じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
研究室の窓際に置いている胡蝶蘭の花が咲き始めた。現在、4種の洋蘭が花を咲かせている。 |
【思ったこと】 _30312(水)[教育]「留学生の過半数は中国から」という事実と英語教育 後期試験が無事終了。大忙しの1〜3月期も、あとは年度末の各種引き継ぎ委員会と卒業式を残すだけになった。 入試というと、一般入試のほか、前期試験と同じ日には、私費外国人留学生と帰国子女の試験が行われることになっている。最近このことで強く感じるのは、「外国人留学生と言えば、大多数は中国人」ということである。念のため平成14年11月の文科省資料を調べてみたところでは
中国からの留学生が増えること自体は決して悪いことではない。もともと人口が10倍以上であることに加えて、最近の経済発展はとどまるところを知らない。いずれ近いうちに(あるいはすでに)、経済力でも軍事力でも、中国が日本を遙かに上回ることは必至である。 好むと好まざるとに関わらず日本と中国は良好な関係を保たざるを得ない。優秀な若者がやってきて日本で学び、卒業後も日本との交流に活躍してくれることは日本の国益にもかなうはずだ。そのためには日本語を一生懸命学んだ学生を大切にしなければいけない。 しかし、中国からの留学生を受け入れる際には、もう1つ、英語力をどうするかというネックがあることも事実である。よく言われることだが、中国では
●外国人留学生の過半数(つまり中国人)の英語力は、日本人学生以下である というのが事実なのだ。 ところが、現実には、日本の大学では、英語の単位を必修化しているところが多い。私が所属する行動科学科の場合は、「英語A」8単位が必修、つまりこれを修得しないと卒業できない。さらに心理学履修コースに配属された後には、専門英語の講読が2年間で8単位分必修となっている。 こちらの小論でもふれたように、日本では「英語が使える日本人」の育成のための戦略構想が策定され、小中高はもちろん、大学でも今後ますます英語教育を重視する動きがある。外国人留学生といえども、特別のカリキュラムが設定されているわけではなく、成績評価基準を変えるような手心は加えられないので、希望する専門分野で十分な力を発揮できない結果に終わってしまうことも少なくない。 全課程を英語で授業する大学(又は学部)を作ることは、「英語が使える日本人」育成のためには役立つだろうが、これを設置したところで、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアといった英語圏から多数の留学生がやってくるとは思えない。英語教育に熱心な東南アジアや南アジアからの留学生が増えるほか、中国からは、アメリカ留学に失敗したセカンドレベルの学生がやってくる程度の結果しかもたらさないだろう。 大学の事務職員にTOEICやTOEFLの受験を義務づけ、その成績を昇格人事に反映させるなどという案もあると聞くが、これも現状では笑止千万だ。教務の窓口に来る留学生は日本人以上に英語が使えないのだから、英語でコミュニケーションをとる意味がない。それよりはわかりやすい日本語のしゃべり方を研修するか、いっそのこと中国語会話でも学んだほうがよい。 以上に述べたことは、一大学や一学部ではなく国家レベルで緊急に検討すべき問題である。英語重視の流れは変えがたいとして、その中で、中国からの留学生にも同じレベルの英語力を求めるのか、それとも、むしろ、英語はできなくてもよいから、日本語が使えてそれぞれの分野で最高レベルの能力をもつ若者を入学させたほうが国益にかなうのか、ちゃんとした指針をもって留学生を受け入れていく必要があると思う。 |