じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] [写真] ジギタリス(写真左)。キツネの手袋(foxglove)とも言う。昨年春に、花が終わりかけた処分品を植えておいたところ、ちゃんと芽を出した。写真右は、同じ時期に花を開いた風鈴草(カンパヌラ・メディウム)。筒状の花という点で似ているが、一番の違いは、ジキタリスが多年草であるのに対して、風鈴草のほうは花が咲くと株全体が枯死してしまう点だ。ポット苗を買う時は要注意。


5月15日(木)

【ちょっと思ったこと】

きょうも 大相撲

 しかし、5/16の6時32分からのNHKスポーツコーナーでは、

●大相撲→プロ野球→サッカー・欧州チャンピオンリーグ→大リーグ(松井、野茂、大家、佐々木、イチロー)

という順になっていた。この優先順位は5/15と同じ。この日記でイチャモンをつけたせいでもあるまいが、昨日あたりから「松井ファンサイト化」報道が是正されたようにも思える。気のせいだろうか?

【思ったこと】
_30515(木)[一般]「平均値」は難しい

 某所で「平均値」が話題になった。調査を行うにあたって、平均(算術)を算出できるような選択肢にすべきかどうかという議論である。何でもかんでも平均して比較しようという悪習に加えて、高校や大学で「平均するとはどういうことか」についてちゃんとした教育がなされていないことも誤解を生む一因になっているように思う。

 心理学の統計の授業の1回目ではしばしば、4つの尺度ということが言われる。その際に教わるのは、順序尺度と間隔尺度の違いであり、算術平均は間隔尺度以上でないと意味がないということだ。もっとも、順序尺度で平均をとるとどういう矛盾が生じるのか、具体例を挙げて分かりやすく説明するのはけっこう難しい。

 例えば、順位を平均してはいけないと言われる。一位と二位の間は接戦の時もあれば大差の時もある。A、B、Cの3選手が過去5回のボーリング大会で

A選手 220(1)、220(1)、220(1)、220(1)、220(1)
B選手 150(2)、150(2)、150(2)、150(3)、150(3)
C選手 140(3)、140(3)、140(3)、200(2)、200(2)

というスコアを出したとする(カッコ内は順位)。スコアを平均するとA選手は220、B選手は150、C選手は164となるのでC選手のほうがB選手よりも実力が上であると見なせる。ところが、順位の平均をとると、B選手は「平均2.4位」、C選手は「平均2.6位」となって評価が逆転してしまう。とりあえず順位で平均すると矛盾が起きるという説明になるだろう。

 この事例は、かつて専門学校で統計の授業をやっていた時にしばしば使ったものだが、本当はこれは妥当な例とは言えない。じつはこれは、順序尺度を平均したことの矛盾ではなくて、相対評価の結果を平均したための矛盾であったのだ。




 「平均が計算できるか」という議論と、「平均値を何かの指標として用いることは妥当か」という議論もしばしば混同される。よく例に挙げられるのが、国民の豊かさを比較する指標として国民一人あたりの平均収入を用いることの矛盾である。収入自体は平均しても何ら差し支えない。しかし、桁外れの大金持ちが一人含まれるかどうかで平均値は大きく変わってしまう。こういう場合にはむしろ中央値で比較すべきということになる。




 質問紙調査で問題となるのが選択肢の設定のしかたである。たとえば、ある料理が美味しいかどうかを尋ねる場合、

●この料理は美味しいですか? 次の5つから選んでください。
(5)とてもおいしい (4)ややおいしい (3)どちらともいえない (2)ややまずい (1)とてもまずい

という評定は普通、平均してもかまわないとされている。ほんとうは順序尺度なのであるが、(2)と(4)の「やや」という表現が、「とても」と「どちらともいえない」のほぼ中間にありという解釈され、統計解析上の利便性もあって、間隔尺度として処理されてしまう。

 もっとも、厳密には

●この料理は美味しいですか? あてはまる数値を選んでください。
とてもおいしい 5・・・4・・・3・・・2・・・1 とてもまずい

としたほうがしっくりするであろう。

 アンケート結果をよく見せかけようとするにはどうしたらよいか。
●この料理は美味しいですか? 次の5つから選んでください。
(5)ややおいしい (4)どちらかと言えばおいしい (3)どちらともいえない (2)とてもまずい (1)人間の食い物ではない(こんなもの食えるか!)

というように、ポジティブな回答に偏りやすいように選択肢の形容詞を操作すれば平均値は3を上回りやすくなるだろう。だからこそ、こういう順序尺度は平均してはいけないと言われるのである。大学の授業評価アンケートでも同じ問題が起こりうる。個人的には、間隔尺度的な選択肢を用意すべきだと思うのだが、選択肢に具体的記述があったほうが答えやすいということになると順序尺度扱いにせざるをえない。その場合、どういう代表値で結果を簡潔に公開するのか、成果や改善をどういう基準で示すのか、頭を悩ますことになる。