じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 文化科学研究科棟(大学院、放送大学施設もあり)前の花壇。春から咲き続けているガザニアのほか、6月に入ってからはテンニンギク、ナデシコ類もたくさん花をつけている。


6月7日(土)

【ちょっと思ったこと】

北朝鮮あればこそ?の日韓関係

 韓国のノムヒョン大統領が来日され、小泉首相との首脳会談のあと共同声明を発表した。6月8日の朝日新聞に掲載された共同声明(骨子)は5点から構成されていたが、第1点の「日韓は、未来志向の両国関係改善のため共に前進」を除くと、残りの4点はすべて「北朝鮮」の文字が入っている。

 日韓関係は過去の植民地支配、それに起因する根強い反日感情、さらに、経済的にも相互依存よりはライバル関係にあることなどから、いまなお多くの課題をかかえているが、共通の脅威である北朝鮮を話題にすることで、協力・連携を強めざるを得ない事情にある。

 前にもこの日記に書いたことがあるが、もし北朝鮮の現政権が崩壊し韓国に吸収される形で統一国家が成立した時には、日韓関係は今より緊張が高まるのではないかと思ってみたりする。

 逆に言えば、日韓のあいだで真の友好関係を築くためには、「北朝鮮」という言葉を外してみて何が残るのか、どういう交流が求められるのかを徹底的に追求しておく必要があるのではないかと思う。

【思ったこと】
_30607(土)[心理]園芸療法の効果について考える(1)園芸療法の定義

 6月14〜15日、人間・植物関係学会2003年大会が神奈川県内の大学で開催される。初日のシンポジウムでパネリストにお招きいただいたこともあり、これを機会にで園芸療法について考えをまとめておきたいと思う。

 まず、園芸療法について議論する以上は、その定義を明確にしておく必要があるだろう。これについて、この学会の創設者でもある松尾英輔先生は、人間と植物のかかわりを「育てるvs育てない」、「狩るvs造る」という2次元の比較軸に基づいて4象限に分割し、
  • 育てる+狩る→園芸療法
  • 育てる+造る→園芸療法
  • 育てない+狩る→植物介在療法としての植物受容療法:単に植物を眺める、香草療法、薬草療法など
  • 育てない+造る→植物介在療法かつ芸術療法としての植物工芸療法:フラワーデザイン、生け花、ポプリ、花江、草木染、木工、料理など
というように分類されている。要するに、植物を育てることと、自分で育てたその植物を活用した療法が「園芸療法」にあたるのだ(松尾英輔・正山征洋編『植物の不思議パワー〜心身の癒しと健康を求めて』、九州大学出版会)、2002年)。
 松尾先生の分類のすぐれている点は、療法を定義するにあたって、どういう媒体を用いるかではなく、その媒体にどう関わるかという行動的視点を重視したことにある。つまり、花を媒体とするという共通点だけで括るのであれば、野生の花のウォッチングも、生け花も、ドライフラワーづくりも、園芸療法も同じカテゴリーに入ってしまう。「育てる」という行動的視点を入れたことで初めて、他の療法との区別ができるのである。

 もっとも、話題として取り上げるかどうかを明確にする際の基準と、効果を論じる場合の分類基準が同一であるとは限らない。植物を育てることの効用をいろいろ挙げてみただけで直ちに園芸療法の効果であるとは言えない。

これは例えば、温泉の効用を論じる場合と同様である。周知のとおり「天然温泉とは何か」についてはすでに客観的基準が定められているが、ある温泉において抜群の効能が実証されたからと言って、同泉質のすべての温泉に同じ効能があるとは一般化できない。このことを含めて、園芸療法の一般性のある効果を実験的に証明することは殆ど不可能に近いと思っている。次回に続く。