じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] アパートの階段入口脇に植えたセージが見頃となった。品種はメキシカンブッシュセージとラベンダーセージではないかと思うが、物覚えが悪くなったため、図鑑で名前を見つけてもすぐに忘れてしまう。
アパートのような公共の場では、こういう手のかからない花が最適だ。もっともハーブにもそろそろ飽きてきた。もし将来、庭付きの家に住むことがあれば、和風の花(少なくとも漢字で名前が表せる花)ばかりを育ててみたいと思う。


10月14日(火)

【思ったこと】
_31014(火)[心理]「高齢者の心と行動」について何を話すか

 10月6日の日記の続き。11月中旬に、ダイバージョナルセラピーの講習の一環として、高齢者の心と行動について1回分の講義を担当することになっているが、なかなか考えがまとまらない。話すことはいくらでもあるのだが、限られた時間の中で何を強調すべきかが一番の悩みどころだ。とりあえず、次のような構想をたててみた。

 まず、高齢者の生きがいについての基本姿勢として
  • 高齢者は、多様で豊富な人生経験に基づいて独自の価値観を形成している。価値観そのものについて、どれがよいとか、どうすべきだといった押しつけはできない。
  • 高齢者の生きがいと若者の生きがいは本質的に変わらない。すぐれた思想家が実践の中で実現する生きがいと痴呆症のお年寄りの生きがいも本質的にはどちらが上というわけではない。
という2点を強調しておきたい。

 高齢者と若者の生きがいの違いは、経験、健康状態、人間関係の変化などがもたらす違いである。高齢者の特徴としては
  1. 過去の実績:子育てや仕事上の苦労など、過去の成果を振り返ること自体が生きがいとなる。
  2. 将来設計:若者と異なり、何十年も先に実現するような努力目標は立てにくい。
  3. 健康状態:健康保持の必要、あるいは障害の度合いにより、やりたくてもできないこと(例えば激しいスポーツ、高所登山など)、あるいは他者の補助が無いとできないことが増えてくる。
  4. 周囲の人間関係:若者の場合は、年数が経つにつれて親しい人を増やすことができる。高齢者の場合も新しい出会いはあるが、同時に、死別という悲しみに耐えなければならない。
を挙げることができる。

 多様な価値観の中味までを問うことはできないとしても、上記の特徴に見合った汎用のサポート体制をとることはある程度可能である。上記1.〜4.に関しては
  1. 過去の実績:
    • アルバムやビデオなどを適切に保存し、いつでも取り出せるようにする。
    • 当時の映像ライブラリをつくりいつでも閲覧できるようにする。
    • 職人さんのように技で身を立てた高齢者には「腕をふるう」場を実現する。
    • 過去の成功体験を記録したり、若者に語れるような機会を作る。
  2. 将来設計:
    • 短期的に実現可能な目標を探す。
    • 体力や知力が衰えても更新できるような達成目標を探す。例えば、山の上の神社に何回詣でたかとか、「マスターズ陸上競技選手権」のように、年を取ってもそれぞれの年齢区分で最高記録を更新できる機会を作るなど。
    • 集団として長期目標をたて、そこに貢献する。自分の存命中には実現できなくても、貢献の度合いが明白であれば生きがいになる。
  3. 健康状態:
    • 「いつか快復したら〜をしたい」という形でリハビリに励むのも1つの生き方ではあるが、可能な行動リパートリーの中で、できる限り頑張るというのもよい。その際、ご本人の自主性、能動性を損なわないようにサポートする姿勢が大切。
  4. 周囲の人間関係:
    • 親しい人々と死別していくということは、自分自身がそのうち迎えることになる死を達観することにもつながる。悲しみから遠ざけたり、隠したりせず、避けられない事実に直面することも必要かもしれない。
    • もちろん、地域や施設内で新しい人間関係を作っていくことも大切。
 以上全体に対して共通して言えるのは、「○○をしたい」という欲求はただ待っていると沸き上がってくるものではない、ということだ。「欲求」と言われるものは、いろいろな事物に主体的・能動的に関わり、その対象がそれに応えることで高められていくものなのである。それゆえ、単に「やりたいならご自由にどうぞ」ではなく、「やりたい」ことが行動として自発された時にちゃんと手応えがあり、それなりの成果が伴うような環境を作ることが求められる。行動分析が貢献するとしたら、このあたりの環境整備の部分だろう。