じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 時計台前のアメリカフウの落ち葉。岡山ではここ数日、雨の日が多く、アメリカフウ、農学部前の楷の木(オス)、南北通りの銀杏などが、かなり落葉した。
これまでのところ、例年より鮮やかさに欠けるように思う。これから先は、農学部東西通りの銀杏、図書館前の楷の木(メス)、カエデ類が見頃となるはずだ。


11月11日(火)

【ちょっと思ったこと】

留学生10万人超える

 11月12日朝のNHKニュースによれば、留学生の総数は5月1日現在の集計で10万9508人となり、初めて10万人を超えた。

 もっともその国・地域別の内訳は、中国7万人、韓国1万5000人、台湾4200人などとなっており、殆どすべてがアジアからであるという。

 中国からの留学生に対しては、福岡で起こった一家殺人事件への関与、県知事の「こそ泥発言」など、国内の一部に排他的な動きがあることは事実である。確かに一部には、留学を名目に出稼ぎ目的で入国する若者もいるし、また、定員確保のために過剰に留学生を受け入れたり、在留資格を与えることで金儲けをたくらむ粗悪な日本語学校も皆無とは言えない。

 しかし、大局的に見るならば、中国からやってきた優秀な学生をきっちりと教育し、日本を正しく理解し、中国に戻ってから高い地位で仕事ができるようにサポートすることは、平和で良好な関係を維持していく上でぜひとも必要である。

 好むと好まざるとに関わらず、近い将来に中国はすべての面で日本を追い越すようになるだろう。以前オーストラリアに行った時にも、ある要人は、これからは日本よりも中国との関係が重要であると率直に語っていた。2030年頃に日本を追い越すとの試算も出ている。口先だけで「日中友好」を叫んでも、形だけのセレモニーに終わってしまう。日本と中国との交流が自分達の利益になる人々(両国が対立すると不利益を被る人々)を増やし、そういう人々の発言力が強まるようにサポートしていくほかはあるまい。

【思ったこと】
_31111(火)[教育]鹿大FD研修会(2)「学生による授業評価は記名式がよいか、無記名式がよいか」というディベート

 鹿児島大学で行われた「FDワークショップ」の感想の2回目。11月7日、夕食会場で「学生による授業評価は記名か、無記名か」というディベートが行われた。ここでいうディベートとは、表記のテーマについて、2つのグループを記名賛成、無記名賛成に機械的に割り当て、立論や反論を競うゲームである。宴会の席での余興という側面もあったが、とにかくここまで熱心に議論するのはスゴイと思った。

 ディベートの論点は、要するに、授業評価アンケート用紙に回答者の名前を書くべきか、無記名でもよいのかという点であった。記名派は、「回答責任」、「無記名の場合は、誹謗中傷などの弊害があり」といった主張を展開、それに対して無記名派は、「授業担当教員が批判的な学生の成績評価を下げる恐れ」、「各種の選挙でも無記名投票になっている」といった主張を展開した。




 今回のディベートは、ゲーム的な位置づけもあり、もっぱら、回答責任や回答者保護という面に限って二者択一型で議論が展開したが、この問題にはもっと別の、多様な論点がある。ディベート終了後にコメントさせていただく機会が与えられたので、このことを少し喋らせてもらった。

 例えば、岡大の場合、授業評価アンケート用紙には学生番号を記入することが義務づけられており、その意味では記名式になっている。しかしその用紙は回答箱に投函され、そのまま業者に渡されるため、誰がどう答えたのかという情報は、担当教員には決して伝わらないようになっている。また、授業内容について意見を述べる「自由記述式アンケート」はあくまで無記名で別紙で提出するようになっている。

 このように、記名か無記名かは二者択一の議論ではなく、回答者の個人情報は誰がどこまで把握できるのか、という段階別に展開されるのが本筋である。

 岡大で現行の方式をとっている主たる理由は、一人で2枚以上回答することを防止したり、授業に出席していない学生の回答分を分離することにある。また、回答者の成績と回答結果との相関を統計的に処理することも将来的には可能である。




 自由記述式アンケートの場合も、何を目的に実施するのか、回収した用紙を誰に公開するのかによって論点が変わってくる。

 アンケート記述内容がすべて公開されるような場合に無記名式にしてしまうと、ネットの匿名掲示板のように、いたずらや誹謗中傷目的に悪用される恐れが出てくる。しかし、記述内容が非公開であるなら、むしろ匿名のほうが、受講生の本音や授業改善に役立つ多彩な有用情報が寄せられる可能性が高い。どれが有用でどれがイタズラかは、担当者が自分で判断すればよい。仮に「お前なんか死んでしまえ!」という意見が寄せられたとしても、破り捨ててしまえばそれまでだ。そんなことで腹を立てるようではまだまだ修養が足りない。

 要するに、記名式か無記名式かは
  • 個人情報保護を守るべき
  • 回答者の責任ある回答を促す
  • データの信頼性を高める
という論点のほか、
  • いかに本音を引き出すか
  • 授業改善に役立つ質的な情報をいかに集めるか
  • 集計結果の公開の内容と公開対象によっても是非が変わってくる
といった論点もあり、メリットとデメリットを慎重に検討していく必要があると思う。

 余談だが、このディベートの司会者が食事中にタバコを吸っていたので、「来年のディベートは、宴会の席でタバコを吸うことは是か非かというテーマでやってほしい。」と、ちょっと皮肉を言わせてもらった(その発言の後は、喫煙者は廊下に出てタバコを吸っておられたようだ)。ま、それは冗談であるとしても、「教員研究室も禁煙にすべきかどうか」だったら結構面白いディベートができると思う(岡大は教員研究室も含めて全館禁煙。鹿大はそこまでは至っていないようであった)。