じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[写真] 岡大の旧事務局の移築保存作業が順調に進んでいる。1/14朝には、新築の本部棟と並ぶ位置まで運ばれていた。新旧交代の挨拶をしているようだ。1/14夜には西側にさらに数十メートル移動されており、この貴重な風景を眺めることは二度とできなくなった。写真右は、土台の拡大写真。 [写真]


1月14日(火)

【ちょっと思ったこと】

さそり座に直角二等辺三角形出現

 この日記にも時折記しているが、南東の金星と火星の動きがまことに興味深い。1/15早朝には金星はさそり座のアンタレスの真上に位置し、金星を頂点とし、アンタレスと火星それぞれに繋がる辺を二等辺とする直角三角形を構成していた。アンタレスと火星はほぼ同じ明るさで赤く輝いておりまことに美しい光景であった。

 1月前半は、一年中で最も日の出が遅い時期にあたるが、15日を過ぎた頃から少しずつ早く日が昇るようになる。早起きにも限界があるので、散歩時に星空が眺められるのはあと1カ月以内ぐらいかと思う。

【思ったこと】
_30114(火)[心理]行動随伴性ダイアグラム再考(4)「面白い」とはどういうことか

 連載の4回目。今回は、「面白い」という言語反応について考察してみたいと思う。

 言うまでもなく「面白い」とは主観的な言語表現である。しかし、個人個人の表現内容に全く共通性・類似性が無かったら、言葉としては成立しえない。「テーマパークに行ったら面白かった」という報告を聞いた第三者は、それを手がかりとして自らテーマパークに足を運べばそれなりに楽しめるはずだ。その有用性があるから、言葉(=タクト)として存在し続けているのである。

 さらに主観的な表現として「美味しい」という言葉がある。「これは美味しい」と叫んだ食物を口にしたからといって必ずしも美味しいとは限らない。しかし、この場合でも、他者を喜ばす情報としては有用である。例えば、お客をもてなそうと思った時には、相手が(お世辞ではなく)「美味しい」と叫んだ料理を出すだろう。自分自身ではちっとも美味しくない料理であっても、相手がそう叫ぶならば、作り続けるに違いない。

 元の話題に戻るが、「○○は面白い」という言語報告は「○○は好子である」と同義であろうか。これについてSkinner(1953)は次のような否定的見解を示している【訳は長谷川による】。
We cannot dispense with this survey simply by asking a man what reinforces him. His reply may be of some value, but it is by no means necessarily reliable. A reinforcing connection need not be obvious to the individual reinforced. It is often only in retrospect that one's tendencies to behave in particular ways are seen to be the result of certain consequences, and, as we shall see in Chapter XVIII, the relation may never be seen at all even though it is obvious to others.
何があなたを強化しているか、と相手に尋ねるだけでこの探索を済ますわけにはいかない。回答にはそれなりの価値があるが、常に信頼できるものとは限らない。強化の関係は、強化を受ける個人にとって明白である必然性はない。ある人が特定の行動をする傾向が特定の結果からわかるというのは追想にすぎない。そして、18章で論じるように、周囲の人々には明白であっても、本人には行動と結果との関係がまったくわからないということさえある。
 とはいえ、(実験的方法ではなく)面接によって、対象者の日常行動の強化因を探る必要がある時には、とりあえず「いま何が面白いですか?」と聞くことには意味がある。但し面白いモノをリストアップするだけでは不十分であり、そこでどういう能動的な行動が起こっているのか、それぞれの行動にどういう結果が伴っているのかを詳細に聞き出すことが必要である。

 高齢者福祉の場面でもありうるが、「面白ければそれでいいじゃないか」という議論もあるかもしれない。確かに、当人にとってその対象が永続的に「面白い」ならばそれでも構わないだろう。しかし、もし当人が突然「もう面白くなくなった」と言い出した時にはお手上げであろう。行動随伴性を詳細に把握しておけば、「面白くなくなった」原因が、消去によるものか、好子に対する飽和化によるのか、あるいは競合的な別の行動が強化されたためなのか、などを明らかにした上で、適切な改善策を見出すことができるはずだ。次回に続く。