じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] ベランダで育てたムスカリ。後ろの黄色い花は黄梅。梅ではなくモクセイ科ソケイ属。


4月5日(土)

【ちょっと思ったこと】

ディズニーのアニメは面白くない

 「美女と野獣」の最初の部分を観て思ったが、ディズニーのアニメって、登場人物の顔も、海の中を泳いでいるような独特の動きも、歌や音楽も、みんな同じように感じてしまう。妻や娘はお気に入りらしく、書棚を見渡しただけでも「白雪姫」「眠れる森の美女」「ムーラン」など何本かオリジナルビデオが並んでいるが、ワシは好かんなあ。宮崎駿のアニメのほうがずっと良くできていると思う。

 ディズニーのアニメで比較的良い印象があるのはピーターパンぐらいだろうか。幼稚園の頃「子ジカのバンビ」を観させられたのが最初だったと思うが、感動した映画は1つもない。同じディズニーでも、生身の人間が登場する映画には素晴らしいものがあると思うが、なぜかアニメは好きになれない。単純にオジサンだからと言われてしまえばそれまでだけれど。

 余談だが、2時間分のテープが終了するまで録画をしていたのだが、明け方になってもまだ「録画一時停止」のままで電源が入っていることに気づいた。原因は、「二カ国語のみ録画」の設定でCMカットをしていたためであった。映画が終わると同時に二カ国語放送は終了。ところが終了時間を設定していなかったので、ビデオデッキは、ずっと一時停止状態で次の二カ国語放送が開始されるまで待機していたのである。これって、ヘッドやテープに相当の負荷をかけたことにならないのだろうか。
【思ったこと】
_30405(土)[心理]質的分析と行動分析(1)

 春休みに紀要論文1つぐらいは書いておかなければと思い、いま一部で話題となっている質的分析の文献をいくつか読んでみた。もっとも40〜50枚の紙数では書ける内容にも限度がある。けっきょく、
  • 「質的」とは何か
  • 量と質
  • QOL(生活の質)
  • 行動分析における「質」概念
  • 観察法と行動分析
  • 面接法と行動分析
というような内容をまとめたところですでに枚数オーバーとなった。10日の締切までにどこを削るか思案中。QOLのことは別の機会に書こうかなあと思ってみたり。

 ところで、心理学において「質的研究」という場合には、単に「質的データを扱う研究法の総称」ではなく、「量には還元しにくい部分に注目して、情報的価値のある研究を遂行していく、という積極的な意味が含まれている。したがって、質的データでしばしば問題にされる信頼性と妥当性についても、必ずしも数量化や実験的方法で補完するスタイルはとられていない。しかし
  • 量的分析=測定された変数間の相互関係を明らかにする
  • 質的分析=体験の記述、解釈、分類、関係
というように二分されてしまうと、じゃあいったい「体験の記述」とは何ぞや?という話になってしまう。行動分析学の研究対象となる「体験」とは、行動随伴性で記述可能な強化や弱化や消去のヒストリー、それによって形成されるルール、及びそれに関わる言語報告から構成されるものである。それらは、「質的研究者」が言うところの「体験の記述、解釈、分類、関係」とはかなり異なったものになるであろう。

 行動分析にももちろん質的な概念はたくさんある。そんななかで量的分析を重視するのは、1つには、いくつかの要因が質的に特定され、さらにその量的な関数関係によって予測と制御が完璧になされるならば、それ以外の要因は冗長であると判断できるからであろう。じっさい、Skinner(1953)は、『科学と人間行動』の第4章においてパヴロフの条件反射に関する業績を次のように評価している。
The quantitative properties which he discovered are by no means "known to every child." And they are important. The most efficient use of conditioned reflexes in the practical control of behavior often requires quantitative information. A satisfactory theory makes the same demands. In dispossessing explanatory fictions, for example, we cannot be sure that an event of the sort implied by "psychic secretion" is not occasionally responsible until we can predict the exact amount of secretion at any given time. Only a quantitative description will make sure that there is no additional mental process in which the dog "associates the sound of the tone with the idea of food" or in which it salivates because it "expects" food to appear. Pavlov could dispense with concepts of this sort only when he could give a complete quantitative account of salivation in terms of the stimulus, the response, and the history of conditioning.
 要するにここで主張されているのは、行動の原因やプロセスを質的に探索したとしても、最終的にそれが説明に必要かどうかは、量的予測の精度によって決まってくるという点である。条件反射の理論において心的要因の関与の必要性を認めるかどうかは、決して哲学的立場によって決まるものではない。それを認めた場合と除外した場合で量的予測に違いが出るならば認めざるを得ないし、違いが無いならば冗長な概念として切り捨てるべきである。質的な分析に基づく理論やモデルは、最終的に量的分析によって確証されるという立場を反映していると言ってよいだろう。

 心理学の分野では2002年4月、『質的心理学研究』という学術誌が発刊し、実験や質問紙調査とは異なるスタイルの研究方法が注目をあびるようになった。しかし、まだ動き始めたばかりのせいだろうか。研究対象の選び方はなるほどと思わせるところがあるが、それを扱うならもっとすぐれたアプローチもあるのでは?と思いたくなる部分もある。紀要論文では、そんななかから2つほど引用してツッコミを入れる予定にしているが、この分野には結構手強い論客も多いので、どうしたもんか、ヘタに深入りして抜けられなくなるのも怖い。