じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 大学構内各所にあるトベラが白い花をつけている。昨日の気象コーナーで、この時期はなぜか白い花が多いと言っていたが、これもその1つか。近くを通ると淡い香りがする。この香りはアオスジアゲハに人気があるようだ。


5月12日(水)

【思ったこと】
_40512(水)[一般]殺害現場のネット公開

 各種報道によると、イラク国内で武装グループに誘拐され人質となっていた米民間人が、イラク人虐待事件の「報復」を理由に首を切り落とされた。その映像は、11日にイスラム系Webサイトで公開され、米国内では大きな衝撃が広がっているという。

 この事件で衝撃的であったのは、一人の人間の命が奪われたということに加えて、その動画がネットを通じて世界中に配信されてしまったということであった。

 それにしても、犯人たちは、なぜこのような残虐な映像を発信したのだろう。わざわざ国際世論を敵に回し、ブッシュ政権の行為を正当化するだけの効果しかもたらさないように思える。日本人人質3人を「虐待」した映像(←命は保証されていたらしいが)の場合もそうだが、どうみてもアピールの仕方が間違っている。あるいは、「目には目を」という文化の違いか、カルト宗教に心を奪われ判断能力を失ったためだろうか。




 ところで、この事件では気になることが他にある。米国でも日本でもかなりの人が、当該サイト(ミラーサイト、コピーサイト?)にアクセスして動画を閲覧したらしい点である。ここで考えるべきは、1つは倫理的な問題、もう1つは、悪質なウィルスに感染しないかという問題だ。

 もっとも、前者に関しては、今回に限らず、戦争の悲惨な場面はできるだけありのままに伝えた方がよいという考えもある。今回の事件に関連して、ホワイトハウスのマクレラン報道官は11日、「映像は自由の敵たちの本性を示している。無実の男女、子どもの生命を何とも思っていない」と語ったというが、イラクで誤爆や巻き添え攻撃で殺された民間人は1人や2人ではない。また、かつて何万人もの無実の男女、子どもの生命を一瞬にして奪ったのは原爆投下ではなかったか。アメリカは、そういう惨状の映像から目を背けてはなるまい。

 そのことはさておき、後者の点にはもっと気を配るべきだと思う。ネット上のウィルスというのは、通常、Eメイルの添付ファイルを展開するか、正体不明のファイル(拡張子を偽装したファイルや、ウィルスを忍ばせたプログラム)をダウンロードして実行することで感染する。よほどの初心者で無い限り、ネットユーザーは通常このことに気を配っているはずだ。

 ところが、今回のように、米国でも日本でもテレビでいっせいに映像の一部が報じられる。しかしテレビでは、残虐なシーンは流れない。「このあとに、人質の首を切り落とす映像が続きます」などと、まるで「続きはネットで閲覧してください」みたいな言い方をする。真実を知りたいという動機であれ、怖いもの見たさであれ、とにかく、多くの人は、ネットからアクセスを試みるに違いない。その際、あまりにも衝撃的な事件であることに動転し、当該のサイトが本物かどうか、公開者が何を意図しているか、そこにウィルスが仕組まれているか、などという警戒心はどこかに吹っ飛んでしまう。

 今のイスラム過激派にはそこまでの技術は及ばないとは思うが、悪意をもった第三者がニセの映像サイトを作り、何も知らない素人たちが匿名掲示板や個人サイトを通じて無責任にリンクを貼れば、いずれとんでもないウィルス被害が広がるに違いない。戦争の惨状を伝える映像はできる限り多く伝えるべきであるが、それらは、平和活動の実績のある、責任あるサイトを通じて発せられるべきである。