じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
マユミの赤い実。この木の名前「真弓」は、枝がよくしない、弓の材料に使われたことに由来するとか。 |
【思ったこと】 _21014(月)[心理]授業と卒論・修論指導について考える(1)カリキュラムの公益性 今年もまた、来年度のシラバス作成の時期がやってきた。このうち専門科目については、これまで、教室会議で各教員の担当内容が調整され、期日までに各自でシラバスを作成することになっているのだが、学問の自由、教育の自由を尊重する立場から、講義内容やシラバスの記載内容について、お互いに点検しあうということはなかった。 しかし、これからは、9月の全学FD研修会の中で、2001.1.23.に行われた「カリキュラムに求められる大学の教育力」の基調講演(絹川・大学セミナーハウス館長)内容を引用したように、 ●カリキュラムには大学の公益性を示す社会的契約という側面がある。教員の学術的関心のみから展開するものではない。 という姿勢で、各教員の授業内容まで踏み込んで調整をはかっていく必要があると考えている。 心理学の場合は、 (1)心理学概論、心理学研究法I、心理学演習I、社会心理学演習I、心理学講読I、心理学講読II という、全員必修の基礎科目のほか、 (2)心理学研究法II、心理学演習II(または社会心理学演習II) という、ゼミ形式(指導教員別の縦割り授業)で実施される科目、 さらに、 (3)心理学特講、社会心理学特講 という、各教員が自分でテーマを選んで開講する特殊講義から成り立っている。 こちらに大部分公開されているシラバスを見れば分かるように、これまでは、(2)や(3)はもとより、(1)のような基礎的な科目についても、担当教員に実質お任せとなっており、他教員は一切口出ししないというのが慣例になっていた。しかし、本来、概論、基礎演習、講読などの基礎科目は、担当教員が誰になっても同じ水準、かつ「教員の学術的関心」とは独立し、岡大の役割、卒業生の将来に配慮した総合的な教育が保障されなければならない。教室内部の改革というのは、人間関係のしがらみもあって、大学全体の改革以上に難しい面があるが、多少、衝突があっても断行していかなければならない課題であると思っている。 ところで、全学向けの教養科目、外国語科目等については、シラバス記載項目の一部が改善され、「学習目的」と「到達目標」を分けて記すことが決まっている。執筆留意事項によれば、これらは、
ところで、上記の留意事項にも含まれているように、全学向けの授業では、日本技術者教育認定機構(JABEE : Japan Accreditation Board for Engineering Education )の要求水準を満たすことが強く求められている。心理学でも統一資格の問題が日本心理学諸学会連合(「日心連」と略す)の議題にのぼっていると聞くが(こちらの連載参照)、昨年5/19の日心連第11回常任理事会記録で、東理事長ご自身が、理事長所感として「この2年間は、目に見える具体的成果が得られたとはいえない」と述べておられるように、議論はいっこうに進展していない。その背景には、各学会の利害(表向きは「時期尚早」を唱え、自分の学会の既得権の定着・拡大をはかろうとする動きもあるようだ)、あるいは、自分の研究に没頭するあまり、心理学教育や心理学者の社会的役割に目を向けないという一般会員の無関心さがあるように思う。 統一資格というのはいろいろ障壁があるだろうが、JABEEに相当するようなスタンダードだったら、心理学でも検討できるのではないかと思う。これによって、「心理学卒業」者に対する社会的信頼も増すし、何よりも、心理学の授業の質の向上が図れるのではないかと思うのだが、いかがだろうか。 |