じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 数日ほど暖かい日が続いたせいだろうか、サザンカの花が赤い絨毯を作っていた。





1月18日(金)

【ちょっと思ったこと】

佐々紅華氏

 みのもんたさんの「今日は何の日」によれば1/18は、佐々紅華(さっさ・こうか)氏が亡くなった日ということだ。佐々氏は浅草オペラ出身の作曲家。中山晋平氏と共に大正末期から昭和初期の流行歌黎明期の第一人者として知られるが、若い頃には、「His master's voice」で有名なビクターのトレードマークにヒントを得て、大仏が体を曲げて蓄音機に聴き入るマークを作成するなど、イラストでも才能を発揮した。

 代表曲は、『君恋し』、『祇園小唄』、『東京音頭』(←ヤクルト応援歌と同一曲かどうかは未確認)など。戦争中は軍歌の作曲を断り、埼玉県寄居に疎開。戦後にフランク永井氏が『君恋し』でレコード大賞を受賞した時にはすでにこの世を去っていた。いまでもヒットしそうな『茶目子の一日』シリーズも面白い。

 戦前というと暗い軍国主義のイメージがどうしてもつきまとうが、大正〜昭和初期は、レコードジャケットに上半身裸の女性のイラストが登場するなど、けっこう自由な雰囲気があったようだ。
【思ったこと】
_20118(金)[心理]いつまでも母らしく

 19時半からのNHK「ふるさと発ドキュメント:いつまでも母らしく」を視た。北九州若松区のグループホーム「やまびこ」(代表:田中秋子さん)の日常生活を描いたもので、痴呆性高齢者のケアのあり方を考える貴重な資料になるかと思う。

 このグループホームはごく普通の住宅街の中の民家を改造したもので、映像からは、8人〜10人ほどが一緒に暮らしているように見えた。痴呆の高齢女性ばかりで生活を始めて2年余りになるが、みな元気。グループホームの方針として
  • 自分の好きな時にいつでも出られる(必ずスタッフが付き添っていく)
  • 好きな時に好きなことができる
  • ウソは絶対につかない
と決められており、家に弁当を届けようと外出するお年寄りが居れば、体調に気遣いながら30分ほどあたりを散歩し、納得ずくでホームに帰ってくる。「能動」が最大限に尊重されているとの印象を受けた。

 番組では主として、外出にこだわるTさんと、軽い肺炎で入院し再びホームに戻ってきたKさんが描かれていた。Kさんは昭和15年に結婚したものの、夫は戦死。二人の男の子を女手ひとつで育てあげたという。

 北九州と言えば、妻が生まれた土地であり、ついこのあいだの正月にも帰省したばかりである。独特の訛りが義母や義父のしゃべり方そっくりであったため、特に身近に感じられた。番組の終わりのほうでは、今年の正月にみんなで着物を着る様子や、雪をみんなで眺める様子が紹介された。雪の中、防寒具を着て外出するおばあさん。どこへ行くんですか?の問いに「わからん あははは」と答えていた。そう言えば、今年の正月は暴風雪警報が出るほどの寒さだった。あの日は自分も北九州で雪の降る様子を眺めていたことを思い出した。




 アルツハイマー型の方がおられたのかどうか不明だが、番組を拝見した限りでは、危険を招くような不適応行動は生じていないように見えた。上にも挙げたように、能動的な行動機会が十分に保障されていることと、田中秋子さんのすぐれた運営によりホーム内の人間関係が良好に保たれていることが好影響をもたらしているのではないかと思う。痴呆では「徘徊」がしばしば問題となるが、思う存分近所を歩き回る機会が与えられていれば、夜中にうろつくこともない。似たような話は、昨年6月、ブリスベンでアルツハイマー協会の代表の方からもうかがったことがある。

 もっとも、一対一で散歩に付き合う介護スタッフのご苦労も大変なものではないかと拝察される。共同生活が始まって2年余りということだが、時が経てば、いずれは寝たきりになったり、入所者全員が徘徊を始めるということも考えられる。その時、どう対応されるのかちょっと心配だが、看護婦30年のキャリアをもつ田中さんのことだから、ちゃんと先のことまで考えて運営をされているのであろう。