じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 農学部の楷の木(オス)が今年もまた見事な紅葉を見せるようになった。近くのメスの木のほうは、紅葉の点では相当に見劣りするが、代わりに宝石のような実をいっぱいつけている。 [今日の写真]



10月28日(日)

【ちょっと思ったこと】

「終了するのにスタート」とは.....

 10/29のNHK「英会話入門」で面白いジョークがあった。今週は「テクノロジー」が話題だという。パソコンの操作方法に関しての会話を私なりに脚色すると、
  • (学習者)終了するにはどのボタンをクリックすればいいのですか?
  • (先生)スタートボタンをクリックして、「終了」を選んでください。
  • (学習者)終了するのになんで「スタート」しなければいけないんですか?
なるほど。Windows使用者は、この矛盾にもっと早く気づくべきだった。
【思ったこと】
_11028(日)[心理]しごと、余暇、自由、生きがいの関係を考える(19) ボラバイト(ボランティア+アルバイト)の展望とエコマネー

 一日前になるが、昼食時に娘が視ていた王様のブランチ「ボランティア調査隊」で、「ボラバイト」を取り上げていた。「ボラバイト」というのは「ボランティア」と「アルバイト」を合わせた造語。翌日にネットを検索したところ、サンカネットというサイトの中に、詳しい紹介があった。

 番組のほうでは、野仲美貴、山口あゆみという二人のタレントさんが、動物保護施設と、三浦市のフラワーガーデンでボラバイトに従事し、オーナーの家族とふれあうという内容であった。

 上記のサンカネットのサイトを詳しく拝見したところ、ボランティア活動、アルバイトのいずれとも違う、次のような特徴のあることが分かった[出典はこちらほか]。
  1. ボラバイターとは?
    ボラバイトはお金が一番の目的ではありません。経験したことがない仕事を経験する事や、地方の人たちとふれあう事を目的として、農家での農繁期、宿泊施設でのハイシーズンなど、地方で人出を必要としている時期にお手伝いに伺います。また企業でのボラバイト(インターンシップ)はボラバイトの中でも「ボラバイトシップ」として括っています。
  2. ボラバイト料:最低賃金法で定める最低賃金を最低基準。
  3. 勤務時間は労働基準法で定める8時間/日以内。
  4. 食事及び宿泊費は、ボラバイト先負担。交通費はボラバイター負担。
  5. ボラバイト先の農家、施設、企業は、ボラバイターが決定した時点で、サンカネットに掲載手数料を支払う。


 こうして眺めてみると、形式上は通常のアルバイトと同じ雇用形態となるものの、賃金は格安。それゆえ、何か別の目的のためにお金を蓄える人には不向きであり、あくまで、自分の好きな仕事を体験してみたいという希望をかなえるための機会ということになりそうだ。

 純然たるアルバイトの場合は、お金という付加的好子によって強化されるため、仕事を遂行すること自体がもたらす行動内在的な喜びを味わいにくいという問題がある。また、アルバイトを辞めてしまうと生活に支障が出るため、「〜しないと収入を失う」という好子消失阻止の随伴性により義務的に維持されるという、つまらなさがついてまわる。

 いっぽう、純然たるボランティアは、他に収入の道が確保されていなければなかなかできないことがある。また中には、「ボランティアに来てやっているんだ、命令するな」などと、自分の望まないことを拒否するような我が儘も出てくるかもしれない。この点、ボラバイトの場合は、とりあえず法的な雇用関係が成立するはずだから、オーナーの側でも気兼ねせずに指示を出しやすいところがあるのではないかと思う。

 こちらの詳細情報を眺めてみたが、沖永良部島での花の栽培とか、知的障害者との共同作業による花卉園芸、浅間高原でのキャンプ場・ログハウスのスタッフ、あるいはテレビでも紹介されたフラワーガーデンでの作業などは、私でもぜひ参加したいような内容だ。もっとも、現実には、公務員の兼業規定に抵触するので不可能(←ボラバイトの働きがい調査の目的なら別だが)。




 景気の悪化に伴う中高齢者のリストラとは別に、大学卒業後に定職に就かないフリーター、就職後数年以内に会社を辞めてしまう若者が増えているという。学生時代に各種のボラバイト、特に企業での「ボラバイトシップ」(インターンシップ)に就くことは自分の適性や将来の方向を見定める上で有効ではないかと思う。

 サイトを拝見した限りでは、サンカネットというのは「co.jp」、つまり通常の民間企業として運営されているようだ。NPOでなく営利企業として立ち上げたのは、斡旋業務上の都合があったのだろうか。もっともNPOや協同組合のような形で、参加者全員の中から代表を選ぶようにしても、参加者にとってはあまりメリットは無いかもしれない。なぜなら、ボラバイターを希望する人にとっては、希望する仕事を体験することが喜びになるのであり、組織の運営に何らかの形で関与することは雑用を増やす以外の何物でもないからだ。いっぽう、民間企業として斡旋業務を行う以上は、経営責任を明確にせざるをえず、また希望者が自発的に集まるのを待っているだけでは成り立たない要素が出てくる。やはりこの種のネットは、「運動」ではなく「企業活動」として広げていくべきものかもしれない。




 こういうボラバイトと、今年5月12日の京都心理学セミナーでも講演をいただいたエコマネー[こちらの資料参照]やボランティア通貨とはどこが違うのだろうか。

 とりあえず思いつくままに挙げてみると
  • エコマネーは、あるコミュニティの中だけで通用し、使わないとどんどん価値が下がっていく。
  • エコマネーの交換価値は、多対多の関係にある。但し、原則として、交流がもたらす価値を交換するもの。
  • ボラバイトの場合は、雇用者とボラバイターの一対一の関係が基本。また報酬は一般通貨で支払われ、通常のアルバイトの賃金との「差額分」は「働くこと自体の楽しみ」としてボラバイター自身がみずから創り出すことになる。
というようなことかと思う。農業などをちょっとだけ体験してみたい、先方から自分に対しては特にしてもらいたいことはない、というようなケースではエコマネーよりもボラバイトのほうが気軽でよいかもしれない。但し、コミュニティづくりにはマイナスかもしれない。

 なおエコマネーについては、最近、ネット上でもいろいろな文献が読めるようになってきた。11月にはエコマネー・トークも開催されるという。もっと勉強しなければ.....。