じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 農学部南側の銀杏並木。まもなく一面黄金色の世界が広がる。



11月15日(木)

【思ったこと】
_11115(木)[心理]地域通貨とエコマネー(1):エンデの遺言

 少し前に録画しておいたNHK衛星「ウィークエンドスペシャル 続エンデの遺言1:坂本龍一『地域通貨の“希望”』」を視た。この番組は、チャンネルをまわしたらたまたま放映されていたものであり、最初の部分は不明。また、この種の番組になぜ坂本龍一が出演されていたのか、続編はどうなったのかもよく分からない。

 番組では、地域通貨についての簡単な歴史が紹介されていた。初めて提唱したのは、シルビオ・ゲゼル(1862-1930)という経済学者であり、『自然的経済秩序』の中で、「お金は老化しなければならない」「経済活動を終えたあとは消え去らなければならない」などと主張。ケインズも、マルクスよりはゲゼルの主張に注目していたという。

 番組ではさらに、国内各所や米国で導入されている地域通貨の活動が紹介された。その内容は多種多様であり、一部がドルや円に交換できるものから、ボランティア活動の自己評価を数値化したようなものまでいろいろ見受けられた。

 このように、一口に地域通貨と言っても運用のルールや交換対象はいろいろに異なる。5/12に行われた京都心理学セミナーや、『エコマネーの新世紀』(加藤敏春、頸草書房、2001年)によれば、これらの通貨は、「ボランティア経済か貨幣経済か」という軸と、「信頼関係か債権債務関係か」という軸により2次元平面上で4通りに分類される。よく誤解されるが、加藤氏や中山氏が提唱しているエコマネーは

●エコマネー:ボランティア経済+信頼関係

いっぽう、各地域で導入される地域通貨は概して

●地域通貨:貨幣経済+信頼関係

という領域に位置することになる。このほか、

●タイムダラー(時間預託、ふれあい切符):ボランティア経済+債権債務関係

また、通常の通貨は

●通常の通貨:貨幣経済+債権債務関係→マネー

という領域に位置することになる。

 加藤氏の分類は経済学の理論に基づくものと思われるが、行動分析の観点から捉え直してみると、上記の「信頼」とか「債務」はある種の随伴性に置き換えることができる。「交換」がもたらす強化機能、あるいは「貯めておいたらゼロになる」という好子消失阻止の随伴性の機能も重要。行動分析の視点は、経済体制を作り替えるような大それたことはできないが、地域通貨やエコマネーの活動を円滑に進めるための方策の発見や、人間行動の基本からモノの価値を問い直すためには大いに貢献できるのではないかと思っている。

 いま密かに考えているのは、こうした通貨を、高齢者施設の中でうまく導入できないかということだ。いくら大金があっても施設の中では役立たない。コミュニティの中だけで通用する別の通貨があれば、相互援助はもとより、自分の存在価値を見直す役割も果たすことになるのではないかと考えている。