じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] [今日の写真] 「とっとり花回廊」内のサルビア畑(左)。大山を背景に、燃えるような赤の絨毯。写真右は、セージを前景としたもの。セージもサルビアの一種。これで3色揃った?


11月4日(火)

【思ったこと】
_31104(火)[教育]「どうしたら魅力的な講義が創れるか?」講演会(5)質問と議論を大切にする授業

 10月29日の15時半から17時すぎに、岡山大学五十周年記念館で行われた杉原厚吉先生の講演の感想の続き。今回は、最終回として、質問や議論を大切にした双方向型の授業について考えてみたいと思う。

 杉原先生は、
  1. 教育とは受講者と教師によって演じられる創造のドラマである。
  2. 質問には感謝の気持ちをもつ。
  3. 質問封じをしない。
というように、双方向型の授業の大切さを説いておられた。しゃべりっぱなし、つまり一方通行の授業を長時間続けてはならず、5分以内にすべきという人すらあるという。

 2.の「質問に感謝する」というのは、質問は自分の説明不足を知る手がかりであるという意味だ。3.に関しては
  • そんなことも知らないの?
  • さっきも言ったように...
  • 授業はオーケストラのようなもので静かに聴くもの。バイオリンがちょっと間違えたって演奏中に指摘する聴衆はいない。
というようなタイプがある。逆に質問を誉めるような努力が必要であるという内容であった。
 講演のまとめのところでも、「悪い教師はただ喋る」、「普通の教師は知識を伝達する」、「良い教師は導く」、「最高の教師は、生徒の心に火をともす」として、喋りっぱなしや伝達するだけの授業を戒めておられた。もっともそこで強調されたことからも分かるように、単に、学生からの質問や意見が活発であればいいということではなさそうだ。私の持論とも共通するように、「学生の能動的な学びをいかに引き出すか」が大切であり、その方向に導くように質疑の時間を設けるという意味であろうと受けとめた。




 さて、現実に「質問しやすい授業」とはどういうものだろうか。これは、口で言うほどやさしいものではない。できれば、それが実現されている授業を参観したり、ビデオを紹介してもらえるとありがたかった。

 質問や議論を大切にすることには異論は無いが、これは受講生の数によっても変わってくるだろう。100人〜200人の教養科目の授業となると、1人1分しゃべったらそれだけで授業が終わってしまう。ということは、質問が多いように見えても、じつはいつも少数の質問好きの学生だけが発言しており、大多数は単にそれを聞いているだけという恐れも出てくる(全学でFD関連の講演会が行われた時などでも、質疑の時間に真っ先に手を挙げるのはFD委員会副委員長のH氏、二番手は私、他は数人程度が参加するだけに終わってしまうことが多い。)。

 大人数の授業では、その場で質問を受けつける代わりに、シャトルカードや質問券配布という方法も考えられる。但し、質問には個別に答えるのではなく、次回の授業で答える。これにより、質問とそれに対する説明を受講生全員で共有することができるわけだ。

 授業時間外で議論の場を作る方法としては、非公開のネット掲示板がある。もっとも、これも、書き込みを誉める、もしくは一定回数以上書き込まないと減点するという介入をしないとなかなか活発化できない。見かけ上活発であっても、雑談に終始していたのでは困る。このあたりの経験はまた別の機会に書いてみたいと思う。




 以上、5回にわたって感想を述べさせていただいた。最後に、この講演を拝聴して特に参考になったことをもう一度箇条書きしてみたい。
  1. 感動を伝える、あるいは感動を与えるということ→私の心理学の授業における感動とは、第一に、「行動がこれだけ変わった、これだけ能動的になった」という実例を示すこと、第二に、自分自身が熱中していること、やりたくても長続きしないことの原因を見極めることの感動ではないかと思う。これを伝える工夫をしてみたいと思う。
  2. 感動を伝えるということは、卒論や修論の研究でも必要なことだと思う。聞いていてつまらないと思う発表というのは、発表のスキルが未熟であるという以前に、自分の取り組んでいることにちっとも感動していないことに原因があるのではないかと思う。いやいや間に合わせようとしている研究というのは、どうプレゼンしても、興味を持てるわけがない。
  3. 内容に無関係のパワーポイント背景は逆効果→これは衝撃的な指摘だった。但し、これは、「内容に関係のありそうな背景は取り入れてもよい」という意味にもとれる。文字ばかりで言語脳を刺激するよりも、いろいろなイメージと結びつけて理解させるという工夫はあってもよいように思う。
  4. 「学ぶとどんなよいことがあるか」や「知らないとどんなに損をするか」を強調すること→決して実利志向ではないのだが、私の授業ではいくらでもネタがある。シラバスや、毎回の授業概要の中で強調していきたいと思う。