じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 到津の森公園のゾウ。3/29撮影。アルバムをめくってみたら、1988年5月1日にゾウの前で撮影した写真が見つかった。こちらの資料によれば、この2頭はセイロンゾウのサリーとランで、到津に来てもう23年(←今年で24年?)になるというから、同じゾウであることは間違いない。ここではゾウに餌をやることができる。アイス最中の皮のような餌を差し出すと、鼻で吸い取ってくれる。人生50年で初めて、ゾウの鼻に直接触れることができた。もっともこのゾウたちもケガや病気になることがあるらしい。獣医さんの苦労がよくわかる。


4月2日(水)

【ちょっと思ったこと】

ハウステンボスとバグダッドの共通点

 高速道路を通って長崎方面に向かう途中に、北緯33度通過を示す標識がある。標識には同じ緯度の都市としてバグダッドの名前が記されている。長崎に住んでいた頃は、まだ佐賀県内の高速道路が開通しておらず、渋滞などでけっこう時間がかかった。この標識を見ると、あと一息かとホッとしたものである。
[写真] [写真] 3/30〜3/31に遊びに行ったハウステンボスは、バグダッドとほぼ同じ緯度にあたる。昼間の太陽の高さも、夜の星空も全く同じように見えているはずだ。同じ緯度上で、いっぽうはのんびりとショッピングやアトラクションを楽しみ、いっぽうは爆撃に晒されている。3/30の夜には花火、レーザー光線、煙などを使ったショーを眺めていたが、バグダッドでは本物のミサイル攻撃によって同じような光景が繰り広げられているかと思うと、ぞっとした。

【思ったこと】
_30402(水)[教育]大学の活性化と評価〜教員個人評価を中心に〜(4)1ポイント1万円也という年俸制による個人評価

 帰省のため一週間ほど間があいてしまったが3/24に学内で行われた全学シンポの感想の続き。シンポの後半ではK工科大の学生部長のS氏の基調講演が行われた。

 K工科大で取り入れている(←正確には、今後本格的に取り入れる予定の)教員評価システムは徹底していた、3/25の日記にも書いたように、平成15年度以降の新任教員と昇格教員は、1ポイント1万円で、過去3年間の平均ポイントがそのまま年俸に反映されるという。600ポイントならば年俸600万円、1200ポイントなら年俸1200万円といった具合である。

 具体的な評価項目は、大学への直接的貢献(入学、教育、就職、外部資金導入)と間接的貢献(研究、広報、社会的貢献、その他)それぞれについて、質と種別と量を勘案した算出式が立てられていた。このほか、学長や副学長の裁量で追加されるポイント枠があり、それらは評価システムで想定されていない貢献に対して配分されるとのことだ。

 具体的な算出例をいくつか挙げてみると
  • 学会などで招待講演を行うと、国内なら1ポイント、世界的な国際集会なら5ポイント獲得。
  • 学部入学者を勧誘すると、(学科志願者−学科入学定員)の人数分が1ポイントとなる。たとえば、80人定員のところ100人の志願者があれば20ポイント。
  • 共通教育を担当した場合は、学部1年生の全学生数の2倍のポイント。50人の受講生があれば100ポイント。
  • 大学院の指導をすると修士号取得者数の10倍と博士取得者数の40倍と副査として指導した院生数の合計がそのままポイントとなる。例えば修士1名と博士2名を指導すれば90ポイント。
  • 科研補助金については、採択金額を10万円で割った平方根の20倍とと申請金額を10万円で割った平方根の合計額。1000万円の申請が不採択になった場合は10000000÷100000=100の平方根なので10ポイント。
などなど。

 こういう形で各教員のポイントを試算したところ、教育面ではでは平均約470、最高で約1000、研究面では平均約160、最高約700程度のポイントが獲得される見込みとなった。興味深いのは、教育分野を横軸、研究分野を縦軸として各教員の分布をプロットした結果であった。もし教育重視、教研究重視、教育と研究のバランス重視という3タイプの教員がそれぞれ高いポイントを得た場合には、全体の分布は右下がりの負の相関を示すような分布になるはずだ。ところが実際には、研究がゼロで教育も200から500ポイント程度に留まる教員もかなりいた。若手の助手職がポイントを獲得しにくいシステムにも一因があるようだが、なかには改善を要する教員も混じっているものと思われる。




 講演のあと、私は次のような質問をしてみた。
民間企業の営業担当者であれば、個々人がポイントをあげることは企業全体の増益につながる。しかし、大学の場合は授業料などが主な収入源であるため、個人が頑張っても必ずしも資源が増えるわけではない。ということは、教員がポイントを増やせば増やすほど経営的には人件費がかさむというジレンマに陥る恐れはないか。であるならば、個人評価の獲得ポイントは、給与以外の面、例えば、サバティカル休暇など時間的な「報酬」にあてるほうが得策ではないか?
 これに対して、現時点は、ポイントに基づく年俸制で試算された人件費のほうが、従来の給与システムに基づく人件費よりも低く見積もられており(たしか0.9倍と言っておられた)、当面は深刻な問題にはならないという回答があった。サバティカル休暇については、N大の前副学長からも、検討中であるとの言及があった。

 今回披露されたようなポイントシステムは、工学系の単科大学であればこそ実現できるものであろう。総合大学の場合には、やはり分野別の算定方式を変えないと問題が起こりそうだ。とはいえ、K工科大学の学生部長が指摘された次の点は、まことにもっともであると思った。これはまさに行動分析学的な発想そのものだ。
教員の行動規範は、単なる精神論ではなく具体的に定める必要がある。
 今回の感想は以上で終わるが、今後の個人評価の改善として、私自身は
  • 評価は時間的コストを伴う。いくら健康保持のためとはいえ毎日人間ドックに通うのがナンセンスであるのと同様、個人評価も、「不健康な人(=客観的に見て評価が芳しくない教員))には精密検査を、健康な人(=特に問題が認められない教員)には簡素に実施すべき。
  • 個人別の評価よりも、教育組織や研究組織別にグループ評価を徹底的に行い、改善はそれらの組織単位に委ねる。評価の高い組織単位は研究費やポスト配分で優遇、改善が見られない単位があればポスト削減などのペナルティを課すといった方策が必要。
と考えている。