じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 康定(カンディン)から炉霍(ダンゴ)に向かう途中で、この旅行として初めて4000m以上の折多山峠(4298m)を越えた。峠付近の丘に咲くリンドウ系の花。8月6日10時57分(日本時間)撮影。西寧で買ったチベットの花の図鑑によれば、この花の中国語名は「天藍竜胆(竜胆はリンドウのこと)」、学名はGentiana caelestis
※写真の左端に移っている黄色い花はタンポポ。ありふれているのであまり写さなかったが、3000〜4500mの高地でも多数咲いていた。在来種なのか、トラックの積み荷などにくっついて平地から運ばれてきたものなのかは不明だが繁殖力旺盛。カラコルムハイウェイのカラクリ湖でも見かけた。

8/26追記]関連サイトがこちらにあり。





8月25日(日)

【ちょっと思ったこと】

航空券のオーバーブッキング

 22日、岡山空港から羽田へ向かう飛行機の搭乗待ちの際、妙な場内放送が流れた。予約数が搭乗定員を上回っているので、JRのぞみ号への乗り換え希望者を募るというもの。協力者には
  • 10時7分発の「のぞみ号」乗車券
  • 協力金1万円または7500マイル進呈
という特典があるという。岡山に戻ってから地方紙の記事を見たところ、オーバーブッキングがあったのはANA664便(10時5分発)で、結局12人が搭乗できなかったそうだ。関係者によれば、このようなケースは2万人に1人の確率で発生するという。

 ランダムハウス英語辞典に

overbook:The airline routinely overbooks its flights so as to fill its planes even if there are last-minute cancellations.

という例文があることからも分かるように、航空会社のオーバーブッキングは日常茶飯事のことのようだが、国内でこの種のトラブルを現場で確認したのは今回が初めてだった。

 上記のようなボランティアは、タダで東京まで行かれるほか1万円のお小遣いまで貰うことができるのでかなりお得ではあるが、岡山駅までの移動時間と鉄道の所要時間を見込むと3時間程度のロスが生じるためビジネスには適さない。海外では、ボランティアの申し出が無い場合、出発直前になるにつれて協力金の金額がアップしていくという噂を聞いたことがあるが、今回は最終的にどう対応したのだろうか。



変な英語

 行動分析学会参加の帰りに出合った変な英語を、備忘録がわりにメモしておく。もしかすると私自身の聞き間違い、見間違いであったかもしれない。念のため。
  • We will stop every station until Haneda Airport.(京急蒲田駅のホームで。「羽田空港到着まで各駅に停まります」という意味)
  • Do not remove from the aircraft.(航空機の座席にあった緊急脱出用の説明シート。「機外持ち出し禁止」という意味)。
 かつては英語の誤用探しを趣味としていた私であるが(←もっとも、いちばん誤用が多いのは私自身)、最近は少し考えが変わり、上のような表現も意味が通じるなら日本式英語としてアリかなあ、などと思ってみたりする。
8/26追記]ウェスタンミシガン大学でご活躍中の、ごまめ様より、変な英語表現を集めたサイトを御紹介いただきました。
Engrish.com
※わざわざ「Engrish」としてあるのは、日本人がエルとアールを区別できないことをおちょくったためか。

_20825(日)[心理]日本行動分析学会第20回年次大会(3)地域通貨と行動分析

 大会初日の夕刻には、私自身の企画・司会による「地域通貨と行動分析」というシンポジウムが開催された。こんかいこの企画を行ったのは
  • 地域通貨は、特定の行動(個人が行うサービスなど)に対して具体的でタンジブルな結果(=価格の明示された紙幣のようなものや、通帳への記帳)を与えるという点で、発想自体がきわめて行動分析的であること
  • 地域通貨については、いろいろな誤解があること。
  • 開催地の神奈川県では、地域通貨の取り組みが活発であること
に考慮したものであった。

 大会会場となった藤沢市では特に、善行(善行)地区で「善」というエコマネー(=加藤敏春氏の提唱する地域通貨の一種)の取り組みが活発に行われている。「地域の人と人とのコミュニケーションを深め、地域住民の助け合う、支え合う活動で生き生きとしたコミュニティを育て、近年失われた地域社会の再生を目指す」という趣旨のものであった。今回はそのエコマネー研究会の会長の宮田英夫氏から直接、活動の御紹介をいただくことができた。[「善」の活動内容は、こちらのサイトに紹介されているのでご覧いただければ幸いです。]

 さて、ボトムアップ型のボランティア活動が基本の地域通貨ではあるが、地域でそれなりの役割を担うためにはやはり行政との連携、あるいは行政から一定のサポートを受けることがどうしても必要となる。そこで今回は、前回トップ当選を果たし、長年にわたりエコマネーネットワークにも参加されている松尾崇・鎌倉市会議員より地元あるいは全国における、エコマネーと行政との関わり合いについて、話を伺った。[松尾議員の個人サイトはこちらにあります。]松尾氏によれば、地域通貨には、「行政主導型」、「行政支援型」、「行政とは無関係」の3タイプがある。行政側は特に、福祉面(介護保険の隙間を埋める)、商店街活性化、緑地保全の点で期待を寄せているという。しかし行政主導が強すぎると失敗(不活発、一過性の流行)にも繋がる、やはり、現場でどういうニーズがあるのかを「できること」「してもらいたいこと」リストを通じて表に出し、行政はあくまでサポート役に徹するのが良さそうだ。

 地域通貨は、居住地域ばかりでなく大学キャンパス内でも活用することができる。今回は、岡大大学院の藤田益伸氏が「心理学教室内学生の交流を促進するゼミマネーの効果」について、簡単な事例紹介を行った。同じ研究室内にあっても、最近の学生は交流が少ない。特に、上級生・下級生間の互助活動はどうしても遠慮がちになる。そこで、「ゼミマネー」を導入して、学生同士が気軽に話しかけられる雰囲気を作るというのが目的であった。この取り組みは、一般の実践活動と異なり研究の一環として行われたものであるため、交流の内容や頻度がきめ細かく記録された。ありがちなことではあるが、
  • アクティブな参加者はごく一部に限られる
  • サービスの提供ばかりする人や、サービスを受けてばかりの人が出てくる
といった事例が客観的に把握された。行動分析のツールを使ってこれをどう改善していくかが今後の課題となるだろう。

 最後に長谷川自身が、行動分析学からみた地域通貨の概念的枠組みについて考察した。その詳細はこちらにあるので御高覧いただければ幸いです。

 要点としては、加藤敏春氏が論じているように、地域通貨は
  • 貨幣経済か「ボランティア経済」か
  • 「債権債務関係」か「信頼関係」か
という対立軸の中で4通りに分類できること、但し行動分析的には、それらに関与する行動随伴性をより細かく検討する必要があること。

 また、地域通貨というと、トークンあるいは般性習得性好子としての側面が強調されがちであるが、自分が提供できるサービスを登録することで、行動リパートリーが言語的に確認できるという面も重要。また、「マネー」を振込んだり振込まれることで、「認められる」、「感謝」に相当するような社会的強化がなされることも忘れてはならない。

 今回のシンポは、同じ時間帯に別のシンポ「行動倫理学に向けて」が開催され、さらに江ノ島水族館見学ツアーも行われたため、当初見込んだ50人に対して、会場スタッフを入れて20〜30人程度しかご参加いただくことができなかった。事前の宣伝不足を大いに反省している。しかし、少数とは言え、何人かの会員が強い関心を寄せていただいた。翌日の理事会で数人の理事から質問を受けたほか、Web日記仲間のidaさん(8/24付)からも
行動分析学の考え方を社会的現象に適用する、というのは私にとって非常に興味ある分野であった。とくに今回のシンポジウムは研究者のみでなくエコマネーを実践している方(藤沢市善行地区の主催者グループの代表者)や、行政側(鎌倉市議)の活動や意見を直接聞くことができて大変に勉強になった。これは個人の行動をより広い社会的枠組みで考えるという意味でも、他の領域(経済学、社会学、行政等等)ばかりでなく心理学にとっても重要な領域になると思う。
というコメントをいただき、大いに元気づけられた。