じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 1/6の日記でヘクソカズラの実を御紹介した。昨日、別の角度から撮影した写真をNHKおかやまに送ったところ、夕刻のローカル番組の中で紹介してくださったとか。残念ながら、私自身は、夕刻に長時間会議があったためそのシーンを視ることができなかった。





1月16日(水)

【ちょっと思ったこと】


日記才人、攻撃される?

 このWeb日記が毎朝更新報告を出している日記才人が、クラッカーの攻撃を受けた模様だ。1/16朝にいつものように報告を出そうとすると、内部エラーの表示が出て受け付けてもらえない。16日の3時44分以降、17日朝の時点でも停止状態が続いている。

 日記才人はオーナーの池川さんのご厚意と管理サポートチームの善意で成り立っているボランティアサイトのため、クラッカーがもたらした被害をお金に換算することはできないかもしれない。しかし、サポートチームが多大な時間を割いて復旧作業にあたっていることに加えて、参加しているWeb日記作者に「精神的苦痛」を与えていることは十分に立証できる。犯人が確定した段階で慰謝料を請求するぐらいの毅然とした態度も必要かと思う。1人10万円の慰謝料として、参加者1万人分、10億円を請求すればよい。参加者の中には弁護士もいるはずなのでボランティアの応援をお願いし、徹底的に犯人を打ちのめしてやりたいものだ。




最低気温が10度以上とは!?

 元旦以来ずっと寒い日が続いていて、岡山の冬ってこんなに寒かっただろうか、それとも年を取って寒さが応えるようになったのだろうかなどと思っていたところ、16日朝の最低気温はなんと10.5度(朝9時まで、10/17の朝日新聞による)。ラジオのニュースによれば、何でも1月の最低気温としては、岡山気象台が現在の場所で観測を始めるようになってからいちばん高い温度になったということだ。いくら何でもこれは高すぎだ。再び寒気が南下した時に体調をくずさないかどうか心配だ(特に、センター試験受験生)。

 余談だが、移転前の岡山の気象台は、なんと私が住んでいるアパートの敷地にあったとか。
【思ったこと】
_20116(水)[心理]「音楽療法」効果あるか?

 1/17の朝日新聞によれば、アルツハイマー病患者に、言葉を語りかけながら音楽や歌を聴かせる音楽療法を施すと、細胞を活性化させるホルモンの分泌量が数倍に増える効果があることがつきとめられ、19日に横浜市で開かれる第1回日本音楽療法学会学術大会で発表されるという。

 記事によれば、これは、奈良教育大の福井一・助教授(音楽生理学)と奈良市社会福祉協議会が共同研究により突き止めたもので、アルツハイマー病患者6人(67〜90歳)を対象に
  1. 四季の情景が浮かぶように話をする
  2. 音楽に合わせて「春」など、季節を題材にした歌をうたう
  3. 季節の話をした後に季節を題材にした歌をうたう
という3条件のもとでのホルモンの分泌量が比較された。その結果、3.の条件の時だけ、エストラジオールの分泌量が平均約4倍に、テストステロンの分泌量は約2倍に増え、療法士の言葉と音楽の相乗効果が認められたという。

 音楽療法を含めて、「高齢者福祉におけるセラピーの役割」に関しては、昨年末に刊行した紀要論文の中で詳しく論じたことがある。その中の「3.実験心理学はセラピーの有効性を検証できるか」で指摘した問題点は、今回発表される研究にもそのまま当てはまると思う。例えば、
  • 上記の条件の中では、効果があったという3.の条件の時が、療法士と患者との接触時間が一番長い?
  • ひとくちに「話をする」といっても朗読をするのと、対話型で話しかけるのでは大きく違う。対話型の場合は、療法士の名人芸に依拠する部分が多い。
  • 上記論文の「3.1.2.実験におけるパラメター設定の恣意性」で指摘したように、ひとくちに「歌をうたう」と言っても、曲の種類や歌う時間によって様々な違いがある。
  • 6人の患者の平均値で比較されているようだが、上記論文の「3.1.1.万能性への過剰な期待」で述べたように、「あるセラピーが「誰にでも効くかどうか」などは極端に言えばどうでもよいことなのだ。特定の人間にとって、どういうセラピーが有効であるのかを確認することのほうがよほど大切」なのである。
  • このほか、上記論文「3.1.3.効果の持続についてのあやふやさ」で指摘したように、実施から数時間も経たないうちに効果が消失してしまうというのでは実用上の価値はない。
といった点について、詳しく検証していく必要があるかと思う。

 上記論文の「3.1.7.漠然とした定義(2)」で指摘したように、そもそも「音楽療法」は「おんがくりようほう(音楽利用法)」 ではないかと言われるぐらいに多様であり、必要十分条件となるような具体的な項目は定められていない。1つのやりかたで有効性が確かめられたといって、既存の音楽療法すべてが有効というわけにはいかないだろう。実験的方法でできるのは、「音楽療法の効果が皆無だ」と主張する頑固者(←が居たとして)に対して、「皆無とは言えない一例がある」という反例を示すことだけである。

 おそらく、今回の研究発表をされる方も、そのあたりは控え目に考えておられるのではないかと思う。むしろ騒ぎ立てるのは、それを伝えるマスコミや、上記論文「3.2.実験的検証と商業宣伝」で指摘したような、セラピーを商売の道具にしようと考えている人々かもしれない。

 念のため申し上げておくが、私は、音楽療法、園芸療法(←園芸療法に関してはこちらの報告の後半部分をご参照いただきたい)を初めとする各種療法を否定する立場ではなく、むしろ積極的に活かすべきだという立場で種々の活動に参加している。ただし、人工的な実験環境の中でも医療効果を検証して「手段としてのセラピー」の地位を確立することよりも、それに関わること自体が楽しみとなるような「目的としてのセラピー」のほうが大切ではないかと思っている。上記論文を基に、後者の視点をもういちどまとめておきたいと思う。
  1. セラピーは、治療や改善などの有効性の有無だけによって評価されるものではない。生活の質の向上をもたらす活動、つまり「それに関わること自体が楽しみとなるような活動」もセラピーに含めることができる。
  2. 但し、第三者の助けを借りずにそのような活動を行う限りにおいては、それらは「療法(セラピー)」ではなく、「福祉」として位置づけられる。
  3. 何らかの理由でそのような活動に自立的に関与できない人々に対して、その活動内容および福祉や医療の専門的体系的知識を身につけた者(「療法士」)がサポートを行うことは、セラピーに含まれる。
  4. 上記3.の実践においては、対象者の現状と可能性を把握し、目的にあったプログラムを立案、またそのプログラムが有効に働いているかどうかを評価できる能力が要求される。
 行政当局においても、アリバイ的な「医療効果の有効性」にこだわることなく、「それに関わること自体が楽しみとなるような能動的な活動」が高齢者・アルツハイマー病患者に必要であることをまず認め、それをサポートするために、その活動内容および福祉や医療の専門的体系的知識を身につけた者(「療法士」)の養成が必要であるとの観点から、保健・福祉政策を進めてほしいと思う。