じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 今年は女性の比率が多く、華やかな卒業式となった。右は長谷川ゼミ卒業生6名。それにしても、今年は桜の開花が早い。 [今日の写真]





3月25日(月)

【ちょっと思ったこと】

行政文書としての卒論とWeb化

 3月25日は卒業式、修士課程の修了式が行われた。心理学の講座では、従来、1月末に提出された卒論原本を試問終了時に本人に返却。加筆修正したものを再提出させて、製本、保管することとしていた。また、私のゼミでは、これと別に、希望者のみ卒論のWeb公開を行ってきた。

 しかし、昨年あたりから、行政文書の保管、および情報公開における個人情報の扱いが厳密化され、一部、扱いを変えざるをえなくなってきた。

 一般的な扱いについて私が理解しているのは次の通りだ。
  1. 締切までに提出された卒論は、成績評価のための行政文書であるので、保管義務が生じる。また、成績評価が終わるまでは修正は一切認められない。
  2. 評価後、原本を本人に返却することはできる。返却しない場合は、行政文書として、一定年限の保管義務が生じる。
  3. 保管された卒論は、個人情報にあたるので非公開
 教室として一番楽な方法は、成績評価後に卒論原本を本人に返してしまうことである。こうすれば、万が一紛失しても保管責任は問われない。しかし、卒論は教室の貴重な知的資産であるとともに、年度を超えて公正な評価を維持するためにはぜひとも残しておかなければならない証拠でもある。仮にある卒論が不合格になった場合、翌年度以降、同レベルの別の学生の卒論を合格にするわけにはいかないだろう。というような理由から、評価資料として提出された卒論については教員側が行政文書扱いで保管、別途、閲覧用の加筆修正版を提出させるということで対応していくことになった。

 いっぽう、卒論のWeb化については、あくまで執筆者本人の希望を尊重することになるが、次のような理由で今後も推進していきたいと考えている。
  • 「知的資産の共有」という点から、研究の成果は公開されるのが原則。
  • 公開されることによって、研究水準、執筆内容、データの信頼性、文章のオリジナリティについて自己責任が生じる。
  • 公開されることによって剽窃・盗作・無断翻案等を防ぐことができる。本人自身にそれができないことは勿論、翌年度以降に同一内容の文章が見つかれば告発することもできる。
 もっとも、今のようなデジタルディバイドの時代では、Web公開されている卒論の一部を丸ごとコピー&ペーストして別の大学の卒論として提出されたとしても、後から「書かれた」卒論がWeb公開されず、かつネットに疎い指導教員が審査にあたった場合には、剽窃・盗作・無断翻案等が全く発覚しないという可能性もある。

 やはり将来的には全国の大学の卒論を一括管理するようなデータベースの構築が望まれる。


中1放置死で懲役6年は軽すぎる

 各種報道によれば、昨年7月に起こった中1少女放置死事件で、監禁致死などの罪に問われた元中学教諭、福本謙被告(35)に対する判決公判が25日、神戸地裁で行われ、森岡裁判長は、懲役12年の求刑に対して半分の6年を言い渡した。

 報道された範囲の情報によれば、懲役が求刑の半分になった理由には
  1. 走行中の車から飛び降りた被害者の行動は、被告にとって全く予想しない事態だった。
  2. 援助交際は善良な社会生活上、是認できないものである。見ず知らずの男性を相手に援助交際に及ぼうとした。いかなる危険が存在しているかもしれない所に自ら身を投じた。
  3. 逃げる機会は後でも見つけられたはず。
などが含まれているという。

 出会い系サイトで知り合っただけで見ず知らずの男性の誘いに応じてノコノコと出かけていくことについては他の事件でも被害者の自己責任を問う声が出ていたことは確かだが、このケースの被害者はなんと言っても中学の1年生である。まずは、被害者がどのような家庭環境のもとで援助交際に至ったのかを考慮すべきであろう。

 また、援助交際が悪いことであるとしても、だからといって、催涙スプレーや手錠をかけられ連れ去られるということが必然であるとは言えない。倫理的問題を別にするならば、「いかなる危険が存在しているかもしれない所に自ら身を投じる」のは、海外でのボランティア活動参加でも同程度以上のリスクがある。

 3.も、奇妙な後付け論理であって、催涙スプレーや手錠をかけられた極限状態にあって「いつ逃げれば最適か」などと理性的な判断などできるはずがない。まして中1であるならば、発作的に走行中の車から飛び降りることだってありうる。

 とにかく、ある個人の自由を束縛し、思いのままに支配できる状況を作り出している加害者は、予見できようとできまいと、被害者に発生したいかなるアクシデントに対しても全責任を負わなければならないと思う。被害者が特異体質でショック死しても、交通事故で移送中の車が大破して死亡させたとしても、割引原理は通用しない。そのようなアクシデントは、元の犯罪が無ければ決して起こりえなかったからである。