じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[写真] 成田→福岡便の機上から見た富士五湖。富士山頂の真上を通る直前に山中湖(写真右上)が、また、真上を通った直後に河口湖、西湖、精進湖、本栖湖が見えた。なお、拡大写真は合成のため、飛行機が進むに連れて角度がずれており、写真上部では浅間山が2つあるように見える。


2月3日(月)

【思ったこと】
_30203(月)[心理]トンデモ世界のリテラシー(3)確実性、規則性、安定をもとめる性(さが)

 昨日の日記で

●単なる偶然(偶然の一致)こそが、しばしば最も有効な説明原理である。

という作業仮説を紹介したが、この姿勢を貫き、地道に種々の原因を探索するには勇気や忍耐が必要である。トンデモ世界がもてはやされる1つの理由は、不確実なものには確実性を、デタラメなものには規則性を、不安定なものには安定を求めるという性(さが)にあるのではないかと思ってみたりする。

 こうした性は、おそらく生物の進化の中で培われたものであろう。一般に「本能的行動」と呼ばれるものは、自然界の現象が規則的に変化し、それに対応した刺激を発し、その刺激に機械的に応答する形で誘発される。

 さらに適応力を高めるために、行動の結果に依存して行動の量や質を変える仕組みが進化してきた(=オペラント強化)。この場合も、外界との関わりの中に規則的な関係が保証されなければ適応には役立たない。そんなこともあるのだろうか、我々は、不確実で不規則で不安定な環境を嫌う。時には意外性や非日常性を求めることもあるが、それらが新鮮味を与えるのは、しょせん、一定の変動の範囲の中に限られている。そして、不確実性を減少させたり、手がかりを見つようとして行動を強めていくのである。

 これは通常科学的な方法で行われるが、地道な努力では待ちきれないことがある。また、「その事故が1/1000の確率で起こることは知っているが、なぜ私自身に降りかかったのかは分からない」というように、本来科学的には説明できないようなことまで理由をつけようとする。

 トンデモ世界は、その定義上、予測・制御力を持たない。しかし、選択肢が多すぎる場合には迷いを消す効果があるし、将来に夢をつなぐこともできる。例えば、数学の勉強法が分からなくて迷っている時に「○×型の学生は計算力をきっちり身につけるとよい」と言われると自身をもって勉強に取り組める。「△△という食品は自己治癒力を高める」と言われると、それを食べること自体で将来を楽観できる。

 こういった性がある限りトンデモ世界は無くならないし、決して頭ごなしに否定すべきものではない。それとたたかわなければならないのは、科学を妨害したり、さまざまな可能性があるにも関わらず視野を広げられないという弊害をもたらす時である。




 さて、講演のほうだが、その後、ランダムと偶然との関係、茨城県警の「血液型と交通事故との関係」批判、二項分布と正規分布の関連など盛りだくさんの内容を追加しようと考えたが、90分という時間の中ではとうてしゃべりきれるものではない。参加者の顔や反応を見た上で適宜省略し、論点が伝わるように臨機応変に対処したいと考えている。