じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 都心某所の紅葉。どこだか分かりますか?


11月7日(日)

【ちょっと思ったこと】

yahoo300MBキャンペーンと景品表示法

 11月1日の日記で、Yahoo!ジオシティーズが10月5日より、10月下旬より、ホームページ容量が大幅にアップ。通常で50MB、ジオプラス(Yahoo! BB会員は無料)なら300MBをお使いいただけます。というキャンペーンを開始していながら、11月になっても25MB(BB会員の場合)までしか使えない状態を作っているのは、企業としての信頼性を損ねることにもなり、会員拡大をめざすための広告の公正性という点でも問題があるのではないかと書いた。

 それから一週間経った11月8日になっても、少なくとも私のところでは、BB会員であるにもかかわらず、25MBを超えてファイルを転送することができない状況が続いている。

 これが私の所だけの現象なのか、新規入会された場合にはすでに300MBになっているのか分からないが、とにかく有料会員に対して25MBしか提供していないというのは明らかに問題である。相変わらず25MBに抑えられている方が他にもおられましたら、御連絡いただければ幸いです。

 なお、この件は、景品表示法:
商品又は役務の品質、規格その他の内容について実際のものより著しく優良であると一般消費者に誤認される表示
に反する可能性がある。こちらとしてはとにかく一刻も早く300MBが使えるような状態にしてほしいところだ。
 
【思ったこと】
_41107(日)[心理]日本理論心理学会第50回大会(2)第三世代の行動遺伝学(その1)

 昨日に引き続き、日本理論心理学会第50回大会の感想。今回は、

●招待講演「Behavioural Genetics: What Use To Psychology?」
司会:安藤寿康氏 (慶應義塾大学)
講師:Kerry L. Jang氏(ブリティッシュ・コロンビア大学)

について感想を述べたい。

 講演に先立って挨拶された安藤氏によれば、行動遺伝学はいまや第三世代に入っているという。すべて英語で話されたので一部聴き取れないところがあったが、第三世代のキーワードは「molecular」と「sophisticated」にあるようだ(←あくまで長谷川の聞き取りによる)。そして、心理学や精神医学の定説にも果敢に挑戦する。但し、この研究はかなりのお金を使うという点でいろいろと困難があるらしい。

 ここで少々脱線するが、懇親会の席で、日本語の「遺伝子」は中国では「基因」と呼ばれているというような話が出た(真偽は未確認)。そう言われてみれば、「遺伝」という言葉は、素人目に見ても、誤解を招く表現であるような気がする。



 さて、招待講演者のKerry L. Jang氏は中国系のカナダ人。懇親会で伺ったところでは、「Jang」は「鄭」という漢字にあたるとのことであった。もっとも、祖父母がカナダに移られたのは1890年頃の「清」の時代。Jang氏自身は完璧なネイティブスピーカーであり、しかも相当早口の(←というか、ネイティブとしては普通のスピード)英語で話されたことと、専門用語も多かったため、聴き取れない部分もあった。せめて録音させていただくべきだったと、少々後悔。

 講演の内容は、事前に公開されていた発表要旨にほぼ近い内容であったので、内容を正確に知りたい方は、私の感想ではなく、そちらのほうをご参照いただきたい。但し、一部順序が入れ替わっていたり、殆ど言及されない部分もあった。

 抄録にも示されているように、伝統的な心理学の諸理論は、観察された行動のレベルで検証されることが多かった。行動遺伝学は、一卵性双生児と二卵性双生児の比較、あるいは親子間の相関や遺伝子の構成様式の研究を通じて、遺伝的要因と環境的要因が行動に及ぼす相対的な度合いを調べたり、見積もる方法をとっている。これによって、行動レベルでは発見できないような「原因」を探索することが可能になるというわけだ。

 かつての行動遺伝学では、特定の遺伝的要因1つについて行動に及ぼす影響を検討することも行われてきた。(もちろん講演では言及されていないが)これは、血液型の違いがどういう行動に影響を及ぼすのかどうかを調べようとするのと大して変わりない。しかし、最近では、多変量の解析法を駆使して、2個あるいはそれ以上の要因の連関が遺伝的要因に基づくものであるかどうか、また複数の要因の連関のパターンに遺伝的要因と環境的要因がどの程度影響を及ぼしているのかということも明らかにできるようになってきたようだ。

 遺伝的要因と環境的要因の相対的な影響の度合いは、対象となる要因が遺伝的にどの程度の度合いで受け継がれるものであるのかを比較することによって推定される。双生児の研究では、一卵性双生児の類似度が二卵性双生児より高いことは遺伝的影響の関与を示す証拠となる。しかしこの比較だけでは、双生児の特別な生活環境(=生まれた時から一緒に暮らす。ベッドや両親も常にshareしなければならない)を取り除くことはできないのではないかとちょっと思った。もちろん、中には、両親が離婚したり戦争や事故のために別々に育てられるということもあるだろう。しかし「双生児であるが別々に育てられる」というのは、かなり特殊な条件であって、「別々に育てられる」ことの論理的帰結として2人のうち少なくとも1人は両親と一緒に暮らせないわけだから、かなりストレスフルな状況で育てられる可能性があると推測せざるをえない。そういう意味では、一緒に育てられた双生児と、別々に育てられた双生児を比較することには、想定外のファクターが働く可能性がある。

 たまたま11月3日のYahooニュース(共同通信)で、関西医科大医学部などのグループが日本児童青年精神医学会総会で発表した、強迫性障害と「きょうだい」構成についての研究が紹介されていた。それによれば、強迫性障害と診断された4-18歳の56人のきょうだい構成を分析した結果、一人っ子は9%、2人が63%、3人が20%、4人が7%であり、きょうだいを持つ子供の診断数が多く、強迫性障害は一人っ子に多いという従来の説とは異なる結果が示された。記事では「特に同性のきょうだいを持つ長子に多く、「親が他のきょうだいと比較する」などライバルを持つ葛藤(かっとう)が原因とみられる」という解釈も紹介されていた。サンプル数が少ないこともあり、その新解釈がどれだけ妥当であるかは分からないが、かりに「きょうだい」構成と強迫性障害との間に何らかの相関があるとするならば、精神障害に関して、双生児比較研究だけから一般化するのは危険が伴うように思えた。もっとも懇親会の席で講演者や司会者にこのことを尋ねたところ、私のような疑問はすでに解決済みであり、双生児以外との比較研究もちゃんとやっているのだというお話であった。

 次回に続く。