じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] おでんの作りすぎはやめよう>妻。





1月31日(木)

【ちょっと思ったこと】

終わった、終わった

 31日は卒業論文の提出締切日。今年の提出者は16名、そのうち6名が私のゼミの所属。昼すぎまで下書きへのコメント作業、そのあとは題目の確認など。こっちも同じくらいくたびれた。ちなみに、提出された卒論は1編につき3名の教員が査読することになっている。この日記でもごく一部だが、一般性のある問題に限ってコメントを公開する予定である。
 締切間際の研究室は不夜城状態。あっ「不夜城」は「夜でも昼と同じように明るくにぎやかな場所」という意味だが、決して賑やかではなかっただろう。ノートパソコンが並び、殺気だった緊張感に満ちあふれていた。私がよく分からないのは、論文などというものは本来、個室でじっくり考えながら書き進めるもの。今さら実験をするわけでも、計算をするわけでもないのに、なんでわざわざ大学に籠もらないといけないのだろうか。察するに、
  • じぶん一人では怠けてしまう。複数の人が頑張っている状況に身を晒すことで、論文執筆以外の行動を発しにくい状況を作る。
  • 「間に合わない」という不安を共有し、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」的発想で励まし合う。
  • ある程度の助言を得る。ちょっと忘れた専門用語とか、体裁だとか。
  • 私のゼミのように、ネット上で非公開サイトにアクセスして指導教員の下書きコメントを読むという指導方式をとっている場合は、大学のほうが簡単に読みやすいし接続料もかからない。
といったところか。一部、行動分析的でない解釈も含まれているけれど。

2/2追記]じっさいに研究室にこもっていた卒論生から以下のような追加理由の情報をいただいた。どうもありがとうございました。
  • 家にいると布団やコタツの誘惑に負けてそのまま大幅に時間をロスしかねない。
  • プリンターやコピー機が利用可能(印刷物に書き込みながら考察するタイプの人 も多い)
  • 昼間ならすぐに先生に指導を仰げる。(特に、ネットに頼らない先生)
  • 集中力が途切れたときにちゃぁちゃぁしゃべくる仲間がいる。気分転換が容易。
  • あれは一種の「祭り」である。



かるたクイーンとマラソンのクイーン

 21時15分からのNHKにんげんドキュメント「百分の一秒に輝く」を視た。かるたクイーンとして11連勝を果たした渡辺令恵さん(37)の話。「百人一首」を使った競技であろうとは思っていたが、正月に遊ぶ普通のかるたとは違って、いろいろなルールや裏技があるようだ。

 上の句を読み始めた瞬間に下の句の札を取るという基本形は変わらないとしても、相手にどういう札を送るか、どう配列するか、相手の手の動きをどう制するかといったテクニックがあるようだ。

 すごいと思ったのは、読み上げる前に札を取ってしまうという裏技。声を出す前の息の吸い方や、子音が聞こえる大きさになる直前の歯に当たる摩擦音だけで察知してしまうというのはもはや神業。

 「負けてから引退すると限界を示すことになるが、負けないままで引退すれば余韻を残せる」という父親の進言と、それを猛烈に否定する渡辺さんのやりとりにも考えさせられるものがあった。

 そのあと、寝る前に同じNHKで「トップランナー」を視た。こちらはマラソンの高橋尚子選手(29)が登場。いま述べた渡辺クイーンに比べると妙に明るい。「Qちゃん」というニックネームは本人に失礼ではないかと思っていたが、本人自身がリクルート入社時に下ネタっぽい振り付けでQちゃんの踊りを披露したのが始まりだとか。

 たまたま同じ日に、かるたクイーンとマラソンのクイーン(←高橋尚子選手をそう呼んでよいのかどうかはワカランが)の話を聞いたわけだが、かるたクイーンの方のほうが遙かに悲壮感にあふれているような印象を受けた。

 かるたの場合は、相手に勝ってこそのクイーンである。本人も言っておられたが、「クイーンであるか、ただの女性であるか」2つに1つしかない。そのぶん、社会的要因が強く働くのだろう。また「負けたらすべてが失われる」という強力な「好子消失阻止の随伴性」がはたらいている。

 いっぽう高橋尚子選手の場合は、優勝や金メダルも重要な要因の1つではあるが、基本は「ベストを尽くせるかどうか」ということ。じっさい、本人がいちばん満足したレースは、シドニー金メダルでも、ベルリンマラソンの世界記録でもなく、アジア大会での優勝だったという。アジア大会(タイ)では暑さにめげず、ゴール間近まで世界記録を超えるペースで走り抜いていた。トップを狙うための駆け引きよりも、自分自身、設定した目標に対してせいいっぱい力を出し切れるかどうか、その時の達成感が最大の喜びになる、ということなのだろう。

2/1追記]Googleのキャッシュになるが、かるたクイーンについての記事がこちらにあった。毎日新聞小学生版の記事はこちら。にんげんドキュメントの放送記録にも追加されるはず。