じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 白木蓮の花が開き始めた。16日は娘の中学の卒業式があった。青空に向かって咲く一輪一輪の花が、それぞれの卒業生たちの門出を祝っているように見える。


3月16日(火)

【ちょっと思ったこと】

卒業式の朝のハプニング

 娘の卒業式の日、最後の登校姿を撮ってやろうと、アパートの出入り口で待ちかまえた。娘が階段を降りてきた瞬間をねらって、デジカメのディスプレイを見ながらシャッターを押す。撮られるのを嫌がって歩き出そうとするので、「こら、動くなっ! こっちを向けっ!」と言いながらさらに1枚撮る。

 ところが顔を上げてびっくり。







なっなんと、私が撮ったのは隣の家の女の子(中2)だったのである。

【思ったこと】
_40316(火)[教育]産学連携への挑戦:モノづくりからチエづくりへ(1)ウォークマン開発秘話

 他の話題を取り上げていたため執筆が遅れてしまったが、3月14日(日)の13時10分から17時10分頃まで、表記のシンポジウムが岡山大学五十周年記念館ホールにて開催された。シンポにはウォークマン開発の指揮をとった黒木靖夫氏(現在は黒木靖夫事務所代表)、チボリ・ジャパン社長の高谷茂男氏のほか、地元財界の代表、また岡大側からは、産学連携担当副学長や教育学部長が出席した。

 会場に入ってまず驚いたのは、これだけ著名な方が来られるというのに、400人収容のホールで空席が目立ったことである。少し前に、やはり地元財界の代表列席のFD関連行事があった時もそうだったが、事前の広報宣伝活動が足りないように思った。私自身がこのシンポを知ったのも、たまたま郵便物を受け取るロッカー室にチラシが置かれてあるのが目にとまったためである。年度末の休日ということもあって、学生も教員も集まりにくい時期であることは確かだが、それならそれで、入学手続に来た受験生親子でも呼び込めばよいのにと思った。




 シンポではまず、黒木氏の基調講演があった。黒木氏は、ソニー時代に、「ウォークマン」など独創的な商品企画・開発の陣頭指揮をとられ、独立後も富山県総合デザインセンター所長を務められ、また『ビジネスマンのための個性育成術』などを著したことでも知られている。

[今日の写真]  黒木氏のご講演では、最初マイクの調子が悪くハウリングが起こってしまった。どうやら、マイクを離して小さな声でしゃべり出されたために、会場の音響担当者がボリュームを上げすぎてしまったようだ。しかし、黒木氏は、そのことには頓着せず、ひとこと「このマイクは、パナ○ニックですね」と言われた。さすがモノづくりの専門家は視点が違うものだと、まず感心してしまった。

 黒木氏によれば、ウォークマン自体は20世紀の産物。ソフト(音楽)を聴きたいために、ハードとしてのウォークマンが登場した、つまり、ハードの開発の前提には良きソフトが必要ということを言われたかったようだ。

 黒木氏によれば、人間の五感のうち、視覚、聴覚、嗅覚は文明の発達により衰えてしまう。その一方、味覚と触覚はより洗練されたものになる。特に日本では、世界中の料理が日常生活の中に登場する(西洋料理も中華料理もごくふつうに食べる)という点で味覚が洗練される環境にある。また、日本人は、鏡を見なくても髭を剃れるし、麻雀のモーパイも得意だ。このあたりは西洋人には真似ができないらしい。

 なお、感性という日本語は英語には訳しにくい。しばしば「Sensitivity」という言葉が使われるが、これは「感動」というニュアンスがある。【なお、ATOKの日英翻訳変換では、「感性」は「Sensitivity」、「感動」は「Impression」と変換される】。

 数々のヒット商品を生み出したSONYであるが、何から何まで全く新しいモノを作ったわけではない。その基本は、

Something different.
Something New!

というところにあるという。

 ご講演のあと若干の質問が許可されたので、さっそく私も一言。私の質問は、少し前に話題になった200億円裁判に関連して、企業の中で商品開発が成功し莫大な利益を得た時、個人はどのくらいの報酬をうけとるべきと考えるか、例えばウォークマン開発の場合はどうか? というような内容であったが、あまりにも直な訊き方をしてしまったためだろうか、このことには直接お答えにならず、デザイン開発者には応分の報酬が与えられるべきであるという事例をいくつか紹介されるだけにとどまった。

 このほか別の方から、個人と組織の関係についての質問が出された。これに対しては、デザイナーというのはどちらかと言えば一人一人が独立しており、また、優れたデザイナーは必ずしもデザイナーたちのマネジメントに優れているわけではない、優れたデザイナーを管理職に抜擢しても会社は発展しないというような事例を挙げておられた。

 黒木氏はふつう朝4時に就寝、10時起床という生活をしておられるそうだ。この日は、朝7時半に新幹線に乗って岡山に来られ、15時頃にふたたび新幹線で東京に戻られるという。どうもご苦労様でした。

 次回に続く。