じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 岡大の東西通りの紅葉(正確には、黄色、緑、赤の3色)。大学構内には紅葉の名所がたくさんあるが、いっぱんに東西方向に並んだ木々のほうが色づき・落葉がやや遅い。





11月24日(日)

【ちょっと思ったこと】

発想転換のレンタサイクル

 11/23の朝日新聞岡山版によれば、岡山市は放置自転車をリサイクルして貸し出すレンタサイクルを来年4月1日から始めるため、11月定例市議会に条例案を提出する。

 レンタサイクルというと、観光客などがサイクリングのために利用するサービスを連想するが、岡山市の企画は根本的に発想が異なり、通勤・通学者への夜間貸出を目的としているようだ。具体的には、6カ月定期(長期契約)のみで、料金は地下駐輪場利用者の6ヵ月定期と同額の一般1万3500円、学生9000円、となっている。

 この記事より少し前、息子のところには「夜間利用お試しキャンペーン」という葉書が届いた。これは、16時から翌朝10時までの貸出で、1カ月1500円、3カ月4200円、6カ月8000円と記されていた。

 要するに、普通のレンタサイクルと違って、通勤通学時に駅に返却され、帰宅時に借り出すという点が、普通のレンタサイクルと根本的に違っている。もちろん、JRを利用して市内の職場や学校に通勤・通学する者にとっては、昼間の貸し出しとなる。何台かの自転車は昼夜2名が乗ることになり有効活用がはかれるし、何よりも、駐輪スペースが少なくて済む。さらに、レンタサイクルとなれば所有者や借用者がはっきりしているので、駅前以外の駐輪でもルールが守られ、かつ盗難に遭いにくいというメリットがある。さらに借用者は、自転車整備や買い換えに気を遣う必要がなく、いっぽうレンタル側は、その整備で雇用の場を作ることができる。

 息子が受け取った葉書で多少気になったのは、夜間利用の時間が「夕方16時から翌朝10時」となっていることだ。通学利用だけが目的の場合、休校日や大雨の日は昼間も自宅に留め置かれることになるのだが、この場合の割り増しはどうなるのだろう。

【思ったこと】
_21124(水)[教育]「学ぶ意欲」再考(1)日本の子どもの勉強時間

 11/24の朝日新聞教育欄に「勉強、何のため」という見出しの特集記事があった。その右下に、経済協力開発機構(OECD)が2000年に行った、子どもの勉強時間の比較が引用されていた。この調査は、32カ国の15歳を対象とし、「週あたり、国語、数学、理科の宿題や自分の勉強を平均で何時間しているか」を調べたものであった。

 記事によれば、最短は日本で24.9分、2番目に短いのがスウェーデンで28.3分...、最長はギリシャの60分であったという。ここで疑問に思ったのは、勉強の平均時間の算出法である。記事には
....各教科の時間数(1週間あたり)について「0」「週1時間未満」「1〜3時間未満」「3時間以上」のいずれかを選ぶ形で答えさせた。それを、それぞれ「0」「0.5」「2」「4」時間と換算して、全教科を合計した。その数字を、「1日あたり何分か」という単位に計算し直してみた
と書かれてあるが、これって随分大ざっぱな「換算」ではないだろうか。全く勉強しない場合が「0時間」となるのはよいが、週1時間未満は週30分と同義、また週3時間以上はどんなに長く勉強しても4時間ジャストとして扱われてしまうのである。順序尺度的にカテゴライズされた選択肢から、むりやり平均時間を算出し分単位で比較しようなどというのは無謀きわまりない。

 これと同じようなグラフは、先日NHKスペシャルで放送された教育特集番組でも紹介された()。日本の子どもの勉強時間が短くなっているのは確かかもしれないが、結論を急ぐあまり、データをエエ加減に加工してもらっては困る。

 このほかこの種の調査では、勉強時間がどの程度正確に自己申告できるかという問題が残る。つまり、
  • 自分をよく見せかけるために多めに申告する、あるいは控えめに申告する。このことについての文化差が反映する可能性が大きい。
  • そもそも自分の勉強時間を正確に測れるだろうか。Web日記などもそうだが、毎週何時間書いているのか?などと訊かれても正確に答えられるものではない。
  • 自己申告を求められた場合、一時的に勉強時間を増やす傾向が出てくるかもしれない(=モニタリング効果)。
 もちろん、きっちりと日課表を作って勉強している子どもの場合には、かなり正確に勉強時間を計れるだろう(←この場合は、かなり長く勉強しているかも)。しかし全般に平均値が少ないということは、大部分は、かなり気まぐれに勉強しているということだ。そういう大ざっぱな回答を分単位で国別に比較しても意味がないと思う。
追記]NHKスペシャル2002年11/9〜11/10放送:21世紀 日本の課題 「シリーズ 学ぶ意欲を取りもどせ」。1回目は「分かるっておもしろい」、2回目は「あなたの夢は何ですか」



 子どもの勉強時間をめぐるもう1つの問題点は、何でもかんでも平均してモノをとらえようとする悪癖である。「日本で24.9分、2番目に短いのがスウェーデンで28.3分...」などとあるが、はっきり言って、スウェーデンより3.4分短いなどというのはどうでもよいことだ。そんなことより、もっと個人を重視し、全然勉強していない生徒は何をして過ごしているのか、またその一方で勉強している生徒は何時間ぐらいしているのか、その違いは何によってもたらされているのかを具体的にとらえることのほうがはるかに大切だ。

※念のため言っておくが、この記事の中心は、「くもん子ども研」と朝日新聞本社の共同調査の紹介にあり、OECDの結果はそれほど重視されていない。また、生徒たちのナマの声も紹介されている。とはいえ、やはり、「どういう生徒が多かったか」という比率の変化ばかりに目が向けられ、個体本位の学習態度が分析されず、画一的な議論に終わっているような気がした。なお、この話題はさらに続編で取り上げる予定。