じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] イエローナイフのモール内で見た不動産広告。左のログハウスは9万5千・カナダドル(760万〜855万円)。右の大きめのハウスは29万9千・カナダドル(2392万〜2691万円)。日本の地方都市と同じぐらいの価格か。なお各種物件はこちらから調べることができる。2000〜3000万円あれば、かなり良い物件を手に入れることができそうだが、厳冬期の外出は大変そう。 [今日の写真]



9月2日(日)

【思ったこと】
_10902(日)[心理]栄養士会講演(1)「何を食べるか」から、能動性・積極性重視の「食べ方」へ

 9/2の午後、栄養士会の研修会で食心理学について話をさせていただいた。
 県内の私立大学の食文化学部で、食心理学の授業を担当しているが、今回は1回勝負ということで、伝えられるポイントが限られてくる。おいしさ形成の経験的要因などを一通り紹介したあと、特に
  1. 「能動的なおいしさ」とはどういうものか。
  2. 「能動的なおいしさ」の中にも、「積極的な能動性」と「消極的な能動性」がある。
  3. 行動分析に基づく自己管理のノウハウを栄養管理に活かす。
という3点を強調した。

 「能動的なおいしさ」というのは、一口で言えば、オペラント行動の中で獲得される「結果としてのおいしさ」のことである。食材や調理方法によって作られるおいしさと異なり、その食べ物を口にするまでの間にどういうオペラント行動が自発されたのかがポイントとなる。例えば、家庭菜園で野菜を作るとか、魚を釣るとか、手料理を工夫するなど。また、高齢者介護の現場でも、自力で箸を使って食べるとか、自分の歯で噛むという行動も大切なオペラント行動となる。

 「能動性」の中にも、消極的な能動性と積極的な能動性がある。
  • 「消極的な能動性」とは、刺激に身を晒す機会を選ぶだけ。刺激の量や質を選択することはできるが、いったん身を晒せば、努力をする必要はあまりない。
  • 「積極的な能動性」とは、「自力で働きかける機会を増やす」ような行動であり、努力の量と質に応じて結果が伴う。
 ここでいう「消極的」というのは、ルールや弁別刺激に導かれて、勧められるままにオペラントを自発していくような行動のことである。「テレビの歌番組を見てぼんやり過ごす」とか、「パッケージ旅行に参加する」とか、「攻略本に記されている通りにRPG型のゲームで遊ぶ」などがこれにあたる。

 「積極的」というのは、オペラントを自発し「結果による選択」を繰り返し、体験の中で自分の力で弁別学習を積み重ねていくような能動的行動のことを言う。
  • 音楽を楽しむ場合であれば、ただ歌番組を眺めるのではなく、カラオケで歌ったり、自分で演奏したりする。
  • 旅行をする場合であれば、自分でいろいろな情報を取り寄せて計画し、現地の人々とも積極的に交流する。
  • 花が好きな人であれば、ただ眺めるのではなく、育てたり、配置を考えたり、絵に描いたりする。
 食行動においても、ただ「評判の良いレストランで味わう」のではなく、自分の足で美味しい店を見つけるとか、さらには自分自身で料理に挑戦することが積極性を増すことになるし、とりあえずレストランで食事をする場合でも、おまかせの定食を注文するのではなく、自分で単品を選ぶということはいくらか積極性を増すことにつながる。

 こうした例示を通じて私が強調したかったことは、「○○を食べましょう。」とか「○○は食べ過ぎてはいけません。」というような、食べ物の種類を選ばせるだけの栄養指導では不十分であること、特に高齢者福祉施設などでは、どういうふうに食べるか、オペラント行動の中で獲得される「結果としてのおいしさ」をどう保障するかを大切にしようということである。その食べ物を口にするまでの間のオペラント行動が適切に強化されなければ、食事の楽しみは半減してしまう。

 次回に続く。