じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 心理学動物実験室前の空き地。大陸から寒気が南下。「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉どおり、今日で残暑は終わった模様。



9月21日(金)

【思ったこと】
_10921(金)[一般]同時多発テロ、その後

 9/11に米国で発生した同時多発テロから10日が過ぎた。その後考えたこと、疑問に思ったことをいくつか記してみたい。



過去を想起する首脳たち

 同時多発テロについては先進各国の首脳たちがアメリカを断固として支持する姿勢を表明している。いずれの首脳も、かつて自国が受けた戦争被害と類比させながら、今回のテロの残虐さを強調している。

 ロシアのプーチン大統領は、今回のテロは、かつてのナチスに匹敵する残虐行為であると厳しく非難した。ロシア人にとっては、ナチスドイツほど憎いモノはない。だからこそ、そういう類比が生まれたのではないかと思う。

 英国のブレア首相は、第二次大戦中にロンドンが空襲を受けた時に米国が戦ってくれたことを想起し、今回は英国が手をさしのべる番だと述べた。英国にとっては、自国が脅威にさらされたのは過去一度限りであった。だからこそ、このことを引き合いに出したのだろう。

 ブッシュ大統領は20日(現地)に行った議会演説の中で、
.....Americans have known wars, but for the past 136 years they have been wars on foreign soil, except for one Sunday in 1941. .....
と述べた。米国は136年の歴史の中で数々の戦争に参加しているが、じつはすべて外国に出かけていって戦っている。ただ一度の例外は、1941年のパールハーバーというわけだ。

 数日後には小泉首相が訪米し、米国への断固たる支援を表明するという。小泉首相はどのような過去と類比させながら、今回のテロの残虐さに言及するだろうか。世界のどの国の人々よりも、無差別大量殺人の悲惨さ、むごたらしさを身をもって知っているのは日本人ではないかと思うのだが.....。




「内なる敵」は大丈夫なのだろうか

 今回の悲惨な事件をきっかけとして、全世界がテロ組織撲滅のために協力して取り組むことは大いに意義があると思う。しかし、アフガニスタン内の武器弾薬を破壊したり、テロ訓練所を閉鎖するだけで今後のテロは防げるようになるのだろうか。

 冷静に考えてみると、今回のテロ事件で使われたのは米国製の旅客機であって、ミサイルや爆弾ではない。米国の外から入ってきたのは生身の人間(=実行犯)だけであって、それ以外はすべて米国内で調達されたものである。しかも、実行犯の一部は米国内で操縦訓練を受けたらしいという。

 ということは、もし将来、米国の中で内政に不満を持った過激分子、あるいは自爆を神聖視するようなカルト宗教が現れた時には、アフガニスタンをいくら攻撃していても防止にはつながらないことを意味する。

 ブッシュ大統領は、少なくとも国民向けには、もっぱら外に注意を向けさせ、内政面での不備を覆い隠そうとしているところがあるように思えてならない。今回の場合、機内で何が起ころうとも、客室と操縦室の間のドアが完全に閉鎖されていれば決してあのような不幸は起こらなかったはずである。そんな単純なことがなぜ守られなかったのか、このことは殆ど取り上げられていない。

 このほか、オサマ・ビンラディン氏が首謀者であると断定できる証拠を揃えるだけの情報収集力を誇るFBIやCIAが、なぜ事前に事件を察知できなかったのかも大いに疑問が残る。もっともこの根底には、英語の国際語化にあぐらをかいて、アラビア語など他国語の教育を怠ったことへのしっぺ返しという面もあるように思う。英語に翻訳されたものでしか外国を理解できない米国の弱さがこんなところに出てしまったとも言える。

 いくら盗聴技術や暗号解読技術が進歩しても、米国内に潜伏する何十人ものテロリストたちがアラビア語を使って一斉に携帯で交信をしたら、それを翻訳するだけで何ヶ月もかかってしまうのではないか。



日本でハイジャックされたらどうなる?

 伝えられるところによれば、ペンシルバニアの山林に墜落した航空機には空軍機が追尾しており、すでに大統領から撃墜の権限が与えられていたという。もし羽田や成田から飛び立った航空機が同じようにハイジャックされ都心の高層ビルに向かった場合、どう対応するつもりなのだろうか。

 これまで外国勢力によるテロなど考えられなかった日本ではあるが、米国支援の方針が打ち出されたことで同じ確率で危険にさらされることになった。



バイオテロやサイバーテロは防げるか

 爆弾や銃器のような金属製武器は警備を厳重にすれば探知できるだろう。しかし、いま問題となっている狂牛病、オウム真理教によって使われたサリンのような毒物、あるいは発ガン物質などがテロに使われた場合、軍事力でこれを防ぐことは殆ど不可能。また、昨今のウィルス騒動から危惧されるように、ネットを介したテロに対しては現代社会はきわめて脆弱と言わざるを得ない。



「報復」と「Dead or Alive」

 以上の内容は見方によっては米国の悪口を言っているようにもとられそうだが、私は、米国が、復讐心からではなく真に世界平和を願う立場からテロ撲滅に取り組むというのであれば、日本としても大いに支援すべきであろうとは思っている。

 このことに関して、日記読み日記のほうでもいちど疑問を述べたことがあるのだが、日本のテレビや新聞でしばしば使われている「報復攻撃」という言葉は、英語のどの言葉を翻訳したものなのだろうか。米国が軍事行動を想定していることは確かなのだが、「報復」という言葉はどこから出てきたのだろうか。仮に「retaliation」であるとすると、日本で「報復」、「報復」と叫ばれているほどには使われていないように思える。じっさい、9/20の議会演説の中でブッシュ大統領が使ったのは次の一節のみ:
Our response involves far more than instant retaliation and isolated strikes.


 余談だが、ブッシュ大統領は別の発言の中で
I want justice. And there's an old poster out West, that I recall, that said, 'Wanted: Dead or Alive.
という言葉を使ったという[出典はこちら]。私も何かのニュースの中で、大統領が確かに「Dead or Alive」と言っているのを耳にしたことがあるし、また、「どんなに隠れても燻りだしてやるぞ」というような言葉も聞いたことがあった。この種の表現は、やはり「テロ撲滅目的」というよりも、ならず者をふん捕まえて縛り首にしてやるぞという復讐心をちらつかせているようで、今ひとつ共感できない。

 しかも、「Dead or Alive」などと聞くと、個人的には次の一節を思い浮かべてしまう。
Fee, Fi, Fum!
I smell the blood of an Englishman;
Be he alive, or be he dead,
I'll grind his bones to make my bread!"