じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

11月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

[今日の写真] 大学構内・座主川沿いのサザンカ。サザンカ自体は10月下旬から開花しているが、やはり、寒い季節こそがよく似合う。



11月27日(火)

【ちょっと思ったこと】

活字離れで硬派本売れず

 11/27の朝日新聞によれば、人文・社会科学系専門書の取次会社として知られている鈴木書店が29日に、取引のある約420の出版社を集めて再建案を示すことになったという。記事では、活字離れに不況が重なり専門書など硬派の本が売れなくなったあおりであると指摘されていた。

 同じ記事には大学生協の調査結果も紹介されていた。それによれば、大学生が1カ月間に使う書籍費は1990年の3790円から2000年の2680円に減少しているという。この書籍費はマンガや趣味の雑誌代を含んでいるため、専門書にあてる費用はさらに少ない。このほか、毎日新聞の「読書世論調査」でも、「1カ月間に書籍を最低1冊読む」層のトップが1980年の20歳代(59%)から2000年の40歳代(55%)にシフトしているという。岡大生協でも最近はブックストアの売り上げが大幅に落ち込んでいると聞いた。

 上記の調査の中で「1カ月間に書籍を最低1冊読む」層のトップが1980年の20歳代(59%)から2000年の40歳代(55%)にシフトしたというのは、1951年から1960年のあいだに生まれた世代に読書好きがいちばん多いという意味にもとれる。Web日記を拝見しても、確かにこの世代の方は読書の感想がよく書かれているようだ。その後の世代はどちらかというと映画やTV番組の感想が多いようにも見える。もっともこれは私が拝見している日記に限っての特徴なので確かなことは言えない。1960年以降にテレビが急速に普及したことは間違いないけれど。

 では1952年生まれの私はどうかと言えば、老眼がひどくなってから読書量は極端に減ったように思える。専門書はともかく、それ以外でまともに一冊読んだ本というのはこの一年間全く見当たらない。最近は寝る前はもっぱら自室で一人で過ごすことが多いが、本を読む代わりに、録画したビデオなど視ながらWeb日記を書くことが殆どである。新幹線や空港の待合い所などでも一般書を読むことは無くなった。休日は暇があれば園芸、写真などで楽しむ。けっきょく死ぬまで読書の時間を確保することは難しそう。
【思ったこと】
_11127(火)[心理]第10回エコマネートーク(2)エコマネーの発展段階

 11月22日(木)の夕刻に行われた第10回エコマネー・トーク(主催:エコマネー・ネットワーク、会場:アサツーティ・ケイ銀座オフィス)の参加報告の2回目。今回は提唱者の加藤敏春氏(エコマネー提唱者、経済産業省、東京大学大学院併任教授)による

●各地の『エコマネー』の状況報告

について感想を述べることにしたい。

 加藤氏は、いつも話が長くなって事務当局に迷惑をかけていると前置きし、用意されたパワーポイントファイルのうちのかなりの部分を省略し、要点だけをかいつまんで強調された。

 加藤氏はまず、対数的上昇【←関数の形から言えば「指数」的ではないかという気もするが】を続けてきた人類は、いまや破滅するかソフトランディングして平衡安定するかの瀬戸際にあることをグラフで示した上で、
  • 人類を救う「エコライフ」
  • 情報とサービスは豊かに、モノとエネルギーは慎ましく!
  • 第3の社会:会社人間(貨幣経済)と家族(非経済)の間に形成される「個」(ボランティア経済)
  • エコマネーは善意の出会い系サイト
といったキャッチフレーズを披露された。

 エコマネーとか地域通貨というと、どうしても商店会が中心となって運営するボランティア評価型のスタンプのようなものが多いように思ってしまうが、加藤氏は下記の1.から3.への発展段階を構想しておられる。それは
  1. 相互扶助(交流):信頼の熟成
  2. 課題解決:介護保険制度充実、環境回復など目標設定のプロセス
  3. 協働:まちづくり全体の活動、繰り返しのプロセス、個人のライフスタイル、エコライフ
上記のうち、北海道栗山町の第1次や宝塚第2次が第一段階、栗山町の第2次が第二段階に発展を遂げているという。第二段階では「エコマネーを何のために使うのか」が鍵となる。そして第三段階こそがコラボレーションの段階、これは繰り返しのプロセスとなり終結することはない。

 このほか、エコマネーを活用することの効果測定にも取り組んでおられるという。効果の検証が客観的に行われれば自治体も積極的に取り組むようになるだろう。

 このほか、留意すべき点として、紙幣類似行為取締法について少しだけ言及があった。ひとくちに地域通貨と言っても、現金に換えたり商店でモノが買える通貨となるとこの法律にひっかかるらしい。もちろん地域通貨普及のために法律を変えることもできるだろうが、信頼関係とボランティア経済を基礎におくエコマネーはもともと異なる次元で使われるべきもの。ボランティア経済と貨幣経済は“車の両輪”として位置づけられるというのが加藤氏のお考えのようだ。




 以上、加藤氏のトークの中で特に印象に残った点をまとめさせていただいた。これらの構想を実現する上で行動分析はどのように貢献できるだろうか。

 まず、「行動随伴性」の概念を導入することでエコマネーがどのようにして行動を強化するのか、そのプロセスを明らかにすることができると思う。エコマネーについて初めて言及した昨年11月12日の日記でも取り上げたように、エコマネーは行動分析学的に言えばトークン経済システムにあたる。『行動分析学入門』(杉山ほか、1998年、産業図書)によれば、トークン経済システムとは

●コミュニティにおいて望ましい行動のマネジメントをトークンを使って行う仕組[p.162]

であり、同じ頁には「優れたトークン経済システムでは、トークンを交換できる期限が限定されていることが多い」など、エコマネーを連想させるような指摘もある。

 トークンが有効に機能するためには、それを強力な裏付好子とリンクさせること、また、なるべく多種多様な裏付け好子とリンクさせ「般性習得性好子」としての機能を高めることが必要になる。お金が強力な般性習得性好子になっているのは、衣食住や性的刺激など多様な生得性好子によって裏付けられているからである。

 エコマネーがお金と並立する般性習得性好子となるためには、何を裏付け好子とするのかが重要な課題となる。万が一それに失敗すれと、コミュニティの中での相互扶助や課題解決のための諸行動はうまく強化されなくなってしまう。

 次に加藤氏がすでに取り組みを開始されているという効果測定にも、行動分析は大きく貢献すると思う。このような効果は、参加者への満足度調査のようなものだけでは決して測れない。特に、上記のエコマネー発展第二段階以降となると、課題解決や協働につながる行動が確実に強化されているかどうかがポイントとなる。そのためには意識調査ではなく、具体的な行動がどれだけ活性化されているのかを測る必要がどうしても出てくるし、また、ただ導入前と導入後を比較するのではなく、ABAB反転実験計画のような実験的検証も必要になってくるだろう。

次回は、インターネットの効用についての私の質問内容を書く予定。