じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 3/24朝の日の出。細い雲が横切り、土星型の太陽、あるいは太陽が2つに割れたように見える。


3月24日(月)

【ちょっと思ったこと】

駅弁の日と新幹線の先っぽ

 日曜日放送のはずだった「新・クイズ日本人の質問」がイラク報道の影響で月曜日に。番組で面白かったのは「駅弁の日はなぜ4月10日になったのか」と「新幹線の先っぽの作り方」(←実際は、ある職人が40年間作り続けているものは何かというようなクイズ)の2点であった。

 駅弁のほうは、「4」と「十」を組み合わせると「弁当」の「弁」の字ができることに由来しているというが、ずいぶん変わったコジツケをするもんだ。露天風呂の日だって、大して変わらないコジツケなんだが...。

 新幹線の先頭車両の先端が職人たちの手作業で作られるというのも驚きだった。鋳型に流し込んで作るのかと思っていたが、平らな金属板をハンマーで叩いて変形させ、重ね合わせていた。このことで疑問に思ったが、航空機の先っぽ部分も職人が手作業で作っているのだろうか。

【思ったこと】
_30324(月)[教育]大学教育研究集会/大学教育改革フォーラム(8)高等教育における教育改革と経営改善(3)

 3/15午後に京大で行われた第9回大学教育改革フォーラムの感想の最終回。4番目は、経営学をご専門とするA氏からの話題提供だった。A氏は某旧帝大の前副学長をつとめられたほか、某私立大の開設(女子短大を改組)に関与され、その時の体験談も披露された。

 講演ではまず、大学の国際化の例としてMITが行ったインターネットを通じた講義公開、また、広島の私立大が卒業生を出さずに倒産した事例などの紹介があった。私立大では3割、短大では6割が定員割れになっているという。

 次に、日本の経営に対する評価が1960年代(「古くてダメ」)、1970年代後半〜1980年代中頃(称賛)、1990年代後半以降(再び批判)で変遷し、これに伴って大学でも、1982年には米国の主要な大学で「日本のビジネス講座」設置が準備された経緯などが説明された。

 このあたりから、経営学の用語?がたくさん飛び出し、素人の私には一部理解できないところがあったが、「課業の特質とコントロール」という説明で登場した2×2の図は、行動分析にも関連しており、なかなか興味深いものであった。この図の出典らしき文献としてOuchi(1979)、Eisenhardt(1985)、Das & Teng(2001)【いずれもレジュメからの読み取りのため不確か】が挙げられていたが、詳しいことは分からない。

_課業のプログラム化の可能性
完全(多様性・変化は小)
課業のプログラム化の可能性
不完全(多様性・変化は大)
成果の可測定性高いPB
成果&行動コントロール
P
成果コントロール
成果の可測定性低いB
行動コントロール
S
社会的コントロール


 要するにこの表からは、企業であれ大学であれ、明示的なルールにより動く組織とそうでない場合、また、成果の予測に確実性がある場合と偶然性が高い場合では、成果主義の効果が異なるということが言えるようだ。

 ここからはあくまで私の推測になるが、成果主義というのは、要するに、行動の量に応じて好子が随伴するような比率スケジュールを基本にしており、その比率が定比率であるか変比率であるかによってコントロールの仕方は変わってくる。また、これだけでは、積み重ねを必要とする行動やプロセスを強化しにくいので、実際には、各自に達成目標(と、それを実現させるための計画)を立てさせ、「達成度」の数値の中にプロセスへの評価を織り込むという形をとっていると考えることができる。この弊害としてはA氏が指摘するように
  • 短期志向
  • 達成しやすい目標ばかり掲げ、チャレンジ精神が低下
  • 個人主義の行きすぎ
  • モラールダウン
などがあり、これを改善するには社会的コントロールや、グループワークが必要。

 このあたりは大学に成果主義を導入する場合でも当然留意しなければならず、
  • 短期志向→短期間で論文化できるような研究テーマばかりにとりくみ、大きなスケールの研究ができない
  • 責任や負担の押し付け合い。またそれを回避するための輪番制の弊害。
  • 評価される項目だけを頑張る
などの弊害を招きかねない点が危惧されると思う。

 後半では、A氏のご尽力で開設された某私立大の取り組みが紹介された。学生指導においては、「おしゃべり」や「学習意欲」で苦労されているようだ。この点、私語対策が殆ど不要である岡大は恵まれている。このほか、大学経営上のご苦労として、若手の教員を5年任期で採用、といっても「使い捨て」ではなく、その教員の学会活動などを支援し、任期終了後に別の大学でさらに活躍できるような支援体制をとっているという話もあった。オーバードクターにとっては魅力ある職場ではないかと思う。




 フォーラムでは、4つの話題提供のあと、京大事務局長からのコメントがあった。その中では、単なる数合わせの統合・再編でダメであり、5〜10年後にはやはり、実質的な機能の縮小や人件費削減が避けられず、税金に対するアカウンタビリティが問われるであろうといった点が指摘された。

 FD関係の研究集会にはこれまでも何度も参加しているが、経営の視点が取り上げられたのは今回が初めてであり、いろいろと勉強になった。