じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 国立大の個別学力試験(二次試験)の前期日程(1日〜3日間)がほぼ終了した。26日にはまた、私のところの大学院(博士前期課程)の合格発表もあった。27日の日の出が新しい生活の第一歩となる若者も多いのではないかと思う。


2月26日(木)

【ちょっと思ったこと】

オウムの根本はマインドコントロール

 地下鉄・松本両サリン事件や坂本弁護士殺害など13事件の罪に問われている松本被告の判決公判がいよいよ27日午前10時から開かれるという。弟子に対して下されている判決の事実認定や法廷での態度などから見て極刑となることは間違いないと思われるが、この事件は一個人の処刑だけで片づけられるような問題ではないと思う。

 そもそも、サリン製造工場を含む大規模な教団施設が作られたのは、多くの善良な市民が、サークル、ヨガ教室、そのほかいろいろな形で勧誘され、マインドコントロールされ、私財を寄附したからにほかならない。被告1人がどんなに反社会的な教義を説いたところで、それに従うものが居なければあのような事件には至らなかった。

 オウム自体が公然と勧誘活動することは無くなったが、カルト宗教はオウムだけではない。私の大学でも、生協食堂前や図書館前などで、相変わらず霊感商法系のカルト宗教団体が勧誘活動をやっているのを見かける。携帯片手に常に連絡を取り合いながら、一人で歩いている学生にアンケートをお願いしますなどとって近づき、そのうちカラーコピーなどを示して、「インカレサークル」なる偽装サークルへの勧誘を始める。また、春先になると、研究室やアパートなどに、ボランティア団体を名乗って募金を集めに来る信者もいる。

 もし我々全員が、彼らを全く相手にしなくなれば、勧誘活動を続けても意味がなくなるはずだ。逆に言えば、ああいう手口に引っかかる学生が少なからずいるという証拠でもある。

 批判的思考(クリシン)の欠如もまた、マインドコントロールされやすい要因となる。2月21日の日記にも書いたように、後付のこじつけ、反証不能、対照群がない、盲検法を使っていない、サンプリングの問題など、疑似科学を見破る目を養い、また、物事を多面的にとらえられるようになれば、仮にカルト宗教団体が偽装する「教養講座」や「宿泊セミナー」などに参加したとしてもそう簡単には心を奪われないはずである。

 いずれにせよ、大学生たちがマインドコントロールされなければ、あのような事件は起こりえなかった。そういう意味では大学の責任は大きい。新入生がカルト宗教団体の手口に引っかからないよう常時、警告活動や相談体制をとるとともに、クリティカルな思考を育てるための教養教育の充実につとめることが必要かと思う。