じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] ボリビアの国花、カントゥータ。国旗と同じ、赤、黄色、緑の配色になっていることから国花に選ばれたそうだ。ボリビアの国旗の写真はこちらに、カントゥータの写真はこちらにもあり(いずれも、昨年、チチカカ湖で撮影したもの)。
なお、もともとボリビアの国旗は、上から、黄色、赤、緑の配色になっていたが、虹の色の並び方に合わせて現在のように変更されたということである。


9月23日(木)

【ちょっと思ったこと】

アイリッシュエルクはどうして滅びたか

 昼食時、NHK教育「地球から消えた動物(3)アイリッシュエルク」のアンコール放送を視た。

 なかなかよくできているなあと思ったのは、わずか25分という短い時間の中で、分析方法や証拠をきっちり挙げながら、筋道立てて絶滅した原因を解説している点である。

 アイリッシュエルクが滅びたのは氷河期が終わる頃だったという。暖かくなるのだから食物は豊富になるものと考えるのが普通だが、氷河の氷が溶けて海に流れ込むことで、アイルランド周辺の海水はむしろ冷たくなり、南からの海流が入らなくなった。つまり、氷河期が終わることで一時的に寒くなる地域があったのだ。これにより、アイルランド本土のアイリッシュエルクたちは絶滅した。いっぽう、当時陸続きだったグレートブリテン地域とは、海水の上昇で分断。アイリッシュエルクたちは、それぞれの島に孤立した。大きな島では、暖かくなることで松などの樹木が育ち、アイリッシュエルクたちは草を食べられなくなって絶滅。また小さい島に取り残された群れでは、近親交配により多様性が損なわれて絶滅。

 以上のような内容であったと記憶しているが、各時代の地質から当時の植生を推測したり、他の原因による絶滅の可能性を証拠に基づいて否定している点など、好感が持てる番組であった。

【思ったこと】
_40923(木)[教育]小学生の「天動説」、私も考えを述べる(1)太陽はどこにも沈まない

 9月21日の各種報道によれば
小学生の4割が「太陽は地球の周りを回っている」と思い、3割は太陽の沈む方角を答えられないことが、国立天文台の縣(あがた)秀彦・助教授らのアンケートで分かった。
という。このニュースは、新聞やテレビでは、「ゆとり教育による学力低下の証拠か」とか、「今の小学生は、当たり前のことを知らなさすぎる」という程度に受け止められていたようだが、日記才人登録Web日記(ブログを含む)には、さすが論客が多く、もっと突っ込んだ意見が多種多様に表明されていた。一言居士の私も、それらに触発されて何か書いてみたいと思う。

 ところで、まずニュースのもととなったアンケート調査だが、私には今ひとつ信頼できないところがある。

 第一にサンプルが少なすぎる。各種報道によれば、
  • 「天動説か地動説」のアンケートは、2001年から2004年に、北海道や広島など8都道府県の公立小4校で実施。4年〜6年生までの348人が回答し、「地球は太陽の周りを回っている」と正解したのは56%。42%は「太陽は地球の周りを回っている」を選んだ。
  • 太陽が沈む方角を公立小9校720人に尋ねたところ、「西」と答えた子どもは73%で、あとの3割近くが正確に答えられなかった。
ということだが、そんな一部の地域の数百人の結果だけで、日本の小学校全体のことを言ってもらっては困る。

 第二に報道だけでは、いったい何を目的にしたアンケートだったのか?、質問項目はいくつだったのか?、選択肢はどのように配置されていたのか?、といったことが伝えられていない。回答の比率などというものは、アンケートが行われる時の雰囲気、回答者の時間的負担、選択肢の内容、などによってずいぶんと変わってくるはずである。極端なケースとして、小学生たちが大人を驚かせようと、わざと誤答をした可能性だってある。

 ということで、もとのデータの信頼性が確認できない限りは、本来はそこから先には進めない。このことをまずお断りしておきたい。




 次に、報道で伝えられた2つの結果は、じつはそれ自体矛盾しているのである。「地球は太陽の周りを回っている」というのは明らかに地動説、では「太陽が沈む方角はどこか?」はどうだろうか。厳格な地動説に立てば、太陽など沈むはずがない。聡明な小学生だったら、

●太陽はどこにも沈みません。地球の自転によって、地平線の向こうに見えなくなっていくだけです。

と答えるのが本当の正解だ。あるいは、なぞなぞ好きな小学生だったら、

●北極点や南極点には、西も東もありません。

と答えるかもしれない。




 「太陽が沈む」というのは地動説から見れば間違った表現だが、現実には誰も異を唱えない。じっさい日常生活における天体現象は、たいがい、「天動説」で表現されている。9月23日はたまたま秋分の日であるが、

●秋分とは、太陽の黄経が180度になる瞬間(2004年の場合は、9月23日の午前1時30分)。

と定義されているのである。しかし、太陽は、太陽系の中心である。銀河系のどっかに、黄経180度の線が引かれていて、そこを通り抜けるわけでは決してない。




 それはそうと、「地球は太陽の周りを回っている」を選んだ子どもは、本当はどんな宇宙を描いていたのだろう。そもそも、地球は丸いということを、いつどうやって納得したのだろうか。地球は平面で、プラネタリウムのような丸天井の上を太陽や月が回っているとは、考えなかったのだろうか。そのあたりもちゃんと尋ねてほしかったと思う。

 ちなみに私は、中学生の頃に犬吠埼、大学生の頃に室蘭の地球岬に立ったことがあるが、残念ながら、地球の丸さを実感することはできなかった。地球が本当に丸いと感じたのは時差を体験した時、そしてさらに強烈であったのは、オーストラリアや南米で、太陽が右から左に動き、北東の空に逆さのオリオン座が現れた時であった。

 次回に続く。