じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] ゴールドスティック。クラスペディアあるいはドラムスティックなどとも呼ばれる。秋に種を蒔くと翌年6月頃から花を咲かせる。ある程度まとまった株が多年草化すると、大きめのボール状のドライフラワーが作れる。はっきりした記録は無いが、ここにある株は5〜6年以上経っていたと思う。





5月20日(月)

【ちょっと思ったこと】

気分はもう「梅雨明け」

 次の数列は何を意味するか?

1, 9, 1, 1, 3, 2, 0, 46, 1, 0, 0, 0, 15, 8, 8, 3, 23,.....

 と言われてもまず正解者は出ないと思うが、じつは、これは、5月3日から5月19日までの岡山の降水量を記したものである。17日間で雨が降らなかったのは4日間だけというから驚きだ。5/20の夜は、久しぶりに金星、木星、月をはっきりと眺めることができたが、5月上旬にこれほどの長雨というのは珍しいように思う。

 理科年表で調べた少し古いデータによれば、岡山の年間降水量1159.7mm、5月は137.9mmとなっている。また5月における日降水量1mm以上の日数は平均10.0日となっていた。降水量の合計自体はまだまだ月間平均値に15mmほど足りないものの、日降水量1mm以上の日数はすでに平均を3日も上回っている。雨の量が多いというより、晴れの日が少ないということが、何となく「もう梅雨」気分にさせていたのだろう。

 さて、5/20以降はしばらく晴れの日が続くというが、これだけ長雨が続くと、すでに梅雨明けの気分だ。
【思ったこと】
_20520(月)[一般]クジラをめぐる4つの数値

 IWC下関会議(5/20〜5/24)に関連して、「『ちゃんと食べようクジラ』を数字で証明します」というIWC下関会議推進協議会の新聞広告が掲載されていた。そこには
  1. 0.3%:クジラ資源が持続的に利用可能であることの証明。ミンククジラ年間捕獲数2000頭は南極海に生息していると推定されている約76万頭のわずか0.3%。年間2000頭ずつ100年間ミンククジラを捕獲しても資源的には何ら問題ない。
  2. 5億:クジラが海洋生態系を壊していることの証明。海の生態系のなかで頂点に位置するクジラは世界の海で1年間に3億トンから5億トンのサカナやイカを食べている。これは全世界で人間が捕っているサカナの量(約9000トン)の3〜5倍にあたる。クジラの補食による漁業資源の減少が今、世界の海で問題になっている。
  3. 20/189:反捕鯨が国際世論ではないことの証明。まるで世界中の国々が反捕鯨を掲げているように思われているが、実際は国連加盟国189カ国中で反捕鯨に強硬な立場をとっているのは、アングロサクソン系の国々をはじめとするわずか20カ国にすぎない。
  4. 61億:食料危機が目前に迫りつつあることの証明。2002年8月の世界の人口は61億人になる。現在でもすべての人々に充分な食糧がいきわたっているとは言えない。人間の食糧となる水産資源へのクジラの影響は絶大。海洋生物資源の有効利用、管理の面からも捕鯨を再検討する必要がある。
という4つの数値が挙げられていた[文章は長谷川のほうで要約]。

 私個人は、小学校の給食でクジラの竜田揚げが出されて育った世代でもあり、適度なルールに基づいて商業捕鯨を実施することには何ら問題ないと思う。日本の伝統的な捕鯨文化を守る必要もあるし、何らかの原因で湾内に迷い込んで死亡したクジラについては、伝染病などの危険が無い限りは食料として利用すべきだと思っている。とはいえ、今回の広告に挙げられた数値は、必ずしも説得力を持たない。逆に、反捕鯨論者に反論の機会を与えるだけの恐れがあるように思う。

 上記のうちで唯一説得力があるのは、1番目の0.3%という数値だろう。76万頭のうちから2000頭を捕獲し続けても資源的に問題はあるまい。

 いっぽう、2番目の5億という数値、及び、「クジラが海洋生態系を壊している」との主張は納得できない。クジラが「海の生態系のなかで頂点に位置する」とするなら、その数はちゃんとしたバランスの上で増えたり減ったりしているのである。クジラが増えすぎれば餌となる生物は減る。そうすると今度は食料不足からクジラの数も減ってくる。そこでまたまた餌となる生物が増えてくる。こうしたバランスを生態系と呼ぶのであって、単純に、いっぱいサカナを食べるから生態系を壊すなどというのは、生物学の基礎を知らない者の暴論である。だいいち、その大食いのクジラだって死ねば肉となって他の生物の餌になる。 また、よく言われることだが、すべてのクジラがサカナを食べているわけではない。南極海ではオキアミしか食べないと言われているし、そのオキアミを横取りしているのが人間だ。人類が捕鯨を始める前からクジラは大量の餌を食い、それによって海洋生態系が保たれていた。捕鯨で海洋生態系を守ってあげましょうなどというのはとんでもない思い上がりだ。

 3番目の20/189という数値は本質的な議論ではない。純粋に科学的根拠によって捕鯨の是非が論じられるのであれば、多数決の論理を持ち出す必要はあるまい。むしろ、強硬な反捕鯨論のロジックをどう論破するかが課題であろう。クジラを殺すことが残酷だというならドナドナの歌にあるような子牛をステーキにするのは残酷でないというのか、というようにもっと内容に立ち入った議論をすべきであって、賛否の数だけであれこれ言うものではない。

 最後の61億、「食料危機が目前に迫りつつある」から捕鯨を再検討すべきだという主張も飛躍がありすぎる。地球の人口が増えすぎているというなら、まずその抑制策から検討すべきだ(日本のように少子高齢化対策を検討すべき国もあるが)。その上で、食料資源として、農産物、畜産、水産物すべてを含めた資源の確保を総合的に論じるべきであって、「人が増えすぎているから、魚介類が必要。その魚介類を大量に食べるクジラは有害だから殺してしまえ」などというのは暴論だ。

 この種の広告ではありがちなのだが、まず「主張ありき」、その主張に都合のよい証拠だけを何でもかんでも寄せ集めてくるとおかしなことになってしまう。1つの主張を貫くには、これさえ成り立てばゼッタイという証拠を1つ示せばよいのである。今回の場合は、上記1.だけにしぼって議論を展開すれば充分。

 ちなみに、少し古いデータによれば、日本の陸地面積は世界で56位。しかし、経済水域面積の国別順位表では日本は386万平方kmで第7位の大国であるという。この意味からも、日本が地球の海洋生態系を守り、適切な水産食料資源を確保する責任は重大だ。「クジラが海洋生態系を壊している」などという無責任な主張は即刻引っ込めるべきだと思う。