのなかにA型者を増加すれば、血縁につながる人情の美しさもあって、彼らはだんだん温和従順になってくるであろう」
というような説がまことしやかに説かれたという(←大村『新訂 血液型と性格』からの孫引きによる。長谷川のほうでは記載事実を確認できていない)。

 上記ではO型者は悪者扱いされているように見えるが、その一方では、「O型者を外交官に」という提案がなされたり、O型者だけの輜重部隊が編成されるという事実もあった。いずれにせよ、戦前のブーム(?)にそれなりの政治的背景があったことは確かだ。

 では戦後はどうか。また特に最近のブーム(?)は何によって起こっているのか。次回にこのあたりを述べたいとは思うが、私自身、率直なところ、納得できる説明を見い出せていない。たぶん、こういうことは、心理学者ではなく社会学者が得意とするテーマなんだろう。