じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 毎年この時期に御紹介している、モミジと四季咲きラベンダーとの取り合わせ。



11月29日(木)

【ちょっと思ったこと】

「この人は犯人だ」と「犯人とは別人だ」の確信の違い

 木曜夕刻は、提出締切を12月下旬にひかえた修論生の事前発表会があった。その中で、過去に出現した事象であることを肯定する確信度と、過去に出現しなかった事象であることを肯定する確信度を比較した面白い実験があった。まだ提出前でもあるので、ここでは内容にふれることはできないが、全く別の例え話に置き換えて、その時に思ったことをメモ代わりに記しておくことにしたい。なお、以下の例え話はもとの実験のロジックをそのまま踏襲したものではない。

 ここで、犯罪事件を目撃した人に対して、いろいろな写真を見せて「この人は犯人ですね」と尋ねたとする。目撃者は、「はい」、「いいえ」と答えるとともに、その回答をどのくらい確信しているのかを数値で評定する。素朴にも予測できることだが、この場合は、確信の大きさが大きいほど正答率も高くなる。

 では、いっぽう、いろいろな写真を見せて「この人は犯人とは別人ですね?」と尋ね、同様に、「はい」「いいえ」の他に、回答への確信度を評定した場合はどうなるだろうか。数学的に考えれば、

●(余事象の確率)=1−(当該事象の確率)

となるので

●(余事象が正しいという考える確信度)=1−(当該事象が正しいと考える確信度)

となるはずで、「犯人ではありません」を肯定することの確信度と正答率の大きさは正比例するものと予測される。ところが、実験の結果、確信度と正答率の関係は無相関、あるいは時として負の相関を示したとする。この場合、どういう解釈すればよいのだろう。

 素朴には、「この人が犯人だ」と確信する度合いは、犯人の髪型、眉毛、目の大きさ、鼻の形、唇の形、肌の色など、いくつかのチェック項目の一致度や記憶の確からしさに基づいて判断されるものと思われる。それゆえ、確信度が高いほど正答率が上がるということは十分に考えられることだ。

 いっぽう「犯人とは別人だ」と確信する場合は、ただ一項目でも明確に異なっていれば十分である。もし目撃者が「犯人は鼻が高い」ことに注目していたとすると、鼻が低い顔写真を見せられた時には、顔の他の部分を見なくても「別人だ」と確信することができる。しかし「犯人である」を確信する場合よりもチェック項目が少ないので、万が一思い込みや錯覚があった場合にはそれだけ正答率が下がることになると予想される。

 このほか、犯人の顔をすっかり忘れてしまった場合はどうだろうか。後に見せられた写真が全く見覚えの無い場合、「この人が犯人ですか」に対して「はい」と答えることの確信度は限りなくゼロに近くなる。いっぽう「犯人とは別人だ」に対して「はい」と答える場合には、「見覚えがない」ことは確信度を高める方向にも作用する可能性がある。おそらくこのことが、確信度と正答率の関係は無相関、あるいは時として負の相関を示すことにつながっているのだろう。もちろん、こうした解釈は細かい実験を繰り返すことで実証されていくものではあるが。

 余談だが、「今日は雨が降るでしょう」と「今日は晴れるでしょう」に対する確信度はどう違うだろうか。雨が降ることへの確信度のほうが具体的であり、見積もりが容易であるように思えるのだが、いかがだろうか。空しいことだが、「晴れ」の本質は、「雲が存在する」ことの余事象なのであって、具体性を持たないカラッポの状態なのかもしれない。
【思ったこと】
_11129(木)[一般]注意報と警報

 11/28の朝日新聞によれば、気象庁は現在16種類ある気象「注意報」を50年ぶりに見直し、削減に取り組むという。気象庁の発令している注意報には、「雷注意報」のように注意報だけのものと、「波浪注意報」「波浪警報」のように注意報・警報の2段階になっているものがある。今回廃止が検討されるのは、重大な災害に結びつかない注意報、あるいは局地的な現象で地域差が大きいものになるという。

 注意報と言えば、子供の頃、強い風のことは「きょうふうちゅういほう」と呼ばれるものだと思い込んでいたことがあった。7歳の時に作った詩にこんなものがあった。
おおあめの くもが かえっていった
だけど
かぜだけは かえらない
まいごに なったのかな
きょうふう ちゅういほう
その後、この呼び方は間違いであることに気づき口に出すことはやめたが、中学に入る頃までは、強い風が吹くと「きょうふうちゅういほう」という言葉が常に浮かんできたものである。

 この新聞記事には16種類の注意報の発令回数が紹介されていた。多いほうからTop5を並べると
  • 雷 注意報:4928回
  • 波浪注意報:3750回
  • 大雨注意報:2702回
  • 洪水注意報:2303回
  • 濃霧注意報:2043回
 いっぽう、回数が少ないものとしては、着氷注意報39回、高潮注意報148回、融雪注意報174回などとなっている。雷がいちばん多いというのはちょっと意外だった。

 念のため気象庁の案内サイトを見たところ、上記の16種類のほかに、警報だけで発令されるものが2種類あった。暴風警報と暴風雪警報である。暴風警報は小中学校の休校の目安にもなるため子供でもお馴染みだ。

 では火災警報はどうなのか。ネットで調べたところでは、こちらは消防法(昭和23年法律第186号)第22条第3項の規定に基づいて消防署(消防局、消防団)が行うものであり、湿度や風速のほか、警戒上特に危険であると消防局長が認めるときに発令されるようだ。

 警報と名のつくものはこればかりではない。ネットでざっと検索すると
  • 「交通事故警報」や「非常事態宣言」
  • 食中毒警報
  • コンピュータ・ウイルス警報
などがあった。しかし、世の中いくら危険が多いからといって、安易に「警報」や「非常事態」を乱発すると逆に警戒心が薄れる恐れがある。少なくとも気象に関しては、「異常乾燥注意報」の「異常」を取ったり、警報の出しっぱなしにならぬように発令のハードルを高くするなどの措置がとられたと記憶している。今回の見直しも、本当に警戒すべき現象だけに注意を喚起するための措置かと思うが、そのためには上記の火災、交通事故、食中毒、コンピュータウイルスなどをすべて含めて、総量規制というか、日常生活全般の中での警報を乱発しないための調整のようなものも必要になってくるかと思う。

 もう1つ、99年7月7日の日記に書いたように、気象業務法は
(警報の制限)第二十三条  気象庁以外の者は、気象、津波、高潮、波浪及び洪水の警報をしてはならない。 但し、制令で定める場合は、この限りでない。
と定めている。いくら信仰の自由があっても「来年の○月○日に大洪水と大津波が起こるので、みな悔い改めよ」などと言うのは法令違反になるようだ。但し、大地震が気象に含まれるのか、それについて私的な警報を出すことが違法になるのかどうかはよく分からない。どなたか情報をいただければ幸いです。

11/30追記]気象業務法についてはこちらのデータベースをご覧ください。上記の「制令」は「政令」の誤字でした。掲示板でhyoukokuさんから詳しい情報をいただいたが、地震は「気象」ではなく「地象」。このあたりの定義は第二条にある。なお、気象業務法施行規則は平成一三年三月三〇日、気象業務法施行令は平成一三年九月一二日に改正されているのでご注意ください。それにしても、このデータベースって便利ですね。