じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 岡大・東西通りのハナミズキ。南北通りの銀杏並木に対して、東西通りはこのハナミズキが主役。


4月20日(火)


【ちょっと思ったこと】

奨学金の返済、ついに終了

 「独立行政法人日本学生支援機構」という聞き慣れない団体から郵便が届いた。裏面には日本育英会が廃止され独立行政法人に移管されたというお知らせがあり、中を開いてみると、返還残額と次回振替額が記されていたが、なっなんと、

返還残額と次回振替額が同額

になっていたのである。28歳で大学院を終え、そのあと6年間オーバードクターを余儀なくさせられたおかげで返還免除規定から外された私であったが、これで晴れて、債務ゼロの日を迎えることになる。いま考えてみると、専任職就職後5年ほどはかなりの経済的負担となってきたが、その後は何とかやりくりできた。もともと借りていたお金である以上、返すのが当然。ひがみを承知で敢えて言わせてもらうが、高収入を得ながら返還免除の適用を受けている人たちはちょっと贅沢すぎるように思える。

 ま、いずれにせよ、来月からは、振替が無くなり実質的に昇給だ。めでたいめでたい。
【思ったこと】
_40420(火)[一般]江戸の大人に学ぶ粋な生き方

 一日前の話題になるが、車を運転中にNHKラジオで「ときめきインタビュー:江戸に学ぶ大人の生き方」を聴いた。出演されたのは、民俗学者の神崎宣武氏であった。

 神崎氏は1944年岡山県生まれ。「旅の文化研究所」所長、日本民俗学会会員であるとともに、郷里の吉備高原では神主でもある。

 運転中で少々聞き取れないところもあったが、神崎氏は、武蔵野美術大学在学中より宮本常一先生に師事。大名の宿舎(本陣)の研究を著したところ「玄関から入って玄関から出てくるような調査では不十分(万が一の時逃げられるような裏口もあったはず)」などと、師匠からこっぴどく叱られたこともあったとか。これもまたよく聞き取れなかったが、民俗学をやるからには、学会発表や論文書きばかりに明け暮れていてはダメだというようなことも言われていたようであった(←長谷川の聞き取りのため不確か)。

 お話の中心は、江戸時代の町人の人生観に関わる内容であった。平均寿命が四十歳以下の時代であり、今のような高齢者問題は存在しなかったが、「粋がる」若者と、「粋な」大人との対比はあったようだ。建て込んだ長屋、それも何時火事で焼け出されるか分からないという状況にあっては、そもそも投資先が見当たらない。このことが「宵越しの金は持たない」の背景になっているようだ。

 「粋」は難しい概念であるが、まず反対語の「野暮」を考え、野暮でないものを探していくと残りの中から粋なものが見つかってくるらしい。私自身が野暮の典型であることは疑う余地の無いところであるが。

 放送の終わりのほうで「一直線に並んでスタートではなく、リレーのバトンを受け継ぐ」という生き方にも言及された。スタートからゴールまで自分一人で走り抜くのも結構だが、バトンを受け取り、定められた区間をいっしょうけんめい走り、次の走者に引き継ぐということにも、個人競技では味わえない醍醐味がある。江戸のように身分や階級に縛られた社会は不自由で不公平のように思いがちであるが、いったん「身の程」をわきまえ現状を受け入れてしまえば、かえって自由に羽根を伸ばせる部分がある。平均寿命が四十年以下という人生にあっては、スタートからゴールまで一人で走り抜けるというのはあまりにも負担が大きすぎたに違いない。


 神崎氏は、少し前に講談社より『江戸に学ぶ「おとな」の粋』という著書を刊行されているそうだ。注文しておきたいと思う。