じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真]  ススキと半田山。山村風景のように見えるが、手前の木も後ろの山もすべて大学構内であるというのが本学の自慢である。

 なお、ススキとオギの区別についてはこちらに詳細な解説がある。この写真はススキであろうと思うが、細かい確認はしていない。


10月26日(火)

【ちょっと思ったこと】

台風24号その後

 台風24号(NOCK-TEN) は10月26日の正午に九州の南で温帯低気圧に変わり、その後、日本にはあまり接近せずに南海上を東に通過した。この経路はデジタル台風の記録に詳しく記されている。

 10月22日の日記で、この台風の予想進路を取り上げたが、台湾北部をかすめて九州の南に達するというコースは、米軍合同台風警報センターが10月22日18時現在で予想した進路(こちらの図のD)にほぼ一致していたと言える。10月23日6時現在の気象庁予報(図のE)では、予報円の中心は台湾の南西部に位置しているがこれは結果的に「外れた」ことになる。なお念のためおことわりしておくが、気象庁も24日以降では、台湾から東に向きを変え、日本の南海上で温帯低気圧になるという予報に切り替えていた。

 気象庁に比べると米軍合同台風警報センターのほうが先まで予想しすぎるため、時として「大はずれ」になることも多い。しかし、今回の23号と24号に関しては、結果的に「予想が当たった」と言ってよいかと思う。なお、米軍センターの情報の利用に関しては、当該サイトに
JTWC products on this website are intended for use by U.S. government agencies. Please consult your national meteorological agency or the appropriate World Meteorological Organization Regional Specialized Meteorological Center for tropical cyclone products pertinent to your country, region and/or local area.
という注意書きがあることもお断りしておく。

【思ったこと】
_41026(水)[心理]血液型差別番組を考える(16) ジェンダーと血液型差別/テレビ朝日の血液型好き嫌いアンケート

 26日夜、学内で開催されたジェンダーに関する研究発表会に参加した。「ジェンダー」自体については別の機会にまわすこととし、ここでは、血液型差別とジェンダーの関係について少しだけ考えてみたいと思う。

 今回の研究会の配付資料の中に、「生物学的決定論」についての言及があった。これは、「生物学や解剖学が運命を決定するという考えを指す言葉」であり、そこから「男性と女性は生物学的に異なっているから、要求も能力も異なり、それが社会的役割に反映される」という考え方が過大に扱われ、性差別主義を擁護する論拠として使われてきた経緯がある。

 もちろん、男性と女性では、染色体、身体の構造、ホルモンなど、生物学的には大きな違いがある。しかし、現代社会における制度、慣習、役割分業の多くは、そうした生物的差異の自然の現れではなく文化的に作られたものである。ジェンダー概念はそのようなところから成立している()。


ジェンダー概念を使用することには批判もある。“「生物学的性別」とは異なる「文化的・社会的性別」という定義を流通させることによって、逆に生物学的性別は不変のものであり、しかもジェンダーに先行するという因果関係を肯定しつづけることになる。つまり、生物学的決定論は斥けたにもかかわらず、生物学基盤論は残っている。”という批判だ。要するにジェンダーの対象とは、「ふたつのジェンダー」ではなく差異化という行為そのもの。


 少々脱線したが、日常行動の差異や相性を何でもかんでも血液型に結びつけるという「血液型こだわり主義」の人たちは、しばしば、「生物的決定論」を誇大解釈している。要するに、

●血液型が異なるというのは生物学的な違いである。生物学的に違う以上は、行動の差に何らかの影響を与えるはずだ。

という強い確信だ。もちろんそういう問題意識を持って、純粋に学問研究を行うことは何ら問題ではない。問題は、そういう地道な努力をせず、見かけ上の差が現れた時に何でもかんでも「血液型の違いが反映している証拠だ」という一面的な態度で物事をとらえてしまうところにある。

 最近、「男性脳vs女性脳」というような、いかにも医学的・脳生理学的な研究を誇大解釈したような俗説が流布され、新たな性差別に利用されていると聞く。血液型の場合も同様であり、
実は近年、世界中の科学者がこの「血液型」に注目し驚きの研究報告が続々と発表されているのです! ( あるある大事典紹介サイトより)
などと誇大解釈し、なんでもかんでも血液型に結びつけ、それを娯楽ネタにして視聴率稼ぎに使おうというテレビ番組が後を絶たない昨今である。




 なお、性差別の場合は、人々の固定観念にある「男らしさ、女らしさ」にとどまらず、すでに制度や慣習上の差別をもたらしている点が血液型差別とは大きく異なっている。しかし、昨今のテレビ番組や、番組サイトのアンケートなどを見ていると、今まさに、ジェンダーに匹敵する血液型差別偏見「文化」が作られようとしているのではないかという危惧の念をいだかざるをえない。

 例えばこちらのサイトに寄せられた情報によれば、テレビ朝日 これが日本のベスト100では、血液型アンケートなるものを実施しているが、その中には
  • Q7.あなたが恋人にしたいと思う異性の血液型は何型ですか?
  • Q8.あなたが結婚したいと思う異性の血液型は何型ですか?
  • Q9.あなたが友達にしたくないと思う血液型は何型ですか?
  • Q10.あなたが上司にしたくないと思う血液型は何型ですか?
  • Q11.あなたが部下にしたくないと思う血液型は何型ですか?
  • Q13.あなたが相性がいいと思う血液型は何型ですか?(男女問わず)
といった、血液型差別・偏見を助長しかねない質問項目が多数含まれている。こういうアンケートを実施し、同調者だけからの回答を集計して公表することが社会的にどういう影響を与えるのか、もっと慎重に考えてもらいたいものだ。