じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 大学構内に数日前に出現したキノコ。ノウタケの一種だと思うが正確な名称が分からない。どなたかお教えいただければ幸いです。しばらく成長ぶりを記録していたのだが、昨日見に行ったら何ものかに根こそぎ持ち去られてしまっていた。食用にするのか、それとも標本にするためなのか?



9月18日(火)

【ちょっと思ったこと】

日本の大統領はどこに居るか

 非常勤講師先の授業の帰り、近くのラーメン屋で昼食をとる。カウンターのメニューのところに、このラーメン店のホームページの紹介があった。urlは、なっなんと、

http://www.daitohryou.co.jp/

なるほど、少なくともネット上では、日本の大統領は、岡山市青江に存在していたのか!

 岡山を発祥地とする外食産業としてはサンマルクが有名だが、このチェーン店も全国展開に向けて急成長していくものと思われる。




服役囚の自殺

 1997年5月に、奈良県月ヶ瀬村で、帰宅途中の中学2年の女子生徒が故意に車ではねられ、三重県の雑木林で殺害される事件があった。この事件で昨年6月に無期懲役が確定し、大分刑務所に在監中の丘崎服役囚(29)が9/4に刑務所内で自殺をはかり、8日未明に死亡が確認されたという。

 この事件については、98年8月7日の日記や、98年10月19日の日記で、検察側の無期求刑や、一審の懲役18年判決は軽すぎるのではないかと書いたことがあった。結果的には自分自身で死刑を執行してしまったわけだが、遺書が無かったことを考えると、最後まで「短絡的」な行為に徹したのかもしれない。以前の日記にも書いたが、私自身は、「計画的」犯行に比べて「短絡的」犯行のほうが罪が軽いとする考え方には賛成できない。
【思ったこと】
_10918(火)[心理]行動分析学会年次大会(10)行動分析学の点検(7) 強化の因果性

 昨日の続き。このシンポのまとめ。

1日目午後:行動分析学の点検:強化と強化スケジュール(7)まとめ/強化における因果性の見直し

 いろいろ脱線してしまったが、「行動分析学の点検:強化と強化スケジュール」というシンポについて、考えをまとめておきたいと思う。

 このシンポでは、もう1件、井上雅彦氏による「応用行動分析における強化に関する研究経緯と課題」という話題提供があった。そのなかでは、臨床家にとっての強化の課題として、
訓練室内で対象児との2者間の反応形成にかかわる問題だけでなく、日常生活場面において対象児の当該行動が強化されるためのシステム自体を設計すること[表現は長谷川が一部変更]
の重要性を強調された。これは各種依存症の治療や非行においても言えることだろう。治療施設内でいくら行動が改善されたとしても、その人の現実の生活場面での随伴性環境が変わらない限りは、復帰後に再び同じ問題が発生することは避けがたい。

 このほか、「choice making」つまり、「強化を行動形成の手段から目的へ」、「活動選択の機会設定」というような議論が印象に残った。前にも書いたことがあるが、高齢者介護施設では、特定の行動を形成する手段として強化を用いることよりも、高齢者が能動的に働きかけを行う多様な機会を保障することのほうが大切ではないかと思う。




 そのほか、指定討論で久保田新氏が「強化関数の逆関数は可能か」という発想を披露された。これは、時系列上での反応生起の様子から、いつ強化があったのかを逆に推定するというような視点であったと思う。




 最後にまとめ。

 ある反応事象が「強化する側」になったり「強化される側」になるというような強化相対性がある以上、実験方法の紹介で「強化子を○○回提示した」などと記述するのはおかしいのではないかと思った。なぜなら、提示するものが実験中にずっと強化子であり続ける保証は無いからである。「強化回数」とか「強化率」というのも、その事象の強化力が刻々と変化する中では、独立変数の記述概念としては非常に奇妙であると思う。このようなことをフロアから発言したところ、小野会長から、「強化子の提示」という表現に代えて「ミルクペレットの提示」とか「穀物の提示」というような表現が推奨されているとのフォローをいただいた。

 さらに根本的な問題であるが、強化というのは、「生活体側が勝手に自発する反応」と「生活体側からの働きかけに対して、一定の規則性をもって応じる環境側の変化」の両方を前提として初めて成り立つ概念であることを確認しておく必要があると思う。いっぱんに心理学では、「独立変数=刺激、外界の変化」、「従属変数=反応」であると受けとめられがちであるが、オペラント強化の場合には、反応と結果が相互に影響しあって初めて一定の行動現象が生まれるのである。どんなに巧みに強化随伴性を設定したところで、生活体側が全く反応しなければ何の行動も生まれないことを見れば、その関係は明らかであろう。「対応法則(マッチング法則)」に象徴されるように、強化についての法則は因果法則というよりも、均衡点の記述と言うべきかもしれない。「刺激、外界の変化」を独立変数としてとらえるのは、あくまで操作可能性という切り口で現象をとらえることが有用であるからにすぎないのではないか。

 次回はいよいよ、佐藤方哉先生の記念講演についての感想。