じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
岡大・東西通りの沈丁花。岡大ではまもなく前期日程の合格発表が行われる。「サクラサク」にはまだ早いが、この花の香りが合格者を祝福し、不合格者の後期試験への再挑戦を励ましてくれることだろう。 |
【思ったこと】 _40308(月)[教育]「経験がなければ書けない」と訴えることの正直さ 某国立大学医学部医学科の前期入試・英語で「学校週5日制が始まる前後であなたの生活にどんな違いが生じたか」を英作文で答える設問が出題されたという。ところが試験終了20分前に受験生から「5日制の経験がない者は書けない」と指摘され、大学側は「経験がない人は5日制についてどう考えるかを答えなさい」と指示した。しかし10分後に「経験がなくても答えられる。このまま解答を」と指示を変えたため混乱が生じ、大学は指示ミスがあったことを認め得点調整をしたそうだ(以上、3月8日朝日新聞記事に基づく)。 この大学では、化学IB・化学IIの問題・解答用紙にもなんと18カ所の記載ミスがあり、試験中に複数回訂正したため、90分の試験時間を30分間延長したという。このような失態続きでは受験生はたまったものではない。同じ頻度で医療ミスが起こらないことを祈るばかりだ。 さて元の「学校週5日制が始まる前後であなたの生活にどんな違いが生じたか」に話題を戻すが、じっさい、私立の小中高では週6日制を貫いている学校もあるので、この設問は確かに受験生間に不公平をもたらす。また「経験がない人は5日制についてどう考えるかを答えなさい」という指示だが、「あなたの生活にどんな違いが生じたか」と「5日制についてどう考えるか」では解答の難易度が異なる可能性があり、やはり公平とは言えない。 では、最終的に出された「経験がなくても答えられる。このまま解答を」という指示は妥当と言えるのだろうか。確かに、私のように週5日制を全く経験していない世代であっても、テレビ番組や新聞の特集記事などを通じて5日制の実態をある程度知っている。それゆえ、そのような環境のもとに自分があったと仮定し、そこで想定されるさまざまな変化を想像しながら解答することはそれほど難しいことではない。まして、英作文問題ということに限っていうなら、実際に起こった変化を克明に報告する義務はない。しっかり覚えている構文をなるべく多様に使って得点を増やすことに専念すればよいと言えないこともない。 しかし、根本から考え直してみるに、「あなたの生活にどんな違いが生じたか」という設問に対して「経験がなくても答えられる。このまま解答を」というのは、「ウソでもよいから答えなさい」と指示しているようなものだ。要領よくウソをついて英作文を完成した受験生と、「私は経験が無いので答えられない」と言い張る受験生と、どちらを合格させるべきかは判断が分かれることだろう。今回はたまたま医学部医学科の入試であったようだが、「経験が無いので答えられない」と言い張る受験生のほうが、将来しっかりした医者になれるような気もする。 ところで、大学は指示ミスがあったことを認め得点調整をしたというが、いったいどんな「調整」をしたのだろうか。 この日記にも何度か書いたことがあるが、出題ミスや指示ミスに関わる設問を「全員正解」で処理することは決して妥当とは言えない。今回のケースにおいても、その英作文に相当の時間を割いた受験生と、それを後回しにして大ざっぱに答えた受験生が居たはずである。全員正解では、それらをすべて平等化してしまうことで、結果的に後者の受験生を有利にしてしまう。 では、このような事態ではどう対処すればよいのだろうか。私ならば次のようなことを考える。仮に、英作文の設問に関わる配点を50点であるとしておこう。
このほか、今回に限って言えば、受験生の出身高校を調べ、週6日制の学校であった場合に限り、当該問題の解答を満点扱いにするという対応も考えられるが、これは、受験生個人を特定した上で便宜をはかっているのではないかという批判を受けるだろう。また、週6日制高校の出身者が同レベルの問題に確実に正解できるという証拠も無いので、かえって不公平となる恐れがある。 |