じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 岡山ではこの時期には珍しく、3日間ほど雨が降り続いた。やっと雨が上がった日曜日の朝、農学部東西通りで見事な黄金色の絨毯を眺めることができた。


11月30日(日)

【思ったこと】
_31130(日)[教育]「大学教育の原点を問う」フォーラム(前編)広中平祐先生講演会

 11月30日の14時から、岡山大学五十周年記念館で、

●大学教育の原点を問う〜大学はどう変わるべきか〜

というフォーラムが開催された。今回は、主催が岡山経済同友会であり、大学が主催するFD研修会とはやや趣を異にしていた。表記の広中先生の講演のほか、副学長がコーディネーター、学部長、高校校長、銀行頭取、岡大生がパネリストとなったディスカッションも行われた。

 広中先生の講演ではまず、「長者三代続かず」と言われるように戦後50年すぎて、がっちりした組織に甘える傾向が出てきたこと、しかし、「名医三代にしてなる」の通り、教育ではむしろ、三代目で花を開くような長期的な視点が必要であることが強調された。そして、(1)湧源、(2)差異、(3)寛容、という3つのキーワードに分けて、教育の原点として大切なことは何かについてお話しされた。

 「湧源」というのは「自分から湧き出る」という意味であり、そこには意欲、勇気、発想、創造が含まれている。Brain、Mind、Motivationが大切ということであったが、行動分析的に解釈するなら、「湧源」こそ「オペラント」ではないかという気もする。いっそのこと、「オペラント行動」を「湧源行動」と訳したらよかったかもしれない。但し、「Motivation」なるものは、内なる力として湧き上がるものではなく、むしろ、行動に適切に結果が伴うことで強化されていく性質のものだと考えるが。

 2番目の「差異」および3番目の「寛容」とは、教育現場で何から何まで平等を口にするのではなく、違いを認め、むしろ「違いがあるからこそ面白い」と認める姿勢である。競争というと必ず勝者と敗者だけを思い浮かべてしまうが、広中先生の言われるのは多様競争、つまり、質的な差異を尊重し、それぞれに見合った能力を鍛え「創才」になっていくという点にあるようだ。

 大学教育の中では「非完璧の最高活用」というキーワードも使われた。例えば学生が学生を教えるというのがこれに含まれる。講義を聴いたりプレゼンをすることよりも何よりも、教えることによって一番身に付くという資料もある。

 「one-a-day vitamin」(←長谷川の聞き取りのため不確か)という観点も教育にとって必要である。要するに、頓服薬で即効的な効果を期待するのではなく、効き目は小さいが1粒ずつ飲み続けることで成果が現れてくるという考え方のようだ。これは行動分析でいうところの「チリも積もれば山となる効果」に似ている。念のためランダムハウス英語辞典で「one-a-day」を調べてみたが、「one-a-day man」という俗語しかヒットしなかった。

 広中先生は全体として、即戦力よりも基礎教育を重視する立場を強調しておられた。大学の使命である人材養成は、「半製品」ではなく「汎精品(汎用的、精密に、品格重視)」であるという。

 以上、私が聴き取れた範囲をまとめてみた。後編に続く。