じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 講義棟前のシュウメイギク(秋明菊)。菊という字がついているが、キンポウゲ科アネモネ属であり、英名も「Japanese anemone」となっている。


10月18日(月)

【ちょっと思ったこと】

熟年ラクダ隊

 DVDハードディスクに録画しておいた「熟年ラクダ隊タクラマカン砂漠を行く」(10/16放送)を、18日にやっと見終えることができた。

 番組こぼれ話サイトにもあるように、この旅は、平均年齢63歳(最高齢78歳)の日本人隊員11名と中国側隊員6名、ウイグル族のラクダ使い10名、それに同行するNHK3名の計30名の人間と47頭のラクダで行われたそうである。最新のGPSが利用され、さらに、いくつかの補給所が設けられていた。このあたりは、スウェン・ヘディンの時代とは違う。しかしそうは言っても、73日間かけて砂漠の中を何百キロも歩き通した熟年パワーはスゴイ。まずはその御努力と中高年に自信を与えてくれたことに敬意を表したい。

 しかし、スポンサー無しでこれだけの規模、これだけの日数をかけて旅をするには相当の資金も必要なはず。5月21日の日記5月28日の日記で商業公募隊について言及したことがあったが、あの場合は普通、500万〜1000万円くらいの参加費用がかかるはずだ。今回はどうだったのか、旅行好きの私にはちょっと気になるところだ。

 もっとも、あれだけの規模の旅行を企画したわりには、上流のダムの放流でホータン川が渡れなかったとか、ケリア川(たぶん)の氷が早く融けたために苦労したとか、3月に入って砂嵐にまきこまれたとか、...事前にきっちり情報を得ておけば対処できたのではないかと思われるようなフシもあった。

 ところで、こちらのアルバムサイト(近いうちに、yahooのアルバムサイトに引越予定)にあるように、私自身は、2003年12月27日から2004年1月5日まで、南新疆シルクロードのツアーに参加したばかりである。このうち、12月31日には、庫車から砂漠公路を通って民豊に抜けている。また、ホータンにはちょうど元旦に到着した。このラクダ隊が出発したのも1月初めのようなので、ひょっとしてどこかでお会いしているのではないか、少なくともニヤミスがあった可能性が高い。

 今回の番組で紹介された砂漠は、景色だけについて言えばこちらとあんまり変わらないように見えた。自分の足で39度線を歩き通すことの意義は分かるが、砂漠の景色だけを楽しむなら、2泊3日のラクダツアーでもあんまり変わらないように思う。

 もう1つ、番組の最初のほうで出発地ホータンの街の景色が映し出されていたが、あれはホータンでも裏町のほうの露店であって今の町の姿とはほど遠いように感じた。町の中心部は、こちらの22番から24番の写真のような近代的な町に変わっており、34番の写真のようなネオンまで輝いていた。

 今やタクラマカン砂漠は、石油や天然ガスの宝庫であり、砂漠のど真ん中の各所で採掘が進められている。また、こちらのニュースによれば、2005年より二番目の砂漠縦断道の建設が始まるという。タクラマカンの神秘とロマンは、もはや過去のものになりつつある。

【思ったこと】
_41018(月)[心理]血液型差別番組を考える(12) 血液型相性判断をクリティカルな目で捉え直す(その2)

 昨日の日記の続き。先日の「発掘!あるある大事典2 秋の芸能人血液型スペシャル」(10月11日の日記参照)で
各血液型者男女各1000人、計8000人にQ1「相性の良い異性の血液型は?」、Q2「相性の悪い異性の血液型は」という質問を行い、「相性が合う」回答数と「合わない」という回答数の差をランキングに使った。
という調査が行われたことについて、クリティカルシンキングの視点から見直しを進めていきたいと思う。

 まず、この「調査」に関しては実施方法に一部不明な点がある。いくら「血液型」好きの日本人といえども、8000人全員がそんなふうにして相手を見ているとは思われない。中には、「血液型では相性は分からない」あるいは「そのような調査には答えられない」という人たちだって居たはずだ。いったい8000人のうち何%がちゃんと回答したのか、あるいは、「血液型と相性は関連がある」と思っている8000人だけを寄せ集めたのか、このことを明示しないと、結果を正しく解釈することはできない。

 それから、

「相性が合う」回答数と「合わない」という回答数の差をランキングに使った。

という集計方法も大いに疑問が残る。例えば、X型者1000人がY型者との相性について答える場合、

(a)相性が合う200人、相性が合わない100人、どちらとも言えない700人、差し引き100人のプラスで「相性が合う」

という場合と

(b)相性が合う550人、相性が合わない450人、差し引き100人のプラスで「相性が合う」

では、中立的な回答の比率が大きく異なっており、同質のデータとしてランクづけするわけにはいかない。また、重要なことは、上記(a)や(b)はいずれも、単に差し引きの絶対値について述べているだけであって、何かの傾向を示唆するものではない。(a)や(b)のような結果が得られた時の正しい結論は、

●(X型者からみた)Y型者には、相性の合う人もいれば、相性の合わない人もいる。少なくとも実用レベルで、相性のよしあしを判断することはできない。

ということである。このことに限らないが、何が何でもランクづけしてそれに意味をもたせるようとするのは、クリティカルシンキングの精神に明らかに反している。




 では、上記の疑念が晴らされ、血液型の違いによる相性に顕著な差が出た場合はどう考えたらよいのか。その場合でもまずは、「血液型ステレオタイプ」の影響を考えるべきだ。

 回答者が自分の身の回りの人たちとの相性を周到に分析できる状況にないとするならば、まず第一に考えられるのはテレビ番組、雑誌記事、単行本などの影響である。「血液型X型」について何らかの悪いイメージが植え付けられてしまっている人は、生身のX型者との相性ではなく、「X型イメージ」に対する好き嫌いによって相性についての回答をしてしまう可能性が高い。

 この影響を調べる一番よい方法は、どこか別の国で、特定集団内の相性を調べ、それとは独自に、個々人の血液型データを取り寄せて、血液型による違いがあるかどうかを検証することである。この比較研究により、もし日本人だけで血液型による違いが顕著であるとすると、これはもはや「血液型別相性」の証拠ではない。むしろ、日本人がいかに血液型ステレオタイプに汚染されているのかという証拠になるだろう。

 これまでの考察で述べたように、「血液型と性格」の議論では、

●レベル3:生まれつきの属性(性別、血液型、人種など)と結びつけて他人を判断してしまうことの不当性

についても真剣に考えていかなければならない。日本人が血液型ステレオタイプに汚染されていることが事実として確認された場合は、差別や偏見を解消するための具体的な手だてが直ちに必要となる。