じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 岡大事務局棟[旧日本軍第17師団(大正14年廃止)司令部・歩兵第33旅団司令部]裏側に咲くクチナシ。移築保存工事完了後の最初の顔合わせとなった。


6月21日(月)

【ちょっと思ったこと】

台風またまた外れる

 昨日の日記で21日午前に岡山を通過するかもしれないと書いたが、結局、やや東よりの徳島から明石方面を通過した。当日は暴風警報が発令され、県内公立校のうち413の小学校、164の中学校、75の高校、8つの特殊学校が自宅待機または臨時休校となったが、台風進路の西側に位置したこともあって、大した被害なしに済んだ。

 じっさい、最新気象データを見ると、岡山市で吹いた風は午前6時台〜8時台の平均13メートルが最大(瞬間でも25メートル程度)、雨量のほうもトータルで23mmに過ぎなかった。被害が無かったのは幸いだが、これじゃあ、岡山県民は「どうせ来ないだろう」と、台風に対してますます無警戒になってしまう恐れがありそう。

 ところで、昨年来、台風が近づいた時には、防災情報提供センターのレーダーをずっと利用してきたが、今回は、いちばん肝心な時間帯に全くアクセスすることができなかった。「ご意見をお願いします」というような送信フォームがあったので、翌朝、以下のような意見を送信させていただいた。
21日は台風接近で、貴サイトの真価が発揮される時でありましたが、アクセス集中のせいでしょうか、いちばん情報が欲しい時間帯に必要な情報を手に入れることができませんでした。

危機管理体制見直しの一環として、例えば、台風接近のような緊急時には、
  • 直近の静止レーダー画像のみを配信するとか、
  • アイコンや背景画像は抜きにするとか、
  • ミラーサイトを増設する
などの改善を検討していただきますようお願いします。


【思ったこと】
_40621(月)[一般]マイコドリの奇妙な習性とコスタリカの風土

 21日の夕食時にNHK「地球ふしぎ大自然」を視た。この日はコンビを組んでプロポーズ!?  マイコドリのびっくり求愛術という 話題。コスタリカのジャングルに生息するオナガセアオマイコドリ(尾長背青舞妓鳥)の奇妙な求愛行動が取り上げられた。

 リンク先の番組記録サイトにもあるように、この鳥のオスは、メスに対して、コンビを組み、合唱とダンスからなる熱心な求愛行動をする。何の血縁関係もないはずの二羽のオスが、なぜライバルではなく「師匠と弟子」のコンビを組むのかという謎解きに興味がそそられた。単なる「驚き」の提供ではなく、事実の正確な把握と、視聴者にも能動的に考えるチャンスを与える形で少しずつ謎解きをしていくところが、この番組の良いところである。

 番組ではまず、二羽のオスが「師匠と弟子」の関係にあることをスローモーションのビデオから実証した。合唱やダンスが「師匠」の合図によって開始される様子などは、動物学者がいくら肉眼で観察してもなかなか証拠づけられるものではない。映像を通じた動作解析で実証できるというのは素晴らしいことだと思った。

 それでは、なぜ、オナガセアオマイコドリは「師匠と弟子」でコンビを組んで求愛行動をするようになったのだろうか。番組では、

(1)単独で求愛するオスよりも二羽で求愛するオスを交尾の相手として選ぶメスのほうが多かったため、そういう遺伝的特性を持ったオスの子孫が増え、結果的に今のような習性を持つ鳥ばかりが生き残った。
(2)ジャングルでは、単独のさえずりよりも二羽で合唱するほうが遠くまでよく聞こえるため交尾する機会が増えた。

というような仮説が紹介されていたが(←長谷川の聞き取りのため不確か)、これだけでは今ひとつ説得力に欠ける。(1)などは、どんな奇妙で複雑な求愛行動についても「そっちのほうがメスに好まれたからだ」と言ってしまえばそれでオシマイという気がする。このほか番組では、コスタリカのジャングルは木の実が豊富で餌探しで苦労する必要が無いので踊りに専念できるというようなことも言っていたが、これも、1つの前提条件にすぎず、「なぜ師匠と弟子なのか」の決定的な説明にはなっていない。

 この種の行動を説明するには、食料資源の需給関係に加えて、生息可能なエリアの広さ、密度、繁殖率、繁殖可能年齢、寿命、インセスト回避などの複雑な要因が関与しているものと思うが、ジャングルの中を飛び回る鳥たち相手では、個体識別は相当に難しそうだ。研究者の苦労は並大抵のものではなかろう。




 いずれにせよ、オナガセアオマイコドリの世界では、師匠とコンビを組んで踊りの修行を10年も積まないと、メスには気に入ってもらえず、子孫を増やす資格が与えられないようだ。いっぱんに動物の世界では、力の強い個体だけが縄張りを確保し子孫をつくることができるという意味での競争原理が万能のように思われがちであるが、「歌と踊り」のスキルを磨くという、ある意味で平和的で「文化的」な競争原理によっても「持続可能」な食料配分や繁殖が維持できることを示しているという点で、オナガセアオマイコドリの世界はまことに示唆に富んでいる。

 コスタリカと言えば、「軍隊を保持していない非武装中立国」(←但し、実際は人口比で日本の自衛隊と同規模の国境警備隊を有しているらしい)であり、エコツアー発祥の地としても知られているが、そこに棲む野鳥がそれらを象徴するような平和的な生活を維持しているという点もまことに興味深いところだ。