じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[写真] ミモザの花がさらに鮮やかさを増してきた。黄色の花、青空、緑色の葉、の3色の対比が美しい。


3月11日(火)

【ちょっと思ったこと】

タマちゃん誘拐には賛成できない

 横浜市西区の帷子川で11日早朝、「タマちゃんを想う会」のメンバーとこれに協力する米国の自然保護団体が、護岸で休んでいたアゴヒゲアザラシのタマちゃんを網で捕獲しようとした。タマちゃんは水中に飛び込んで逃げたという。

 報道で伝えられた限りでは、この団体の主張は
  • タマちゃんは完全に仲間から孤立している
  • 汚い川で長く生活すると健康を害する
  • 北極の海に帰す必要
  • タマちゃんをここにとどめたいというのは人間のエゴ
という4点にあるらしい。タマちゃんの話題を継続的に取り上げているアサヒコムでは、さっそくタマちゃん捕獲、賛成?反対?という緊急投票を開始した。

 タマちゃんについては、多摩川に出現した当初から保護すべきか、そのまま見守るかという議論があった。しかしその後、他の河川に移動し、長期間生息していることから見て、緊急に保護する必然性は見あたらないように思う。いずれにせよ一個人や一団体が独断で行うのは問題だ。

 高齢者福祉の問題でもそうだが、たとえ医療設備に不備があっても、あるいはケアに人手がかかったとしても、高齢者自身が自宅での介護さらに「畳の上で死にたい」と希望するならば、その願いを叶えるのが基本ではないかと思う。捕獲して北極圏の海に帰すというのは、自宅介護を望む高齢者をムリヤリ救急車に乗せて大病院に押し込めるようなものだ。

 「タマちゃんは完全に仲間から孤立している」というが、アゴヒゲアザラシはもともと単独でも生活できる動物ではないのか。群れで生活する野生動物はいろいろ知られているが、必ずしもオスメス同数で構成されているわけではない。例えばニホンザルの群れは、リーダーなど数頭のオスといくつかの家系からなる何十頭かのメスと子ザルから構成されている。成長したオスは群れから追い出されて離れザルとなるが、そういうオスを「仲間から孤立していてかわいそうだ」という理由でムリヤリ元の群れにぶち込んだとしたらたちまち攻撃を受けて大けがをすることになるだろう。なかにはフラミンゴのように集団の中にいないとストレスになる動物もいるが、たいがいの動物は、安全に生活さえできれば、孤独であるがゆえにストレスことはない。水族館で育てろなどというのが人間のエゴであることはもちろんだが、この団体がいう「北極圏の海」が今以上に暮らしやすい場所かどうかは人間が決めるべきことではないと思う。

 「汚い川で長く生活すると健康を害する」というのであれば、まずその川の浄化対策に取り組むべきだ。汚いから移せなどと言っていたら、いつまでたっても自然との共生は実現しない。

 タマちゃんもいずれは怪我をしたり病気になるかもしれない。そのさいには行政の判断で保護ということもあるかと思う。但し、平均的な寿命を越えて老衰化していった場合は、無理に捕獲して延命をはかる必要はないと思う。どっちにしても、あのような仕打ちをうけたタマちゃんが、12日以降も同じ生活を維持できるかどうか、そのことのほうが心配である。

3/12追記]
タマちゃん捕獲、賛成?反対?投票は、「今のまま、タマちゃんの意思に任せ、見守るべきだ」が最多の10256票となり、2位の「捕獲して北極圏に帰すべきだが、行政が責任をもってするべきだ1584票や、3位の「市民団体の行動は当然だ。捕獲して、生まれ故郷の海に帰してあげるべきだ」の1332票を大きく上回った。但し「この投票は統計的な手法に基づくものではなく、結果が世論を正確に反映しているものではありません。」との断り書きあり。上記のタマちゃんサイトを訪れる人たちは、もともと「見守り派」なのかもしれない。あっ、私は投票していません。



アメリカの一発逆転満塁本塁打はあるのか?

 イラク情勢をめぐって、これまでのところ、アメリカの強硬姿勢はイラク側の譲歩を引き出す上で一定の成果をあげてきたと思う。しかし、実際に戦争をしかけたとなれば国際社会から猛反発をくらうのは必至だ。国連憲章に反することはもちろん、イスラム世界に根強い反米感情を増幅させることは間違いないだろう。

 では、武力行使に踏み切り、なおかつ、国際世論を味方にひきつけるような一発逆転策はあるのだろうか。唯一の可能性は、イラク領土のどこかの地下で、核爆弾を搭載した秘密基地、あるいは何トンにも及ぶ生物化学兵器の倉庫が発見された場合であろう。もしこれが明白となれば、「やっぱりアメリカの言うとおりではなかったか」という心理的な効果はきわめて大きい。

 いっぽう、武力行使に踏み切り多くの犠牲者を出したあげくに、ごくわずかの「証拠物件」、例えば、ミサイルの部品1個とか、生物兵器の空き缶1個程度が発見されただけに終わった場合は、いくら形式的にイラクの批判を糾弾したところで、国際社会の支持をとりつけることは困難。アメリカの地位は完全に失墜するに違いない。

 ところで、3/11のTVニュースによれば、小泉首相はこの件で、歴代の自民党総裁経験者を一同に招いて意見を聞いたとか。大部分は米国支持であったが、中には、憲法の精神に言及したり、圧力と行使は異なることを強調された人もいた。そんななか、橋本元首相が「政府がいちばん正確な情報を持っているはずだから...」と意味深な発言をされたのがちょっと気になった。ここでいう「いちばん正確な情報」というのは、もしかすると、「武力行使をした場合、国際世論を一気に変えさせるだけの重大な秘密基地を発見することができる」という情報ではないかと思ってみたりするのは私だけだろうか。