じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] エダシャク(尺取り虫の蛾)のエッチな写真。羽根の模様からウメエダシャクだと思うが、9/8に撮影したもの(左下)に比べると胴体が黒い。亜種があるのだろうか。どなたか情報をいただければ幸いです。

2005年6月26日追記]
ふくはらさんより、交尾している蛾は、カノコガ、いっぽう左下の囲みの中のほうはウメエダシャクかその近縁種ではないかというご指摘をいただいた。羽根と胴体の模様からみて御指摘の通りかと存じます。貴重な情報をありがとうございました。



9月26日(水)

【思ったこと】
_10926(水)[心理]「行動随伴性に基づく人間理解」(17)「交通安全」のお気持ちは分かるんだが.....

[今日の写真]  このところ、大学周辺の道路で、「交通安全」のノボリ(幟)をやたら見かけるようになった。TVニュースによれば、秋の交通安全運動実施中ということなんだそうだが、こういうノボリをいっぱい立てることで交通事故の防止にどれだけ効果があるんだろうか。

 ノボリの効果について無い知恵を絞って少し考えてみるに、
  • 警察や交通安全ボランティアの人々にとっては、「いま交通安全運動をやっています」という「士気高揚」の効果はあるかもしれない。
  • しかし、一般の人々がこれを見たところで、行動が変わるわけではない。そもそも「交通安全」というのは、「交通安全」を願うという信仰によって実現するものではない。安全につながる具体的行動を維持・強化し、また、交通事故に繋がるような危険行動を罰的に統制することで初めて実現するものだからだ。
  • では、「交通安全」の代わりに、「横断する時は右左」、「お年寄りに気をつけよう」、「スピードを出すな」、「運転中の携帯使用禁止」...などと具体的な呼びかけをしたら効果があるだろうか。これもあまり期待できない。スローガンを掲げるだけでは行動は決して変わらないからだ。また、ノボリの文字を1つ1つ点検し納得した後に通り過ぎるという奇特なドライバーはおるまい。街角の文字列などというものは、弁別刺激としての価値(=情報的価値。道案内など)が無い限りはまず目にとまるものではない。
  • いっそのこと、「交通安全運動実施中にスピード違反をしたら、罰金と減点が2倍になります」などと、具体的な行動とその結果を記述したノボリに変えたら効果があるに違いない。なぜなら、その情報を知ったドライバーは、いつにも増して、ねずみ取りにかからないように最新の注意をはらうからである。
 交通安全のノボリについては99年5月30日の日記で取り上げたことがあった。そのときの疑問として、
このことでふと疑問に思ったのだが、横文字文化圏でもこういう幟の広告ってあるのだろうか。幟を作ること自体は簡単だが、横書きの文字を縦に並べてもあんまり宣伝効果があるとは思えない。
その後、イラン、パキスタン、中国、台湾、オーストラリア、カナダに旅行する機会があったが、日本のように派手なノボリ広告は未だに目撃していない。お互いを更新する掲示板などで情報をいただければ幸いです。




 ところで、ノボリに代わる有効な手段としては何があるだろうか。人道上の理由から実現は難しいとは思うが、一番効果的なのは、事故現場の生々しい写真(車がペシャンコになった写真や、血だらけの怪我人、場合によっては死者)を各所に掲示することだろう。

 そもそも「交通安全」は
  1. 安全に貢献する望ましい(能動的な)行動を強化する
    「制限速度の遵守」、「車間距離保持」、「一旦停止遵守」、「交差点での適切な安全確認行動」など
  2. 事故の原因、誘因になるような危険な(能動的な)行動を弱化する 「酒気帯び運転」、「スピード出し過ぎ」、「無理な追い越し」など
という2つの条件づけを徹底することによって実現される。

 では、なぜ1.の「安全に貢献する行動」が強化されにくいのかと言えば、そういう行動を励行したところで目に見えた結果が何も変わらないからである。論理的には
  • 安全行動をする→安全(現状維持)
  • 安全行動をしない→事故(=嫌子)
という嫌子出現阻止の随伴性が働いているのだが、安全行動を少々怠っても事故に巻き込まれる確率はそれほど大きくない。というか、本当の大事故に巻き込まれた人は亡くなってしまうので、この随伴性を反復的に体験することができない。

 一方、「危険な行動」のほうは
  • 危険行動をする→事故(嫌子)
  • 危険行動をしない→安全(現状維持)
という嫌子出現の随伴性による弱化が働いているのだが、少々の危険行為をしても直ちに事故が起こるわけではない点と、反復的に体験することができない点は、上記の「安全行動」の場合と同様である。そこで、人為的に結果を付加することによりコントロールを目ざしているのが現行の罰金・減点制度であろう。しかし、人為的な結果だけでは、取締自体が悪者のように見なされ、それを逃れる手段のほうが強化されてしまうことがある。そういう意味では、時たまは、交通事故の悲惨さそのもの(=確立操作)をアピールすべきかと思う。

 もっとも、「事故現場の生々しい写真」も、あまりにも頻繁に提示すると馴化が起きてしまう。戦場で死体が転がっても何も感じなくなるような鈍化である。また、情操教育上よくないという反対論も出てくるだろう。せめて、免許更新時に見せるビデオの中にもっとショッキングな映像を増やし、かつ、家族の交通事故死が如何に大きな悲しみをもたらすかを訴えるような働きかけが必要かと思う。



 もとの話題に戻るが、ノボリ広告は、ノボリ製造業者の支援策にはなるかもしれないが、安全対策上の効果はきわめて疑問である。少なくとも有効性についてのアセスメントぐらいはやってもいいのではないか。



9/27追記]
平成13年秋の全国交通安全運動実施要綱によれば、交通安全運動そのものについては
第8  効果評価の実施
 主催機関・団体は、運動期間中に実施した施策の効果評価を行い、その結果を的確に把握することにより、次回以降の運動がより効果的に実施されるよう施策の検証に努めるものとする。
となっており、何らかの効果評価が行われる模様。客観的にどこまで検証しているか、注目したいところだ。ノボリ広告の効果については評価項目には含まれていないようだ。